
金沢で目覚める。
眠りはよくない。
ホテルの部屋のエアコンが古くて温度調節がうまく出来なかった。
暑くて目が覚め、寒くて消すが断続的に続いたせいだ。
それとしみついた煙草の臭いと旧型の便器。
我ながら贅沢になったものだと思う。
いまどきの新しいホテルの設備(エアコン、トイレ、ベッドなど)に慣れてしまうと、もう戻れない。
体調はイマイチだが散歩に出る。
この旅の愉しみの一つが金沢の中心部を散歩すること。
このホテルのロケーションも散歩するのにいいと思ってのことだった。
(一泊6500円と安かったのもあるが…失敗でした)
晴れた夏の朝、7時過ぎから広坂通り(いまは百万石通り)を歩き出す。
まだ涼しくて気持ちいい。
金沢市役所、21世紀美術館、石浦神社をかすめて兼六園方面へ歩を進める。

7時半、金沢城石川門のあたりもまだ観光客は少ない。
かつて母校があった城内に入ってみる。
大学が移転したのはいつだったのか。
当時の校舎は跡形もなく、整備された観光地となっている。
ダムに沈んだ村なら遺構が残っているが完璧なスクラップ&ビルド、今は知る人も少ない。

“何を見ても何かを思い出す”
きょうの朝散歩は足腰より脳が疲れる。
当該箇所を歩くと頭に浮かんだ思い出と重ね合わせる。
自分はどこかで選択を間違えたのではないか、と後悔めいた感情が浮かび、
いや、今があるのはあれが適切な選択であったのだと思い直したり…。
いま思っても詮ない思いが脳内をめぐる。
ただ懐かしいと思うだけでいいのだ。
在学当時、この堀に水はなかったように記憶する。
この左岸の道にも思い出がある。
1年生の初めてのクラスコンパで、2軒目に長町の「秋吉」で吞んだ帰りだった。
「秋吉」のカウンターで隣に座って仲良くなったAさんという女子と自転車の二人乗りをした。
すぐに巡回のパトカーに見つかり拡声器で注意された。
酔ってるので二人して大笑いした。
あの頃、このあたりは真っ暗で今は想像もつかない。
未成年で、(自転車の)飲酒運転だった。
でも、当時は新入生の飲酒はなんのお咎めもなかったし、学生寮では強制的に吞まされもした。
万事窮屈な今が間違っている気もする。

当時、香林坊の市街地から大学に行くのは宮守坂(宮森坂)を登った。
急坂だったが最短距離だった。
よくもこの坂を毎日登っていたものだと思う。(毎日ではないけれど)
いまは いもり坂 と呼ばれている。
疑問に思って調べたが諸説あってハッキリしない。
坂の入口から見上げるとあの頃の登りのキツさだけが甦ってくる。

中央公園のベンチの横でラジオ体操をする。
いまは「いしかわ四高記念公園」というらしい。
金沢に住んで迎えた初めての冬、ドカ雪が降った。
一晩で50センチの積雪だった。
夜中、学生寮から同じ1年のSと街に出た。
そのとき、この公園は一面の雪原だった。
そのまま兼六園へ忍び込んで無人の庭園に僕ら二人だけのトレースをつけた。
まだ20歳前だった。


宿に戻って大浴場で汗を流す。
体調が悪い。
例の胃のボーマン(膨満感)だ。
昨日の疲れか、夏バテだろうか。
ベッドに横になる。
当然、食欲はない。
エアコンをつけたり消したり。
旅に出てボーマンは辛い。
幸いこのホテルのテレビはスマートテレビでYou-TubeやNetflixが見られる。
Netflix「グラスハート」の最終話を観る。
全十話、少女向けのロマンチックコメディだったなという印象。
二人の女優さん、宮崎優と唐田えりか がいい。

iPhoneに着信があった。
見知らぬ番号、局番は金沢市内のもの。
何だろう?
このホテルの番号を調べたが違う。
ベッドでごろごろしながら思いを巡らす。
もしかして…。
心当たりがあるとしたら…。
楽天トラベルのメールを検索する。
あった!
「KOKO HOTEL Premier 金沢香林坊」の電話番号だった。
いまのホテルを予約する一週間ほど前にこのホテルを予約していたのだった。
キャンセルするのを忘れていた。
ポンコツを恥じ入る。
予約は昨日からの二連泊だった。
つまり当日無断キャンセルしてしまったことになる。
電話した。
日程が変更になったのに、変更を連絡しなかった、ということにした。
今日チェックインしますと告げた。
「…ということでしたらキャンセル料は不要です」と女性スタッフ。
嬉しい対応だ。
今いるこのホテルの本日宿泊分はキャンセルしたいところだがすでに午後だ。
この一泊分は無駄にするが、もう一泊泊まるのは体に良くないと判断。
チェックインするホテルは幸いにも新しそうだ。
料金もこのホテルと変わらない。
土曜日は高かったのだろうけど、日曜泊は6500円以下だった。
3時過ぎ、ホテルを引っ越す。
香林坊もインバウンドで溢れていた。
歩いて5分で「KOKO HOTEL Premier 金沢香林坊」にチェックイン。
エントランスも清潔で新しい。
ウエルカムドリンクで金沢の地酒やワイン、珈琲もある。
胃腸の具合が良ければ愉しかっただろうが…。

きのうのホテルと何もかも違った。
ちゃんとバゲージラックもあるし、収納も多い。
煙草の臭いもなく、エアコンも最新。
ユニットバスではなく、バスタブは広くて仕切りドアもある。
神宮外苑の三井ガーデンと同じスタイル。
なんで最初からこっちにしなかったんだろ?
もしかしたら体調を崩すこともなかったかも。

部屋で少し休んで、WEB作業をしているうちにボーマンが消えた。
6時過ぎ、ヒロに持たされたあんパンを食べる。
きょう初めて食べた。
食べたら食欲が戻って来た。
もう少し何か入れようと街を歩く。
立ち食いそばでもあれば、と思ったが、夜の街にさっぱりしたものは見つからない。
犀川大橋の近くに「8番らーめん」があった。
メニューを覗くと野菜しょうゆラーメン麵半分というのがあった。
これでいい。


カウンターに一人座る。
こんなときタブレット注文は有り難い。
野菜たっぷりが胃にやさしく嬉しい。

ホテルに戻り、バスタブに湯をはり、家から持って来たカネボウの♨️入浴剤を入れる。
身体を伸ばせる広いバスタブが嬉しい。
これからのホテル選びは価格だけではなく、設備もチェックしよう。
大浴場は必ずしもマストではない。
このホテルの系列はリストに入れておこう。