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『3月のライオン』が好きすぎてあれこれ考えてしまう

※ この記事は、漫画『3月のライオン』のネタバレを激しく含みます。未読の方は是非先に本編をお読みください

羽海野チカ『3月のライオン』最新刊18巻に「次巻堂々、クライマックス」と書かれて衝撃を受けています。つまり残り10〜15話程度でこの物語が終わってしまうのだ。

『3月のライオン』が好きすぎて、何十回も読み返し、主人公の桐山零くんと彼を取り巻く人達とその物語を愛している。愛するゆえに細かい点がいろいろ気になったり、この物語は終わるのか、と思っている点が多々ある。物語がどのような結末を迎えるかわからないが、今気になっている点を記しておく。これは、粗探しではなく、思い込みであり、歪な愛の形である。

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零と香子、そして後藤

零と香子

1巻1話を読んで、この物語は零と香子の物語だと感じてしまった。零と香子の物語は交わるようで交わらない。

1巻 Chapter 7 の回想に描かれる、寝間着の零にのしかかる香子のシーンの前後はもう描かれないのだろうか。

香子と後藤

香子「よかった もらったばかりなのよ後藤に」(零の部屋に忘れた腕時計を受け取りながら)

羽海野チカ『3月のライオン』2巻 Chapter 20 より

病床の妻に尽くす後藤、ホテルに闖入した香子が悪さをしないように手を縛る(ひどい)後藤の姿から、「香子に腕時計をプレゼントした」事実がどうしても自分の頭の中では一致しない。

後藤と零

香子「……よかった 傷 残らないですんで… 後藤は まともじゃないから…」

羽海野チカ『3月のライオン』2巻 Chapter 17 より

後藤「元気そうじゃないか 残念だよ」
後藤「そっかあ このまま行くとお前とも当たる事があるって訳か…素手で殴るよかもちっとおもしろそうだしな」

羽海野チカ『3月のライオン』3巻 Chapter 25 より

Chapter 17 には後藤に殴られた回想シーンがあり、Chapter 25 の後藤のセリフもこれを肯定している。なんなら、「次は素手ではなく将棋で殴り合おうぜ」というテンションだ。
なのだが、このあと15巻を経過しても、後藤と零の対局シーンは描かれていないままだ。

香子「あなたの幸せもあの人の事も ここからでも せめて ありったけの願いを込めて……」

羽海野チカ『3月のライオン』13巻 Chapter 139 より

Chapter 139で、香子は零からも後藤からも離れてしまった。

零と香子と描かれるはずだった物語があったのではないか、とどうしても想像してしまう。その中で、零と後藤の因縁にも一定の決着がついて欲しかった。

島田

島田と胃痛

島田の持病の胃痛について。

島田「その頃からコイツはいつもこんな調子だった」
島田「軋んでいるのがシートなのか胃袋なのか それとも心なのか」

羽海野チカ『3月のライオン』4巻 Chapter 39 より

奨励会に通うころから島田は胃痛と共にあったことが描かれている。

神宮寺会長「まーた胃かよ 弱っちーな お前は昔から」

羽海野チカ『3月のライオン』4巻 Chapter 40 より

横溝「やっぱ神経性の胃痛は島田八段に訊けだねっ」
(他の棋士)「さすが胃痛のオーソリティだけありますねっ」

羽海野チカ『3月のライオン』6巻 Chapter 63 より

周辺の棋士や将棋連盟会長には「オーソリティ」と言われるくらい、「島田と言えば胃痛」という描かれ方をしている。

二海堂と島田

なのだが、

二海堂「珍しいな 兄者が具合悪いなんて……自己管理ちゃんとできててそんなに体調くずすタイプの人ではないんだがな…」

羽海野チカ『3月のライオン』4巻 Chapter 33 より

二海堂「兄者が体調悪いってなぜオレに教えん!?」

羽海野チカ『3月のライオン』4巻 Chapter 40 より

二海堂の4巻のこのセリフは、上に列挙した引用よりも古い話数のものである。島田と兄弟弟子であり、長い時間をともにしていたはずの二海堂が島田の胃痛を知らないということはあり得ない。おそらく、まだキャラが固まっていなかったのだろう。
私見だが、羽海野チカ先生の作品は、大きな描きたいテーマがあり、物語は毎回手探りで進んでいるのだろう。そういうところも物語の魅力である。

魅力でもあるが、やはり零と香子の物語がもっと描かれている未来もあったんじゃないのか?とか思ってしまうのだ。

二海堂

二海堂の食事

二海堂「ギガメックかぁ…いや よそう!!」

羽海野チカ『3月のライオン』1巻 Chapter 1 より

(零の家に上がり込んだ二海堂が、ピザとコーラを食べている)

羽海野チカ『3月のライオン』1巻 Chapter 2 より

幼い頃から病弱だった二海堂の苦しみと、それを乗り越えてきた強い意志が描かれてきたあとに Chapter 2 を読み返すと、意外とあっさりピザとコーラを食べる二海堂にちょっと拍子抜けしてしまう。これも、キャラが固まっていない初期ならではの描写だと思う。

「海」

ところで、「ニカイドウ」という読みの苗字に多く当てられる漢字は「二階堂」である。が、この物語のメインキャラの一人「二海堂晴信」に当てられている漢字は二「海」堂なのだ。自分はこの漢字に羽海野先生の想いを勝手に感じている。

二海堂「将棋でまで「弱い人間扱い」されたらもうボクはどこで生きて行ったらいいんですか!?」

羽海野チカ『3月のライオン』6巻 Chapter 61「冒険者たち」 より

桐山「ーー僕は二海堂の棋譜を思い出していてた 「迷い」「ためらい」「ひるみながらも」それでも「自分の今まで」を信じて「憧れの地」目指して 火の玉みたいに突き進む…まるで一篇の冒険小説のようだった」

羽海野チカ『3月のライオン』6巻 Chapter 61「冒険者たち」 より

6巻で「冒険者たち」という印象的なサブタイトルで描かれる二海堂の物語。

二海堂「一緒に旅をしよう オレの仲間になってこの呪われた船を出るんだ!!」
二海堂モノローグ(かわりに海と風の匂いが鼻をかすめた 夕べの続きみたいに)
二海堂「この人から風を受けてオレも更に速く飛べる 全然怖くない!すっげえ世界に行ける!」

羽海野チカ『3月のライオン』13巻 Chapter 129~135「風の2万空里」 より

13巻で、これまた印象的なサブタイトルかつ、6話わたり描かれる二海堂と宗谷の物語。この中で二海堂は船で旅をする冒険家のように描かれる。

二海堂の「海」の字には、そういった意味が込められているのだ。

冒険者たち

さて、最新18巻を見てびっくりしたのが目次だ。

  • Chapter 195 屋上にて
  • Chapter 196 気づいたものは
  • Chapter 197 冬のひだまり①
  • Chapter 198 冬のひだまり②
  • Chapter 199 聖橋①
  • Chapter 200 扉を開けて①
  • Chapter 201 扉を開けて②
  • Chapter 202 扉を開けて③
  • Chapter 203 扉を開けて④
  • Chapter 204 扉を開けて⑤
  • Chapter 205 扉を開けて⑥
  • Chapter 206 扉を開けて⑦
  • Chapter 207 聖橋②
  • Chapter 208 冒険者たち②
羽海野チカ『3月のライオン』18巻 目次より

Chapter 208「冒険者たち②」である。

「冒険者たち」の「2」。6巻(2011.7.22) Chapter 61「冒険者たち」の続きのエピソードが、18巻(2025.9.29) Chapter 208 なのだ。
12巻ぶりであり、14年ぶりであり、147チャプターを挟んでの「2」。ライオンの全話のサブタイトルとあらすじをスプレッドシートで管理しているのだが、前代未聞のことである。

目次の時点で驚きと興奮をもって、18巻を読み進めたのだが、読み終えたときにはちょっと自分でもびっくりするくらい落ち込んでしまった。「冒険者たち」を冠するエピソードに、「海を旅する冒険者」として描かれてきたはずの二海堂が出てこなかったのだ。物語は、島田と零の物語だった。

もちろん冒険者「たち」だ。『3月のライオン』は零とそれを取り巻く人たちを描いている。誰もが冒険者ということなのだろう。と思うが、自分が特別に二海堂に思い入れを持っているだけに、「あるはずの香子と零の物語が描かれなかった」という妄想と同じように「羽海野先生は二海堂よりも島田の方が大事になってしまったのかな」などと思ってしまうのだった。

まとめ

冒頭に書いたように、

これは、粗探しではなく、思い込みであり、歪な愛の形である。

全然見当違いのことを言っているかもしれないし、なんせまだ未完である。最後の単行本で何が起きるかわからない。このあとどんな話が紡がれるか。思い入れたっぷりに、既刊を読み返しながら、この長い物語の完結を楽しみに待とうと思う。

羽海野チカ先生におかれましては、どうぞお体を大事に、ゆっくりでもよいので気の済むまでこの素晴らしい物語の最後を描ききってください。

onishiアドベントカレンダー2025、14日目でした。




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