今回は、2026年3月4日に開催された「第7回 サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度に関するサブワーキンググループ(SWG)」の議論内容を整理し、自身の学びとしてまとめました。
このサブワーキンググループでは、昨今のサイバー攻撃の巧妙化を踏まえ、企業間取引におけるセキュリティ対策の信頼性をいかに担保し、サプライチェーン全体を強化するかという、わが国の産業競争力に直結する制度設計が検討されています。
- 資料1:制度構築の進捗と民間からの提言
- 資料3・別添2:パブリックコメントへの対応と制度の精緻化
- 資料4:SCS評価制度の全体像と段階別評価の仕組み
- 資料5:テクノロジーによる評価の自動化と効率化
- 資料6:金融エコシステムを活用した普及・定着戦略
- おわりに
資料1:制度構築の進捗と民間からの提言
本会合の議事次第(資料1)を確認すると、主な論点は、実施されたパブリックコメントの反映結果に基づく制度構築方針の確定と、社会実装を加速させるための民間企業からの情報提供です。特に、制度を単なる机上の空論に留めず、実務レベルでの運用性を高めるための具体的な議論が行われました。
資料3・別添2:パブリックコメントへの対応と制度の精緻化
「制度構築方針(案)」等に対して実施されたパブリックコメントには、合計569件もの多岐にわたる意見が寄せられました。これを受け、事務局は制度の対象範囲の再定義や、セキュリティ専門家・評価機関の要件への資格追加など、実効性を高める修正を行っています。また、多要素認証の実装要件や再委託先管理の責任分界など、現場が直面する具体的な課題についても、考え方が整理されました。
資料4:SCS評価制度の全体像と段階別評価の仕組み
本制度の核となる制度構築方針(案)(資料4)では、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)をスキームオーナーとし、IT基盤を対象とした段階別評価を導入することが示されています。基礎的な「★3」から、第三者評価を伴う「★4」、そして到達点としての「★5」へとステップアップする構造です。これにより、取引先への対策実施を促し、サプライチェーン全体でのセキュリティ水準の底上げを目指しています。
資料5:テクノロジーによる評価の自動化と効率化
普及の鍵を握る中小企業の負担軽減策として、SecureNavi株式会社より、AI等を活用したオールインワンサービス「StarQuest」の提案がありました。アセスメントシート作成の半自動化や、継続的な監査の実現に向けたツール提供により、評価プロセスの効率化と、評価サービスの供給量確保を両立させるアプローチが示されました。
資料6:金融エコシステムを活用した普及・定着戦略
株式会社NTTデータからは、地域金融機関をフロントとした普及シナリオが提示されました。信頼ある既存チャネルを通じて制度を周知し、セキュリティ対策状況を「事業性融資の与信モデル」へ組み込むなど、企業にとって中長期的なインセンティブが働く仕組みの構築が検討されています。これは、セキュリティを単なるコストではなく、企業の信用力として捉える試みと言えます。
おわりに
今回、サプライチェーン強化に向けた制度設計の資料を読み込み、セキュリティ対策が単なるITの課題ではなく、わが国の産業基盤を支える信頼のインフラとして再定義されようとしている過程を深く理解することができました。
特に印象的だったのは、「信頼の可視化と経済的インセンティブの融合」という考え方です。公的な評価制度を軸にしつつ、民間のテクノロジーによる効率化や、金融機関を通じた与信への反映など、多角的なアプローチで社会実装を図ろうとする動きは、非常に合理的かつ画期的だと感じました。また、膨大なパブリックコメントへの対応を通じて制度が研ぎ澄まされていく様子を学び、一過性の施策ではなく、持続可能な制度を目指す強い意志を感じ取ることができました。
高度化するサイバー脅威に対し、一企業だけでなくサプライチェーン全体で立ち向かうためのこの取り組みは、これからのデジタル社会において必須のピースです。私自身も、技術面だけでなく、こうした社会制度や経済的枠組みの視点を持つことで、セキュリティの重要性をより多層的に捉えられるようになり、大きな学びを得ることができました。