カプコンのバイオハザードを絶賛するツイートを見つけて、日経新聞の記事を思い出しました。
「バイオハザードRE:2」滅茶苦茶おもしれぇ。怖がりの僕でもこれはクリア出来るかもしれん。原作の「バイオハザード2」は当時プレイしていた僕には怖すぎてクリア出来んかったんよね。積年の思いを果たす時が来たな。 https://t.co/Zfj6P3UFul
— yuu (@yuu_alpha_male) 2019年1月27日
2019年1月24日の日経新聞「私のリーダー論」でカプコンの辻本憲三会長(78)のインタビュー記事が載せられています。
カプコンは「ストリートファイター」や「バイオハザード」などの世界的なヒット作品を生み出した偉大なゲームメーカーです。
プロゲーマーウメハラさんのストリートファイター世界戦、「背水の逆転劇」は伝説に残る一戦となりました。
辻本憲三さんの人生は面白い。
働きながら奈良県立畝傍(うねび)高校の定時制を卒業したあとに始めた駄菓子屋で、
「子どもたちが求めているのは駄菓子ではなく、駄菓子を作る過程の遊びだった」
と気付き、ゲームソフトを作る発想を得ました。
1970年代にはゲームは存在していないので、改造パチンコを書い、全国の漁村に置かせてもらいました。
最初の会社を追われ、1983年にカプコンを創業してからはとにかく「最先端」にこだわりました。
ゲームが売れない時期、音響やデザイン担当に原因を聞いたところ、メモリの容量が足りないため、他社と同じようなゲームしか作れないといっています。
辻本憲三さんはすぐにリコーに小型化チップの開発を依頼し、世界の誰も真似できないようなゲームを作れるようにしました。
「相手が持っていない最先端の技術で攻めることで勝利する」
という信念からです。
織田信長が火縄銃を使って武田軍の騎馬隊を破ったように、
のちに元インテル CEOのアンディグローブ氏が"Technology will always win."と述べたように、
「技術は最後に必ず勝つ」というのは時代が変わっても通じる普遍的な勝利の法則だったのですね。
辻本さんは、最近ではゲームの内容にはあまり口出ししないようにしているといいます。
会社が大きくなって、優秀な人材が集まってきているので、自由にやらせていれば自然といいものができると信じているからです。
それでもこだわりたいのは、「他社に負けないスペックの高いゲームを作ること」
スタッフには、
「時間や資金はたくさんかけていい。人員のバックアップは任せろ」
と言っています。
もちろん、辻本さんの方針ですべてが成功するわけではありません。
失敗することもあります。
でも、失敗するのは新しいことに挑戦するからです。
失敗は経験値として残し、次の機会に生かせばいいのであり、終わったことはなるべく忘れるようにしている、と辻本さんはいいます。
大きな組織がカプコンから学ぶこと
日経新聞の記事に書かれている内容が会社の実態を正確に表しているとは限りませんが、インタービュー記事が辻本会長の本音だとすれば、大企業が学べる教訓が多々含まれているように思いました。
歴史のある組織にはノウハウが溜まっています。
そのノウハウは標準化され、誰がやっても同じような品質の仕事ができるように洗練されていきます。
次第に標準化されたノウハウを守ることが目的となり、目的を果たすための手続きや会議、承認フローが増えていきます。
日本大企業では「組織にスピード感がない」と言われがちですが、形式的な手続きや会議を減らせばもう少し新しいことにチャレンジする"余裕"ができるのではないかと感じています。
標準化を進めていくことは、組織を運営していく上では正しいと思います。
しかし、「誰もやったことのない新しいことをやる」という方針とは全くもって相容れません。
あらゆるプロセスが標準化された組織では「前例」がものすごく重要で、過去に実績がないことをやるには抵抗が大きいからです。
そんな風潮を変えたい場合、やはりトップが「新しいことガンガンやれい」と声を上げるととてもやりやすいのではないでしょうか。
大きくて古い組織はボトムアップではなかなか変わりません。
トップが声を上げることが大事なのです。
また、新しいチャレンジに失敗はつきものですが、会社で何か失敗するとその原因の説明や是正措置にものすごく時間がかかったりもします。
失敗を反省することは大事ですが、辻本会長のように
「失敗はなるべく早く忘れるんや」
と考えていてくれると、チャレンジする側も気が楽になるのではないでしょうか。
個人的には、何かチャレンジを促したい場合は、とにかく「面倒くさいことをやめる」のが大事だと思います。
- 新しいことを始めるためには面倒な承認を経なければならない
- 前例がないものを始めるために大量の資料を作って説明しなければならない
- 失敗した場合はその説明に死ぬほど時間がかかる
みたいな状況が当たり前になっていると、チャレンジのハードルが上がり、「こんなに面倒ならやらない方がマシ」となりかねません。
僕たちは『サラリーマン金太郎』のような熱血漫画に影響されているからか、
「何かを始めたいならそれくらいのハードルを乗り越えろ」
と言ってしまいがちです。
それに、むやみやたらになんでも認めてしまうと、社員が暴走してしまう可能性もあります。
それでも「チャレンジ」を後押ししたい場合はやはり、そのハードルは下げた方がいいと僕は思います。
理由は簡単で、何かをチャレンジしたい人間の貴重な意志力やモチベーションは新しいことを推進するために使うべきであって、社内の面倒な手続きに費やされるべきではないからです。