大林組に続き、住友商事の社員がOB訪問で女子大生に手を出し、事件になった。
「OB訪問を利用して学生に手を出す」という悪質な手口はおそらくずっと昔から行われてきただろう。
しかし最近ではアプリを経由して気軽にOBに会えるようになった。
会いに行く側も受ける側もマッチングアプリのような手軽さで“出会える”ようになってしまったのだ。
「会社を経由してOB訪問の申込みがあった」
「大学のツテを辿って紹介された」
などの第三者の中継があれば、OB訪問は公的な意味合いが増して、受ける側も「仕事」として接することになる。
しかし会社を介さず、アプリ経由で非公式で出会ってしまうと第三者の歯止めが効かなくなり、残念な事件につながりやすくなったものと考えられる。
OB訪問で先輩社員に話を聞きにいく場合、学生の立場は圧倒的に弱い。
学生は二年目や三年目の、仕事もわからず人事権もない若手社員に一生懸命熱意をアピールし、面接のヒントをもらって帰ろうとする。
一方で会社員側は圧倒的優位で対話を進めることができる。
会社を後ろ盾にして、最初から「尊敬できる先輩社員」の立場で学生に接することができるからだ。
下心がある男にとって、こんなに有利な勝負はないだろう。
素手の相手に木刀を持って闘うようなものだ。
マッチングアプリよりも断然口説きやすいはずだ。
なんで住友商事のような一流企業の男性が...と思う人もいるかもしれないが、
男からするとマッチングアプリはまだまだ競争相手が多く、また相手の女性も「人を選べる立場」にあるので、そんなOB訪問ほど優しく接してくれない。
というか、キモかったりブサイクだったりすると、簡単に弾かれてしまう。恋愛市場の厳しさはあの銀座コリドー街だって変わらない。
モテない男にとって、OB訪問に来てくれる女子学生は無条件にチヤホヤしてくれる天使のような存在なのだ。
そこでつい勘違いしてしまい、地獄に落ちてしまうのである。
落ちるのは塀の向こうだが。
僕もこれまでずっと、街に出ては「キモい」と罵られ、クラブでは酒をかけられ、ヤンキーに胸ぐらを掴まれ、マッチングアプリで約束をドタキャンされてきたので、OB訪問で優しくされて調子に乗ってしまう男の気持ちはよくわかる。
それでも声を大にして言いたい。
立場を使って女を口説くな。
男なら潔くスーツを脱いで対等な立場で口説くべし。
立場を使って迫るのは相手にとっては恐怖でしかない。
逃げ道がないからだ。
ゲスなことをするなとは言わない。
やるならせめて紳士であれと言いたい。
上司の立場で部下を口説いてはいけない
OB訪問ほど明るみに出ないが、若い女性社員を口説く上司なるものも世の中には存在している。
上司の立場は楽である。
「仕事が楽」という意味ではない。
職場では人間関係のシーソーゲームを有利に進めることができるという意味だ。
若手社員は上司というだけで気を遣ってくれるし、つまらない話にも笑ってくれる。
ゴテゴテの日系企業では会社が「イエ」のように捉えられるので、上司は課長ならぬ「家長」のように扱われる。
そんな上司の立場を使って話せば、若手女性社員も優しく接してくれるのだ。
笑いながらお酒を注いで、目を見て話を聞いてくれる。
たとえその上司がハゲだったとしても。
でもそれはあくまで、「上司と部下の関係」があるからだ。
男としての魅力が評価されたわけではない。
もちろん、とても仕事ができる先輩社員がいたとして、その先輩社員に女性社員が憧れるケースもある。
僕の経験を話すと、昔マッチングアプリで出会ったリクルートの女子社員は12歳年上の「部長」と夜を過ごしたことを延々と惚気けてきた。
初めて出会った女に別の男との惚気を聞かされるのは大変屈辱的だったが、ある意味では勉強になった。
仕事ができれば、若い女性社員にモテることもあるのだと。
しかし男の立場からすると、「自分が本当にモテているのか」あるいは「気を遣われているだけなのか」は判断しづらい。
往々にして我々は自信過剰であり、勘違いしがちであるため、都合の良い解釈をしてしまいがちだ。
男側の都合よい解釈が相手にとってストレスになってしまうこともあるのだ。
社会的に上の立場から口説いてはいけない。
相手に逃げ道がなくなるからだ。
相手が逃げられない立場で口説いてしまった場合の代償として、自分自身の人生が逃げ場のない袋小路に追い込まれてしまうことだってあるのだ。
男たるもの、常に逃げ道を用意すべし。
相手にも、自分にも。
自分のためにも、相手のためにも。
OB訪問で大学生を口説いてはいけない
大林組、住友商事と立て続けにOB訪問がきっかけとなって若手社員が逮捕された。
同級生が遊んでいる間に努力して、就職活動を頑張り、やっとの思いで一流企業に入社して、人生これからというときに下半身の誘惑に抗えず全てを棒に振ってしまった彼らだが無論、同情の余地はない。
お前は何をやっているんだ、とミルコ・クロコップの顔で言いたい。
OB訪問で女子学生を口説くな。
自分が学生の頃を思い出してごらん。
就職活動のときは、相手が「社会人」というだけで、なんかすごい人達のように感じてしまっていただろう。
実際は大したことがないとしても、学生からすると「なんかすごいことをやってそうに見える」ため、圧倒的に上の立場なのだ。
そんな圧倒的優位な立場から口説くと、男側からすると法外に有利な勝負となる一方で、大学生からすると逃げ道がない。
ナイフを突きつけられたような状態で口説かれても本音を語ることはできないだろう。
「君、見どころあるよ。ところで、僕の部屋にこないか?」
「え、ああ...え?
(断ったら就活に響きそうだな...)
は、はい...」
みたいに、その若者に人事権などないとしても、学生からするとよくわからないのだ。
断ったら憧れの企業への道が断たれてしまうような気になってしまうのである。
言うまでもなく、このような口説き方は卑劣だ。
断るのも地獄、受け入れるのも地獄。
受け入れた後に何も言えずに泣き寝入りしてしまうケースも多々あっただろうと思う。
男たるもの、そんな有利な立場で闘ってはいけない。
そんなんじゃねェだろ?
俺たちが求めた愛の極みは。
敗色濃い難敵にこそ、全霊を以て臨むこと。
一流企業の若者よ。
OB訪問で女を口説くな。クラブに行け!
そもそも逃げ場のない状況で口説かれるというのは相当なストレスである。
男の僕ですら、職場で10歳年上の人にデートに誘われまくったときは相当なストレスであった。
曖昧に笑うことしかできなかった。
いわんや女子学生をや、である。
レッドーオーシャンを楽しめる男になるべし。
たしかに競争が激しく相手の立場のほうが上の状況で闘うのは徒労に終わることの方が多い。
真冬に六本木の街を一晩中歩いて一人ともLINEを交換できなかったこともあった。
クラブに行って酒を奢りまくったものの、トイレに行っている間にヤンキー男に女を横取りされたこともあった。
マッチングアプリで待ち合わせしたものの、30分で帰られたこともあった。
まるでドナドナの牛の気分だった。
何度も何度もドナドナされて泣きたいときもあったが、それでも僕は逮捕されていない。
全てを失うリスクと天秤にかけられる性欲などない。
一時の感情で人生を不意にするな。
万が一に備えるためにも、立場を使って女を口説いてはいけないのだ。
遊びたいなら外に出ろ
社会人になってお金が入り、女遊びもしたいなあと考える人もいるだろう。
そういえば明日は入社式だ。おめでとう。
そんな遊びたい盛りの若者におじさんは言いたい。
若者よ。
世界は広い。
会社の内側に目を向けず、外に出よ。
外に出て闘うことのデメリットは「いいとこの会社員」という下駄を履けず、ゴミ扱いされて悲しいことだ。
しかしメリットもたくさんある。
第一に、失敗しても評判が傷つかない。
これが一番大きい。
セコいかもしれないが、社会人にとってレピュテーションリスクの管理はとても重要だ。
会社の立場を使って口説いて失敗したらその恥は3年後も飲み会で語られてしまう。
たいした問題ではないかもしれないが、鬱陶しいことには変わりないだろう。
第二に立場を離れて堂々と口説けば問題が起こりにくいことだ。
OB訪問で逮捕された会社員は愚かだったが、そもそもOBの立場を悪用するからこんなことになるのだ。
強引に誘うのは論外だが、クラブで誘って家に一緒に帰っても、それが事件となる可能性は低いだろう。
余計な病気をもらうかもしれないが、それは薬で治療できる。
馬鹿につける薬はないが、夜の病気につける薬はあるのだ。
第三に、会社の外に出たほうがたくさんの人に会えることだ。
世の中は広い。
眩しいくらい美しい女の子や、度肝を抜かれるくらいスタイルの良い女の子がたくさんいる。
僕は全く歯が立たなかったが、まだ若い君たちは可能性を追うべきだ。
わざわざ会社の立場で枷をはめる必要はない。
自分を解き放て!
本気ならとにかく慎重に
もしかしたら会社の立場の上で、本気で恋してしまうこともあるかもしれない。
社内恋愛は割と起こりがちで、それら全てに「やめろ」というのは野暮だ。
もし本気になってしまったならば、できるだけ慎重に、相手の反応を探りながら接するのがいい。
変なテクニックを使わずに、下心丸出しで部屋に誘うよりも、「食事に誘って告白する」という世の中の基本的な手順をしっかりと踏んだほうがいい。
ただし「上司の立場」である場合は、いかなるときも「自分から誘う」のはやめた方がいいと思う。
相手は断りにくいし、仕事が進めにくくなる可能性もあるしで、あまりいいことがない。
自分の魅力は過小に見積もっておき、とにかく慎重に接するのが吉である。