「少年ジャンプ+」で伝説のバレー漫画「ハイキュー!!」が28巻分無料で読めるようになっている。
無料公開は2020年4月5日までなので、まだ読んだことがない人は時間があるときにまとめて読んでほしい。
「ハイキュー!!」を一言で表現するなら、「ど真ん中の青春スポーツ漫画」だ。
主人公の名前は日向翔陽。
幼い頃にテレビで見た「小さな巨人」に憧れてバレーを始めた。
190cm近い選手の上から次々とスパイクを決める身長170cmの「小さな巨人」の姿を見て、日向は心を震わせたのだ。
彼のようになりたいと思ってバレーを始めたが、中学校にバレー部はなかった。
助っ人をかき集めて出場した最後の大会では1回戦目で優勝候補の中学と当たってしまう。
誰よりもたくさん試合がしたいのに、負けてしまってコートに立てなかった。
そして中学を卒業し、烏野(からすの)高校に進学した日向翔陽。
そこで出会ったのは中学最後の試合で自分をコテンパンにした憎きライバル、天才セッターの影山飛雄であった。
スラムダンクに例えるなら流川楓と桜木花道のように犬猿の仲とも言える二人だ。
でも日向は影山がいれば、壁(=ブロック)の向こうの景色が見える。
影山がドンピシャで最高のトスを上げてくれるから。
影山も同じで、日向だけは、自分の高速トスについてこれる。
仲は悪そうでも、コートの上ではお互いに信頼している。
それがスパイカーとセッターの関係だ。
後に彼らは言う。
「俺がいればお前は最強だ!」
日向と影山のコンビが全国の猛者共を驚かせるところまでも無料で読めてしまうので、「俺がいればお前は最強だ!」がどんな場面で発せられたのかもぜひ追いかけてみてほしい。
ここから先は『ハイキュー!!』の何が面白いのかをさらに紹介していく。
名言が多くて泣ける
『ハイキュー!!』には1話に1つは必ず「良いセリフ」が入ってくる。
当然全ての話が「泣かせてくる」わけではないが、作者の価値観が素晴らしいのか、自分に合っているからなのか、とにかくセリフが胸に響くのだ。
『ハイキュー!!』は登場人物それぞれに個性がある。
個性がある登場人物がたくさんいて、それぞれのキャラが立っている。
だから『ハイキュー!!』を読むと、読者が感情移入できるキャラが必ず一人は見つかるはずだ。
たとえば、烏野高校が全国に出場し、自らの凡庸さに気付いてしまった田中龍之介。
なかなかスパイクが決まらないときに、彼は考えた。
* *
俺は普通の人間だと思う
体格とか能力とか
ガキの頃は自分を「天才に違いない」と思っていた
⋯いや中坊くらいまで思ってたかも
⋯⋯いや今でもちょいちょい思ってるな
でも多分、身長は180に届かないだろうし
運動能力に自信はあるけどバレー部の中で現時点で俺が一番である部分はない
それが何かを諦める理由にはならないし 言い訳にもならない
つーかそもそも 普段そんな事考えない
でも 半年に一回くらい限りなくメンタルがマイナス寄りになった時に思う
自分は平凡なんだと
「ところで平凡な俺よ」
「下を向いてる暇はあるのか」
* * *
『ハイキュー!!』は人生で大切なことを教えてくれる。
というと大げさかもしれないが、少なくとも人生を前向きに生きていくための勇気をくれる。
至るところに名言が溢れていて、そのセリフの「見せ方」もうまい。
だから『ハイキュー!!』は読んでいて心に響くし、泣ける。
負けたときこそ『ハイキュー!!』を読み返してほしい
『ハイキュー!!』は負けたときのセリフもいい。
作者の古舘春一さんが中学・高校時代にバレーで良い成績を残せなかったことが影響しているのだろうか。
僕はいつも負けっぱなしで、時々とても悲しくなることがあるけれど、『ハイキュー!!』を読むと元気になれる。
人生何度も何度も勝負に負ける。
失敗することもある。
ヘコむこともある。
絶望することもある。
目の前が暗くなって、悔しくて、どうしていいかわからなくことがある。
それでも、大げさかもしれないけれど、ハイキューを読めばきっと前向きな気持ちになれる。
明日からまた頑張れる。
何かに負けたときに読み返したい言葉がたくさんあるから。
「負けは今の力の認識であっても 弱さの証明ではない
君たちの何も ここで終わらない
これからも 何だってできる!!!」
* * *
「雑巾かけの一往復 ボール拾いの一本 スクワット無限回
その後の美味い飯で 俺らの身体はできとんのや
筋肉ならいっぱいつけてきた この先怖いもんなんか無いわ」
* * *
「⋯ここに居る選手達の中に 誰一人として“負け”を経験しない者など居ない
たとえこの大会の結果が優勝であったとしても
強者ほどより上の強者に打ちのめされる
挑む者だけに 勝敗という導(しるべ)とその莫大な経験値を得る権利がある
今日敗者の君たちよ 明日は何者になる?」
* * *
「自分より優れた何かを持っている人間は生まれた時点で自分とは違い
それを覆すことなどどんな努力・工夫・仲間を持ってしても不可能だと嘆くのは
全ての正しい努力を尽くしてから遅くない」
* * *
受験に失敗したとき、気合いを入れた商談に失敗したとき、試合で成績を残せなかったとき。
下を向いてくじけてしまいそうな場面がたくさんある。
そんなときは『ハイキュー!!』読んで、元気だそう。
登場人物の人間関係が良い
『ハイキュー!!』は登場人物同士の人間関係も良い。
日向と影山のライバル関係も見所だが、個人的にはリベロ・西谷夕とエースの東峰旭のやり取りが泣けた。
『ハイキュー!!』ファンなら誰もが涙した伝説のワンシーンだ。
日向と影山がバレー部に入部する前、烏野高校にはエースがいた。
東峰旭だ。
“俺に持ってこい”
“俺が決めてやる”
旭は頼もしいエースだった。
しかしある試合で旭のスパイクは全く通用せず、何度も何度も敵にブロックされてしまい、自信を失ってしまったのだ。
ブロックされているうちにトスを呼ぶのが怖くなった。
「俺がいてもチームに迷惑かけるだけだから...」
自信をなくした旭は部活に顔を出さなくなる。
そんな旭と揉めて、天才リベロの西谷も(一時的に)部活に来れなくなった。
リベロは攻撃に参加できない。
守備專門のスペシャリストだ。
天才リベロの西谷は言った。
「俺はリベロだ!
守備の要でチームの要だ!
けど!
⋯⋯⋯俺に点は 稼げない」
「俺は攻撃ができない
でも
どんなにスパイクが決まんなくたって責めるつもりなんか微塵もねえ
だけど 勝手に諦めんのは許さねえよ」
部活に来なくなった旭だが、バレーへの愛が冷めたわけではない。
スパイクの感触はずっと覚えていた。
自信だけがなかった。
そんな旭は、良い意味で空気を読まない日向に呼ばれて、バレー部の練習試合に顔を出す。
「おれ、エースになりたいから本物のエース生で見たいです!」
日向に呼ばれて成り行きで部活に参加した東峰旭。
試合の中で自分の本音に気付く。
「何回ブロックにぶつかってももう一回打ちたいと思うよ」
西谷は笑う。
「それが聞ければ十分です」
──俺の仕事は、ただひたすら“繋ぐ”こと
“空”はスパイカー達の領域で
俺はそこで戦えないけど
繋げば
繋いでさえいれば
きっとエースが決めてくれる──
しかし試合では──
またしてもスパイクをブロックされた旭。
ボールが床に落ちる。
悪夢が再び蘇るかと思ったそのとき──
──西谷がブロックされたボールを拾った。
部活に来れない間ずっと。
西谷はずっと、ブロックフォローの練習をしていたのだ。
エースを助けられるように。
もう一度トスに繋げられるように。
壁に跳ね返されたボールも 俺が繋いでみせるから だから、
「だからもう一回トスを呼んでくれ!!エース!!」
ハイキュー屈指の名シーンだろう。
今、この記事を書きながら僕は泣いている。
西谷の名シーンが第20話。
昔スポーツやったことある人はきっと泣けるし、そうでなくても熱くなる。
「あとで読もうかな」と迷っている人も、せめて20話まで読んでみてほしい。
昔ジャンプで読んで話を忘れた人もこの機会にぜひ。
僕も久しぶりに読んだけど、やっぱり泣いた。
最高に熱くなって、外を走りたくなった。
外出を控えることが推奨されがちな今、『ハイキュー!!』を引きこもりのお供にしてほしい。
- 作者:古舘 春一
- 発売日: 2012/06/04
- メディア: コミック
その他のおすすめマンガ
泣ける漫画が読みたい人はぜひ『鬼滅の刃』も読んでみてほしい。
近年の当たりが多いジャンプの中でも一際大きな輝きを放つ名作だ。
鬼滅の刃は王道バトル漫画だが、バトル以外で泣ける漫画を探しているなら、『アクタージュ』もいい。
どちらかというと“涙の質”は『ハイキュー!!』に近いものがある。セリフで泣かせてくる漫画だ。