真言密教への正しい理解を促すために、故田中千秋先生の『入門 真言密教の常識』から大事な個所を引用します。この本は残念ながら絶版。
人生は苦であるというのは仏教の基本思想であり、仏教は多くの苦をあげている。
中でも一番一般的なのが四苦八苦、つまり生老病死の苦と、それに怨憎会苦(嫌いな人あるいはものと会わねばならぬ苦)愛別離苦(愛する者と別れねばならぬ苦)求不得苦(有形無形に関わらず求めても得られぬ苦)五陰盛苦(ごおんじょうく、体そのものにもられた苦)の四苦とを加えていう八苦である。
人はそれぞれに感受性が違い、少しずつ違った条件の下で生きている。しかし多くの凡人の一生は、いくつかの苦悩を背負ったり下したりしながら過ぎていく。
あるときは病苦にあえぎ、あるときは愛別離苦になき…。旅路が終わりに近づくと老苦や死苦が待っている。
苦悩に直面すれば誰でもそこからの脱却を考える。
それに苦の原因を知り、原因を除くのが筋道というものであろう。原因は自己のうちにも外にもあるはずである。
しかし、外ばかりに原因を探してはならない。遠方のものでもありありと見る神通力も考えられるが、仏教は必ずしもこれを重んじない。
外よりも自分の内を見るのである。内を見ると、そこには身心を悩ませ、けがし、かき乱す精神作用がある。それが煩悩である。
詳しくは後で触れるが、真言三密行は真言宗独自の行、速疾に証解を成する事の出来る行であるとされている(読んだり聞いたりして知るの知解といい、瞑想などによって急所を感知するのを証解と言う)。
その修法はまず行者の身口意の三密を整え、道場を結界しご本尊を勧請し香華などをなど供養し回向をもって締めくくる。
つづく
田中千秋著『入門真言密教の常識』朱鷺書房刊 p26~28から引用
