
工藤隆蔵
前に座った女の子は、ずっとスマホを覗いている。
魂を吸い取られたような、呆けた顔で。脚は半開き。
と、その二人となりのサラリーマンはグレーのタイトなスーツに身を包み、
これまたスマホをいじり続けている。脚を開いて。
スマホを操作する指が、軽やかに画面を滑る。
爪はグレイッシュなカーキ色に丁寧に塗り揃えられている…?
じょ、女性?
その並びのニーハイソックスを履いた女子高校生が、落ち着かなげに周りをうかがう。
わたしの隣の席のご婦人は、モノトーンだが華やかさのある模様の和装。
きっとこの初夏の季節に似合いの素材なんだろう。
電車が停まる。和服のご婦人は、わたしに袖をふまれていなかったかと、
着物を気にしながら立ち上がる。
スケッチメンバーがあらかたが降りる。
あとに呆けた顔とわたしとスマホだけが残る。
春に投稿しそびれた記事。初夏の日に投稿しました。