世間からだいぶ遅れてしまったが、2年くらい前から職場にチャットが導入された。
世の中には色々なチャットシステムがあるが、自分が所属するチームではスタンダードなSlack風のチャットを利用している。
それまでメールがコミュニケーションの中心だったが、チャットの導入をきっかけにメールのやり取りは激減。
多いときは1日50通以上メールが行き交っていたのが、今ではメールは1日2〜3通も送らない。
メールを使うのは違う部署の方にかしこまって連絡するときだけである。
チャットの気軽さ、手軽さ、素早さがメールという古いテクノロジーを駆逐した...とまではいかないが、
チャットを使ってからはメールを使うことはほぼなくなった。
コミュニケーションにおいて、チャットの方が明らかに効率が良いからである。
チャットの導入が現場に進むにつれ、そのあまりの手軽さに、近くにいるのにチャットで連絡するようなことが増えていった。
非同期のコミュニケーションは他人の作業を阻害しない。
ポイッとチャットを送っておけば好きなときに見ることができるし、割と快適に過ごせていた。
* * *
最近、ツイッターで
「電話してくる人間は他人の時間を尊重しないアホ」
という論を見ることがある。
たぶんこれ「バカの壁」があって、電話を未だに肯定する人って、仕事に本気で熱中したことがないんでしょうね。「邪魔される」という感覚がそもそも欠如している。加えて、新しいデジタルツールを使うリテラシーがない。これじゃ日本の生産性は上がらんよ。
— イケハヤ (@IHayato) 2017年6月16日
いつまでメールやファックス、電話で消耗してるの? / 仕事のやりとり、チャットが浸透 働き方改革が後押し (朝日新聞デジタル) #NewsPicks https://t.co/6FVhTIebp5
— 田端 信太郎@「ブランド人になれ!」7月発売 (@tabbata) 2018年3月20日
偶然にも炎上しやすい方たちのツイートをピックアップしてしまったが、けんすうさんも「電話は負荷が大きい」とおっしゃっている。
「電話をかけるの相手のコストが高いからやめろ」論があるけど、僕は単純な時間の単価じゃなくて、その日仕事ができなくなるくらい電話にエネルギー使うんです。フルマラソン並につかれる。だから、電話をする人は、相手にフルマラソンを強いているようなもんだと思って欲しい!
— けんすう (@kensuu) 2016年11月7日
僕は、電話はNG、お礼のメールいらない、お礼のごはんいらない、顔合わせのための打ち合わせ無駄派ですね。
— けんすう (@kensuu) 2017年3月22日
ただ、はあちゅうのツイートをRTしたときは、必ずLINEで「RTしました」と送ってます。これは礼儀ですからね。https://t.co/lkMMOXUifW
僕も社会人になりたての頃、それはもうずいぶんと昔の話ではあるが、色んな方に電話をかけまくり、コミュニケーションを図る先輩方を横目で見て、
社会人ってまるで彼女に電話するみたいに仕事中に電話しまくるんだな〜
と興味深く観察したものである。
今では長電話する人はずいぶんと減ったが。
電話中は作業ができないし、会議を入れまくる風潮は好きじゃない。
仕事の生産性を落とす大きな原因は、電話と会議、そして無駄な資料作りだと思う。
一方で、
電話が無駄だ
時代はチャットで非同期だ
他人の時間を尊重せい
という風潮が進むと、対面でのコミュニケーションが極端に少なくなってくる。
これは僕自身が陥った罠なのだが、対面のコミュニケーションがなくなりすぎると、微妙なニュアンスが伝わりきらずに認識齟齬が生じ、少しずつチームの雰囲気が悪くなってきてしまったのである。
チャットで何かをお願いするときは、要件だけを手短に伝えることが多い。
プロジェクトが順調なときはそれで全然うまく回るのだけれど、何か問題があるときにチャットでやり取りし続けると、感情面で微妙なズレが生じてくる。
よく言われていることだけど、人間のコミュニケーションには3つの要素がある。
- 言語
- 声のトーン
- ボディランゲージ
である。
この3つのうち、言葉がメッセージ伝達に占める割合は7%。
仕事とはいえ、「要件を書いた文字情報」だけでは真意が伝わりづらい場合もあるのだ。
参考:アルバート・メラビアン - コミュニケーションの三つの要素
一度チームの雰囲気が悪くなったことを反省して、大事なことや誤解を招いてはいけないことは対面で伝えるようにしたら、明らかに雰囲気が改善されていった。
たしかに対面のコミュニケーションはコストが大きく、相手の時間を奪ってしまうものだ。
時間は最も限られた資源なので、相手の時間は最大限尊重しなければならない。
それでもチームで仕事をする限り、対面でのコミュニケーションをゼロにするのは難しいと思っている。
雑談でもいいから少しでも話して声を交わせることで、
「あの人はこういうことが伝えたかったんだな」
とよく理解することができるし、何より対面でコミュニケーションを図ることで、その人を好きになることができる。
この仕事に一見不要そうな「感情」が、実はとても重要なんじゃないかと思うのだ。
「一緒に働いていて気持ちいい」
という実にエモーショナルな部分である。
「人は論理では動かない。感情で動く」
なんて話を仕事に当てはめるのはおかしいかもしれないが、ポジティブな雰囲気を保つためにも、ときどきでもいいから「話す」のは大事だと思うんだ。
もちろん、SkypeやGoogleハングアウトのようなビデオ会議的なのでもいい。
とにかく、業務中のコミュニケーションが文字だけの状態がずっと続くのは良くない。
文字だけコミュニケーションがずっと続くと、お互いの考えていることがわからなくなって、不穏な空気が流れる可能性がある。
最近はどの会社もチャットの導入が進んで、文字ベースでの非同期コミュニケーションが増えてきていると思う。
そんな中でも、やっぱり仕事の基本は人と人。
相手の感情に配慮して、少しでも雰囲気が悪くなったと感じたら意識的に「対話」を取り入れて、お互いの理解を促す心遣いは必要なのではないか、と思い直した次第だ。
もしかしたらチャットに慣れている方々はもっと効率的で、テキストを中心とした気持ちの良いコミュニケーションが取れているかもしれない。
散々対話は重要だと語ってきたけど、対話することで
「時間を奪われてムカつく」
という人がいた場合、逆に雰囲気が悪くなってしまう可能性だってある。
チーム作りは難しい。
どうやったら良い雰囲気で生産性の高いチームを作れるか、というのは長い時間をかけて研究していくべき課題だと考えている。