旅行をすると宿泊先にある書店に立ち寄ることが多い。書店に並んでいる本はほとんど同じ売れ筋の書籍が並んでいるが、その土地ならではの書籍を並べていることが多いからだ。自分の生まれ育った地域が物語の舞台になっているのは嬉しいもので、大都市よりも地方都市の方がその傾向が強いと思う。私も九州のとある地方都市で生まれ育ったので、その気持ちは良く分かる。旅行で訪れた者としても同様で、自分が歩いたり見学したりした場所が物語の舞台になっていると、再び訪れてみたいなと思うものだ。だからこそ、旅先の書店巡りで出会ったその土地を舞台にした物語りを、その土地で買って読むのが旅の楽しみかたのひとつとなっている。
静岡旅行の際に書店で見かけたのが、井原忠政さんが書かれた「」というセット本。現在まで15巻が発売されているシリーズのうち最初の3巻をまとめてセット販売しているというものだ。徳川家康の家来となる足軽が主人公の物語なので、静岡でご当地時代小説として平台に置かれていたようだ。
時は戦国、所は三河。 喧嘩のはずみで人を殺め、村を出奔した18歳の茂兵衛は、 松平家康の家来である夏目次郎左衛門の屋敷に奉公することになる。 だが、折しも一向一揆が勃発。 熱心な一向宗門徒である次郎左衛門は「君臣の縁は一代限り。 弥陀との縁は未来永劫」と、一揆側につくことを決意する。 武士人生ののっけから、「立身出世」どころか国主に弓を引く「謀反人」になってしまった茂兵衛。 波乱の世に漕ぎ出すことになった新米足軽の運命やいかに!?
主人公の茂兵衛は体が大きく乱暴者ながら、家族思いの優しい心根の青年だ。それがひょんなことから生まれ育った村を出奔することになる。それから茂兵衛の足軽としての人生が始まるのだが、目まぐるしく時代が動く戦国時代という時代背景もあって、茂兵衛は徐々に立身出世を果たしていく。
私は現在8巻まで読み進めているが、茂兵衛の人情味のあふれる対応や戦場での活躍、同胞や部下との交流などがテンポ良く書かれていてどの巻も一気読みしてしまうほどだ。
上役から無理難題を突きつけられ、手下を育成しながらもトラブル対応に追われ、同盟藩との調整に四苦八苦する。そんな茂兵衛が、自分の姿と重なる中間管理職は多いのではないだろうか。そういう意味では、時代小説でありながらお仕事小説でもあるのだろうと思う、お薦めの一冊だ。
