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小説『ブラジルのおばちゃん』1

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小学生の時、私は、

『ブラジルに行けるかもしれない……』

 
という、あわい期待を抱いていた。
 
田舎の小学生が、突拍子もないことだが。

 
母の親友がサンパウロにいて、息子の嫁に、姉か私どちらかをもらえないかと、
 
強烈なオファーをしていたのだ。

そうはならなかったから、今ここにいるわけだが。

 
母の幼なじみにして親友。

「ブラジルのおばちゃん」

帰国した時、母の所に寄ったのを一度だけ見た。
 
日本人には見えない。

浅黒い肌、ラテン系、美人だ。
 
日本語はほとんど忘れた。

そう言って、ポルトガル語をスラスラと書いた。
 
 
お土産はモルフォ蝶の壁掛けだ。
 
おばちゃんもご主人も日本人だが、息子さんは現地生まれ

ブラジル人と見た目で区別がつかないそうだ。

(おばちゃんの容姿からしてそうだろう。)

 
そういうわけで、おばちゃんは日本人の女性を嫁にほしがったが、

いかんせん、

青年の年齢に達している息子に対して、こちらは小学生。

私の国外脱出の淡い野望は砕けた。





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