昨日から『I"s』というちょっと昔の恋愛漫画を読んでいる。
中学時代の僕にとって、この漫画は「恋愛のバイブル」とも呼べるものであったが、今改めて読み返すと、主人公が悪手ばかり取っているのが目について仕方ない。
ここでは『I"s』の主人公のどこがダメなのか、一つ一つ検証していきたい。
題材とするのはI"s完全版 第2巻である。
- 作者: 桂正和
- 出版社/メーカー: 集英社
- メディア: コミック
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いちいち告白を決意するな
これは主人公がずっと想いを寄せていた伊織ちゃんに告白()を決意するシーンだ。
「今日 告白するんだ」
の台詞に中学生の僕はドキドキしていた。
僕もいつか好きな子()に告白するんだろうかと妄想した。
が、もし僕が時をかけるオジサンになれるなら、過去に戻ってそんな自分を殴りたい。
告白なんか、決意するな。
中学生の僕は、そもそも恋愛のスタートを履き違えている。
習いたてのアルファベットを順番に唱えてみろ。
A...B...C...D...E...F...G
H...I
そこだ。
HのあとにIがあるのだ。
愛はHの後なのである。
中学生にそんな卑猥なことをしろとは言わない。
だが、「告白」は決して恋愛のスタートじゃないんだ。
「告白」は「確認」として使うのが正しいんだよ。
どういうことか。
僕は若かりし頃、恋愛はこういう風に始まると思っていた。
好きな子ができて
↓
意を決して告白して
↓
相手にOKされたら、そこから恋を育む
それが正しいとされているし、多くの人はその通りのプロセスを辿っているはずだ。
しかし僕の経験上、このプロセスは正直あまり良いやり方とはいえない。
「告白」はあくまで確認として使うべきだ。
「告白」は相手に課す心理的なハードルが高すぎるからである。
中学の僕に勧めたい「正しいプロセス」はこうだ。
まずさっさとデートに誘う
↓
告白などという重いことはせずに、先に既成事実を作る
↓
付き合いたい場合は「確認」する
これでいいのだ。
突然シリアスな顔で
「ずっと前から......
好きでした......」
などと告白する必要はないのである。
相手の立場になってほしい。
プロサッカー選手でさえ急にボールが飛んできたらビックリするのだ。
急に愛をぶつけられて相手が嬉しいだろうと思うのは、恋愛漫画の読みすぎだ。
告白の前に、心のマッサージが必要なのだ。
いちいち「告白」などと意気込む必要はない。
そもそも「告白」という言葉自体がなんか重い。
別に罪を告白するわけではないのだ。
「好きでした」
などと話すよりも、相手の「好き」を引き出すほうが先である。
女の言葉を鵜呑みにするな
中学生の頃の僕は、いちいち女の子の言うことを鵜呑みにして、いつも頭を抱えていた。
「あの言葉の意味はなんだろう」
「なぜ、あんなことを言ったんだろう」
と、ずっと考えて、その言葉の真意を探ろうとした。
これは修学旅行のペアを決めるためのくじ引きで、ヒロインの伊織ちゃんが「瀬戸くんと一緒だったらいいな」と言うシーンである。
主人公の瀬戸は愚かであるため、伊織ちゃんの言葉一つ一つにいちいち動揺し、
「ど、どうとらえたらいいんだ今の言葉!?」
などと舞い上がったかと思いきや、次の瞬間には
「ガクゥ」
と落ち込んでいる。
愚か者め。
これは女に限らないが、自分の心情を言葉で正確に表現するのは本当に難しい。
言葉にして他人に伝えることができるのは、心情のごく一部だけなのだ。
だから僕たちは、相手の行動や表情、声の抑揚や挙動を細かく観察し、相手の感情を推測しなければならない。
秘密はいつだって、ノンバーバルな部分に隠されているのである。
それなのに非モテ(俺)はいちいちLINEの文章一つ一つに動揺したり、
「こんなことを言われた、どうしよう?」
などと狼狽する。
違うんだよ。
LINEの場合は、「書かれている内容」よりも、「頻度」とか「熱意」とか、そっちの方がよっぽど多くの情報を含んでいるのである。
余談だが、中学から高校にかけて、僕は彼女ができるたびに振られてきた。
振られるたびに、彼女の言葉をノートに書き写し、彼女の心を知ろうとした。
そして紙に書いて冷静に見つめ直せば直すほど、
「こいつ、何考えてンだか全然わかんねぇ」
となるのである。
女の人は「ただ嫌いになっただけ」とか「男として魅力を感じなくなっただけ」な場合でも、自分が悪者にならないようにたくさんの言い訳を用意してくれる。
これは女の優しさだ。
「〇〇くんは優しすぎたから」
「〇〇くんはいい人だけど...」
なんて言われて、「俺がいい人だったのがダメだったのかァ!」などと悩むのは時間の無駄である。
単に気持ち悪くなったか、他に気になる男ができたか、それだけなんだ。
言葉に振り回されるのはもうやめよう。
言葉はたしかに大事だが、本心は言葉にならないところに隠されているのだ。
それではエントリの最後にこの曲を聞いてください。
小田和正で「言葉にできない」