* LAST WAR 〜右手との戦争〜 *
こんな場所を探していた。
社会人になってから、今までずっと。
受験勉強時代。
僕はシャープペンを握って必死に英単語を暗記していた。
はずなのに、いつの間にかナニを握って必死にシゴいていた。
怪奇現象であった。
なぜ、ペンを握っていたはずなのにナニを握っているのか。
意味がわからず苦悩した。
意志とは無関係に右手が動き出してしまうこの現象を、地獄先生ぬ~べ~にならって「鬼の手」と呼んだ。
「鬼の手」の暴走を抑えること。
これが僕の長年の課題であった。
僕は悩み続けた。
自分の部屋にいたら、絶対に鬼の手を抑えることはできない。
家の外に行く必要がある。
僕の鬼は人前では姿を表さないからだ。
とは言っても、僕の鬼は子鬼程度の大きさなのだが。
しかし、いつでも図書館に引きこもることができた大学時代とは異なり、社会人になると自宅以外の引きこもり場所を探すのに苦労した。
一度有料の自習室に行ったことがあるが、狭くて窓がない部屋に人間を押し込んでいる感じが嫌になって、やめた。
そもそもパソコンを使うことができなかったのが大問題だ。
僕は自宅で右手と闘い続けた。
時々エクセルシオールで息抜きしながら、家に帰って別のモノも抜いていた。
その後決まって気“も”抜けてしまい、心から後悔していた。
勝利が見えないこの戦争に疲れきっていた。
そんなときに見つけたのが、六本木ヒルズの図書館だった。
六本木アカデミーヒルズ。
月額9,000円で毎日利用できるこの図書館は、僕の理想を体現したものだった。
広く開放的な空間。
パソコンが使えて、一日中いても苦にならない。
疲れたときは、窓一面に広がる東京の景色を見て休むことだってできる。
控えめに言っても最高の環境だった。
気を整え
拝み
祈り
構えて
図書館に行く
図書館を出て家に帰れば倒れるように眠る。
起きてまた行くを繰り返す日々。
2ヶ月を過ぎた頃、異変に気付く。
一日図書館にいても、ナニを握っていない
六本木ヒルズ49階。
東京がでっかいおもちゃに見えるくらいの高い場所で、僕は高らかに勝利を宣言した。
僕と右手の戦争は終わりを迎えたのだ。
僕は図書館を愛しすぎてる
ここから下は、煩悩から開放された僕が、この図書館の素晴らしさを伝える。
まず、広くて開放的な空間で気分よく勉強や仕事ができるところが素晴らしい。
図書館内はWi-Fiが完備されているため、PCを持っていけば情報収集に困ることはない。
僕はYoutubeでPerfumeのミュージックビデオを延々とリピートしながら勉強していた。
当然、どんなに動画を見ても速度制限をくらうことはない。
回線速度も特にストレスを感じない。
館内は明らかにMacが多いが、たまにレッツノートを使っている人もいる。
グループで借りて一緒に仕事している人もいるようだ。
タイピングが気になる人は、PC禁止の自習室もあるので、その部屋を利用すればいい。
そこでは会計士やロースクール、公務員試験の勉強をしている人が中心になっているようだ。
GMATの勉強をしている人もいた。きっと留学を考えているのだろう。
六本木ヒルズ49階の自習室から見える景色。
勉強しながらずっと景色を見続けているわけではないが、疲れたときの息抜きには最高だろう。
六本木ヒルズアカデミーにはFRESHNESS CAFEというカフェが併設されている。
会員は10%OFFで注文できるため、スタバより安くコーヒーを飲んで休憩できる。
サンドイッチを注文して東京タワーを見ながら休憩したときの映像がこちらである。
館内には地味に12,000冊もの本があり、ヒルズ族が好きそうなビジネス本が多い。
個人的にはビジネス本はそんなに好まないが、経営学・ファイナンス・会計などの本も多数配置されていることが特徴だ。
フラフラと館内を歩くだけでもずいぶんと気分転換になるだろう。
館内は基本的に静かで、勉強に集中しやすい雰囲気が保たれている。
ドレスコードもあり、サンダルは禁止だ。
利用者層は真っ当な社会人が中心で、不審な人間は僕だけだった。
静かな空間で勉強すると、家で机に向かう256倍は集中力が高まった。
一日ずっと図書館にこもることができた日は、深い達成感に包まれた。
僕はこれを求めていたのだ。
さて、これまでいいところばかり書いてきたけれど、もちろんダメな部分もある。
一つ目は、昼過ぎになると席が埋まってしまい、なかなか座れないということだ。
せっかく六本木まで来て、席に座れないとなると目も当てられないだろう。
寝坊しがちな人や、六本木から遠い人にはちょっと辛いかもしれない(僕も六本木から遠いので辛い)
二つ目は、トイレ(大)がけっこう混んでいるということだ。
トイレに行く度に満室で、大変なものを漏らしそうになった。
トイレをギリギリまで我慢することを生業とする人にはちょっと辛いかもしれない。
三つ目は、六本木ヒルズ周辺の飯が高いことだ。
併設されているカフェでサンドイッチばかり食べていると飽きる人もいるだろう。
だからといって、ヒルズの飯に行くとそれだけで1,500円くらいかかってしまう。
水も無料で飲めるわけではないので、飲み物代もかかるだろう。
僕は2リットルくらい水を飲むので、水だけで600円。それに加えてコーヒー代がかかる。
つまり、月に9000円の会費に加えて、図書館に行くたびにプラス2,000円~3,000円程度の出費を強いられてしまう可能性がある。(プラス電車賃もかかる)
なので毎週末、土日で図書館に行くとなると、ただ勉強するだけで毎月20,000〜30,000円(会費+食費等)の出費を見積もる必要がありそうだ。
会費以外の見えないコストを考慮しておかないと、財布を見てビックリすることになりかねない。
カフェなら500円×8日で4,000円で済むし、20,000円あれば自宅に机と椅子を買うことだってできる。
このように、アカデミーヒルズが素晴らしいとはいえ、全てに文句のないパーフェクトな環境と言えるわけではない。
今の家賃にプラス30,000円払えば、自習室がついているタワーマンションに住むことだってできるかもしれない。
そんなデメリットを踏まえても、個人的には「アカデミーヒルズライブラリー」は素晴らしい環境だと思う。
僕がお金をかけてでも買いたいものは「時間」だったからだ。
家で無駄な時間を使ってしまうたびに後悔していた。
物にお金を使って無駄遣いしたときよりも、よっぽどヘコんでいた。
だから僕はこの図書館が大好きだ。
もし体験したい人がいたら、ジムのように「半年縛り」などの制限はないので、集中して勉強したい時期などに有効活用するのはどうだろうか。
平日8時から見学も可能だし、会員と一緒であれば一日利用することもできる。
自習環境の確保は、ビジネスマンの死活問題だ。
市営図書館やカフェ、有料自習室や自宅環境の整備など、様々な選択肢を検討し、時間の有効活用を考えたい。