
列島が梅雨入り。
信州蓼科の親湯温泉♨️へ2泊3日の旅に出る。
新緑の高原、源泉掛け流し、ヘルシーな晩餐、奥廊下の先にある閑かな一室、
そして、雨の日も愉しめる充実のライブラリーがある。
雨上等、と心して臨むが、あす12日、あさって13日と予報は梅雨の晴れ間。
それはそれで良し。
雨の朝、傘をさしてJRさくら夙川駅まで歩く。
新幹線自由席〜ワイドビューしなの20号自由席〜茅野行き普通と乗り継ぐ。

塩尻駅で40分ほど待つ。
駅の立ち食い蕎麦でとろろ蕎麦を半分こする。
梅雨寒に温かい蕎麦がおいしい。
茅野駅発14時40分の宿の送迎バスの客となる。
僕ら夫婦の他には婦人のグループばかり10名ほどが乗る。
雨の残る中、親湯温泉旅館に到着したのは15時過ぎ。
ウェルカムドリンクを飲みながらチェックインの手続き。
ヘアも、話し方もかなり寄せてる気がした。
「似てますよね、河合優美さんに…」
なんてことは言わない。
リピーターだから部屋の場所も分かっている。
部屋に落ち着く。
今日はもう何もすべきことはない。
前回泊まったのはコロナ過の2022年の同じ季節。
蓼科温泉の古湯 親湯旅館にチェックイン。
足を踏み入れたら「ここは図書館か?外国の書店か?」と見間違う。
この旅館の広々としたロビーは本の森でした。
みすず書店の創業者はこの温泉のある茅野出身、岩波書店の創業者は諏訪出身、
ちくま書房の創業者は塩尻、信州はアカデミックな土地柄なんですね。
つゆどき、数日雨に降りこまれても、この温泉なら、愉しく、こころ豊かに過ごせそうです。 (2022/6/22泊)

周りの木々はその爆音を吸い込んでいる。
夕食は7時半から、それまで2度湯につかり、ライブラリーで何冊かの本を見繕い、部屋に持ち帰る。
本に囲まれる。
日常生活では実現しない得難い体験、いや悦楽です
一昔前、1980年代のBRUTUSのテーマは「男の悦楽」だったなあ。
好きな作家のなじみのエッセイを何編か読み直すのもあり、多分初めて読むかのように楽しめる。
蔦屋書店とかでも、こういう読み方はなかなか出来ない。
小説、随筆、歴史書、旅行記、科学雑誌のムック、美術書、写真集、岩波文庫の回廊。
日本旅、世界旅、過去へのタイムトラベル、何でも出来る。
このバーカウンターで飲んでみたいと思ったが、なかなか勇気が沸かない。
何もしない一日。
なので、このあとは何も書かないでおく。

クレーが最晩年の作品「死と炎」(1940年)にこんな詩をつけている。
かわりにしんでくれるひとがいないので
わたしはじぶんでしなねばならない
だれのほねでもない
わたしはわたしのほねになる
かなしみ
かわのながれ
ひとびとのおしゃべり
あさつゆにぬれたくものす
そのどれひとつとして
わたしはたずさえてゆくことができない
せめてすきなうただけは
きこえていてはくれぬだろうか
わたしのほねのみみに
「そのどれひとつとして わたしはたずさえてゆくことができない」
そう、人は何ひとつ持って空へ旅立てないのだ。

田山花袋が戦前、日本中の温泉♨️をめぐった旅行記を書いている。
新田次郎の妻 藤原てい が満州からの逃避行を書いた自伝をヒロに勧められた。
三島由紀夫の短編「岬にての物語」が面白そうだ。
ドストエフスキーの著作で唯一僕が読了できた中編「貧しき人々」の冒頭を読む。
ヒロが太陽の「ブルーノ・ムナーリ特集」を部屋へ持ち帰る。
なぜ? と思ったが、以前僕が気に入って着ていたユニクロのTシャツのデザインを描いたのがムナーリだという。
あの自転車の画だ!
美術に暗い僕は何も知らなかった。

遅めの夕食。
信州牛のステーキと〆のスープカレーに満足。
就寝は十時半、谷川の音を聞きながらいつのまにか寝入った。