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漫画読みにオススメしたい海外文学

 以前、Twitterで「漫画読みにオススメしたい海外文学」についてつぶやいた。いろいろな人からコメントやおすすめをもらったので、今回ここでまるっとまとめてみる。


 「海外文学読みにおすすめできる漫画」でもよかったのだけれど、逆にした。理由は、「圧倒的に漫画読みの方が数が多いから」。でも、理由は「数の多さ」だけではない。「自分は漫画が好きだ」と自覚している漫画読みは、あるていど「異なる価値観」への許容度が高いと思う。「オタクってのはね、空から異世界の人が降ってきても、事実を受け止める準備ができているんだよ」という妹(当然オタクだ)の言葉を聞いて以来の仮説である。

 漫画読みの人が「日常とは異なるおもしろさ」を求めているのだとしたら、「海外文学にはそれがあるからどうぞ」と勧められる。じいさんが孫の頭をかち割りにやってきたり海からバラのにおいが漂ってきたりワニに食われたのに生きていたりびっくりするほど糞尿まみれの町があったり酒を飲むしか才能がないのでとりあえず酒を飲んでいたりする。そんな馬鹿な! なんて堅い常識を軽々と飛び越える。しかも、「日本人」という枠を乗り越えて、とびきり愉快なものを見せてくれる。

 正直、海外文学読みはとても楽しい。退屈や平凡な日常とは無縁だ。だから、おもしろい物語を貪欲に求める漫画読みは、きっと海外文学も楽しんでくれるのではないかと思う。これは、仮説というよりは期待かもしれないけれど。

 というわけで今回は「雰囲気やテーマが似ている漫画&海外文学」のコンビを紹介する。好きな漫画の雰囲気から海外文学を選んで読んでもらいたい。

テンションの高さに狂え! 人間賛歌

 「漫画界の超一級エンターテイナー」×「文学界の超一級エンターテイナー」。意味不明なテンションの高さ、オーバーリアクション、登場人物の人間くささに目が離せない。「あなたを生んだ大地にキスして、謝りなさい!」は「ズキュウウウウンなキス」ばりの名言だと思う。どちらも激烈な「人間賛歌」。 ⇒『罪と罰』の感想

諸君、私は戦争が好きだ

 「化け物じみた戦争を愛する少佐」×「化け物じみた殺戮を愛する判事」。どちらも人の死を1ミリほども悲しまないところが似ている。自身を「どうしようもないほど人間」と位置づけたちびデブ少佐(ナチスドイツ)と、「戦争がなければ人などただの土くれ」と言い切ったのっぽハゲの判事(開拓時代のアメリカ)。どちらも超越しきった化け物たちで、絶対に半径100km以内には近寄りたくない。⇒『ブラッド・メリディアン』の感想

  • 作者: アラン・ムーア,エディ・キャンベル,柳下毅一郎
  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 2009/10/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 ついでにもう1冊。みすず書房が刊行したグラフィックノベル。ロンドンで起きる陰鬱な殺人がテーマ。ちょうど『ヘルシング』と『ブラッド・メリディアン』の間をとったような立ち位置かも。

有史以来の思い出を抱えて

 「地球が生まれてからの記憶を継承する少女」×「ビッグバン以来の物語を語る老人」。「noname」、名前のないエマノンと、読み方が不明なQfwfq氏はいいコンビだと思う(表紙の雰囲気が似ているのは気のせいだろうか)。ユーモアとロマン、そして少しの切なさ。思い出はいつだって美しい。

きっとどこかにある、水香り立つ東方の国

 「日本のような国で起きた蟲にまつわる民話」×「どこかにありそうな東方の国の短編」。どちらも、青く湿った空気を描くのが抜群にうまい。『東方綺譚』の作者はフランス人なので、「マルコ・ポーロ」的な視線を楽しむのもよい。特に「老絵師の行方」のラストシーンの美しさは神がかっている。とても短い作品なので、これだけでもまずは読んでみてほしい ⇒『東方綺譚』の感想

ああ、古きよきイングランド!

 「イギリスのメイド」×「イギリスの執事」。イギリスといえばメイド、メイドといえば執事、執事といえばイギリス。『エマ』の舞台は1890年代、『日の名残り』は第1次世界大戦以降。時期は微妙にずれているが、だからこそ「変化の渦に巻き込まれたイギリス」の流れを追えておもしろい。執事のうさんくさいしゃべり方が最高によい。

本当の秘密は、永遠に秘密のまま

 「感性で世界の秘密を受け止める魔女」×「論理で無限を構築する魔術師」。というか、作者は2人とも魔術師なんじゃないのか(これも表紙が似ているのは気のせい?)。視線が完全に人間離れしているお2人に惚れこんだら最後、きっと魂が迷子になる。でもそれでいい。これを読めない「理解可能」な世界にいる方がよっぽど不幸だ。 ⇒ボルヘス『伝奇集』の感想

初恋は実るか? 星は守れるか?

 「青春恋愛SF」×2poakoさんより推薦いただいた(やっぱり表紙が以下略)。キーワードは「星」「少年少女」「初恋」「戦争」。少年少女の初恋物語が、戦争と星の存亡問題につながっていく。君の手を取りたい、ただそれだけなのに。

「孤島」というシュレディンガーの猫箱

 「孤島ミステリ」×「信頼できない語り手」を組み合わせた2冊。閉じられた空間で、いったい誰が「正しさ」を証明できるのか? 孤島の中のことは誰も知らない。分かるはずがない。これはシュレディンガーの猫箱ではないのか? こちらもpoakoさんの推薦。

そうして少年は心を失った

 「心を失い、怪物となった少年」×「自分を殺す練習をする双子」master6yさんより推薦いただいた。どちらも「戦争、もしくは犯罪で心を失った双子」の物語。お互いを区別せず「ぼくら」と読んでいた悪童たちが「2人」に分裂する瞬間の衝撃といったら!  ⇒『悪童日記』の感想


 他にもたくさんおすすめいただいた。以下紹介する組み合わせは、私が読んでいない本があるため、詳細コメントは控えめ。

注を読む幸せ

 Koompassiaさんより推薦いただいた。『攻殻機動隊』の漫画は未読(アニメは少し見ましたが……)。『中二階』は、「オフィスへエスカレーターで戻るサラリーマン」が見るものすべてに細かい注釈や回想をつけていくという変な小説。本筋、何それ? みたいな態度があまりにも堂々としているので、なんか妙に納得してしまう。

不条理な宇宙旅行

 andrekunさんより推薦いただいた。残念ながらどちらも未読。テーマは「不条理な宇宙旅行」らしい。レムは好きな作家なので、いずれ読みたい。

絶望と笑い

 konagakiさんより推薦いただいた。『うつうつひでお』は未読。心やさしきニヒリスト、ヴォネガットの名言ってなぜか耳に残る。「そういうものだ」 ⇒『スローターハウス5』の感想


 ここは海外文学ブログだから、漫画読みの人はあまりたどりつかないと思うんだけど(言っちゃった!)、いつか検索でひっかかってくれればいいな。いずれ続編もやりたいので、おすすめコンビがあったらぜひ教えてください。




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