「上乗せ」とか「付け出し」とか、行政法の説明が付くでしょう
「鳥取県青少年健全育成条例」の解説令和7年度
第10条
9 この章以下において「児童ポルノ等」とは、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)第2条第3項に規定する児童ポルノ又は同法第7条第2項に規定する電磁的記録その他の記録をいい、生成AIその他の情報処理に関する技術を利用し、青少年の容貌の画像情報を加工して作成した姿態(当該青少年の容貌を忠実に描写したものであると認識できる姿態に限る。)を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録及びその記録媒体を含む。8 「児童ポルノ等」の定義
(1)「児童ポルノ」は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ禁止法」という。)第2条第3項において「写真電磁的記録(略)に係る記録媒体その他の物であって(略)児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。」と定められており、データ(電磁的記録)そのものではなくデータの記録媒体などの有体物を指します。
なお、単に文字や音声で描写するだけであって児童の姿態を視覚により認識することができない小説や録音テープは該当しません。
「電磁的記録その他の記録」は、児童ポルノ禁止法第7条第2項に規定する「第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録」を指し、第9項は、有体物である児童ポルノとその電磁的記録をあわせて「児童ポルノ等」と定義しています。
(2)第9項は、条例が定義する「児童ポルノ等」が一定の要件を満たすいわゆる性的デイープフェイクを含むことを確認的に規定しています。
昨今のデジタル技術の著しい発展により、卒業アルバムやSNSに掲載されている実在する青少年の顔写真や顔画像データを生成AIアプリで加工し、あたかも当該青少年の実写の性的姿態であるかのような画像(=いわゆる「性的ディープフェイク」)を作成することが容易にできてしまう実態がありますbまた、こうした性的画像が匿名性の高いSNSで共有・拡散されている事案も確認されていますb児童ポルノ禁止法は、実在する18歳未満の児童の性的自由(性的虐待及び性的搾取をされない自由)を保護しているところ、このような性的画像を作成又は第三者に提供(インターネット上への拡散を含む。)されることはまさに実在する児童の性的搾取及び人権侵害であり、こうした性的画像は実在する児童の姿態を描写したものとして児童ポルノ禁止法による処罰対象となりうるものと考えられますが、現行法の規定上、必ずしも明らかでないことから、これを明確化したものです
(3)「生成AIその他の情報処理に関する技術」とは、学習データを基に画像や映像を創造することができる人工失畦関連技術その他の情報処理システムに関する技術をいい、CG(コンピュータグラフィクス)も含みます
(4)「青少年の容貌の画像情報を加工して作成した姿態(当該青少年の容貌を忠実に描写したものであると謡哉できる姿態に限る。)」とは、実在する青少年の顔画像データ(動画データを含む。)を生成AIアプリなどにより加工して作成した性的姿態であって、通常一般人から見て当該青少年の実写の性的姿態であると見紛うようなものをいいます。
したがって、生成AIアプリを用いて作成した画像であっても、複数人の顔画像データから実在しない青少年の顔を合成して作成したようなものはこれに含まれません。
参考裁判例
令和2年1月27日最高裁判所第一小法廷決定
平成29年(あ)第242号児菫買舂,児菫ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する||法律違反被告事牛|被告人力i衣服を付けない実在する児童の姿態が撮影された写真の画像テータを素材として画像編集ソフト等を使用して描写したコンピュータグラフィックス(以下「CG」という。)を作成し、このCG集をインターネットを通じて不特定又は多数の者に販売した事案について、最高裁判決は高裁判決を支持し、当該描写が児菫ポルノに該当し、児童ポルノ製造罪が成立すると判示した。
「児菫買舂児菫ホルノに係る行為等の処罰及び児菫の保護等に閏する法律(平成26年法律第7119号による改正前のもの。以下「児童ポルノ法」という。)2条1項は「児童とは18歳に満たない者をいうとしているところ,同条3項にいう「児童ポルノ」とは写真電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって,同項各号のいずれかに掲げる実在する児菫の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいい,実在しない児童の姿態を猫写したものは含まないものと解すべきである。
※下記は補足意見
「児童ポルノ法2条3項に定める児童ポルノであるためには、視覚により認識することができる方法で描写されたものが、実在する児童の同項各号所定の姿態であれば足りる。
児童ポルノ法7条が規制する児童ポルノの製造行為は児菫の心身に有害な影響を与えるものとして処罰対象とされているものであるが、実在する児童の性的な姿態を記録化すること自体が、性的搾取であるのみならず、このように記録化されたされた性的な姿態が他人の目にさらされることによって,更なる性的搾取が生じ得ることとなる。
児菫ポルノ製造罪はこのよう性的搾取の対象とされないという利益の侵害を処罰の直接の根拠としており,上記利益は描写された児菫本人が児菫である間にだけ認められるものではなく,本人がたとえ18歳になったとしても,引き続き,同等の保護に値するものである。
児童ポルノ法は,このような利益を現実に侵害する児童ポルノの製造行為を処罰の対象とすること等を通じて,児童の権利擁護を図ろうとするものである。平成29年1月24日東京高等裁判所第10刑事部判決
※上記事件の高裁判決
(ア)所論は,原判決が,「一般人からみて,架空の児童の姿態ではなく,実在の児童の姿態を忠実に描写したものであると認識できる場合には,実在の児童とCGで描かれた児童とが同一である(同一性を有する)と判断でき」ると説示した点をとらえて,一般人が,実在の児童の姿態を忠実に描写したと認識しさえすれば,実在しない児童の姿態を描写した場合についても処罰の対象となる趣旨であるとして,この点を種々論難する。
そもそも,原判決は,前記のとおり,児童が実在することを要するとの前提に立った上,本件CGについて,被写体となった児童が実在するか否かを,各CGの元となった素材画像の写真の出典等について検討した上で判断し,実在性が認められたものについてのみ,児童ポルノに該当すると判断したのであるから,実在しない児童の姿態を描写した場合も処罰の対象となるという判断をしたとの所論は,前提を欠くものである。
さらに,原判決が上記のように説示した趣旨は,その実際の判断過程に即してみると,素材画像の被写体となった児童の実在性が認められた場合に,当該CGの画像等が,その実在する児童を描写したといえるかどうか,すなわち,被写体となった実在の児童とそれを基に作成されたCG画像等が,同一性を有するかどうかを判断するに当たって,一般人の認識という基準を用いたものと解される。このように,通常の判断能力をもつ一般人が,社会通念に照らして実在する児童と同一であると認識できる場合には,当該描写行為等が処罰の対象となることを認識できるから,このような基準を採用したからといって,刑罰法規の明確性を害するものではない。そうすると,原判決の前記説示は,いささか表現が不明確ではあるものの,その判断に誤りはない。所論は,原判決を正解しないものであって,採用の限りでない。
(イ)所論は,「児童の姿態」とは,実在する児童が被写体となって,実際にとった姿態に限られると主張し,一般人がどう認識しようが,実在しない児童の姿態を処罰の対象とすることは法の趣旨を逸脱するものであると主張する。
しかし,必ずしも,被写体となった児童と全く同一の姿態,ポーズをとらなくても,当該児童を描写したといえる程度に,被写体とそれを基に描いた画像等が同一であると認められる場合には,その児童の権利侵害が生じ得るのであるから,処罰の対象とすることは,何ら法の趣旨に反するものではないというべきである(児童ポルノ法の趣旨については,後に検討する。)。
なお,この点に関して,所論は,当審で取り調べたB氏の意見書を引用し,写真を参考にした絵画表現は,機械による複写とは異なり,独立した新たな創作物であるから,手描きの作品を機械による複製と同視することは,罪刑法定主義に反するとも主張する。
そもそも,被告人の本件CGの作成方法については,原判決が認定するとおり,一から手描きで描いたものではなく,パソコンのソフトを利用して素材画像をなぞるなどして作成されたものであると認められ,純粋な手描きによる絵画とは異なるものであるが,この点を措くとしても,一般に,写真による複写の場合であっても,現在の技術を前提とすれば,データを容易に加工することが可能であり,他方,手描きによる場合であっても,被写体を忠実に描写することも可能であることからすれば,必ずしも,描写の方法いかんによって児童ポルノの製造に当たるか否かを区別する合理的な理由はないというべきである。描写の方法がいかなるものであれ,上記のとおり,実在する児童を描写したといえる程度に同一性の認められる画像や絵画が製造された場合には,その児童の権利侵害が生じ得るのであるから,そのような行為が児童ポルノ法による処罰対象となることは,同法の趣旨に照らしても明らかである。ちなみに,児童ポルノに絵画が含まれ得ることは,児童ポルノ法の立法段階においても前提とされていたことである。
罰則
(児童ポルノ等の作成、製造及び提供の禁止)
第18条の3 何人も、児童ポルノ等の作成又は製造(県内に居住し、又は県内に通学若しくは通勤する青少年の容貌の画像情報を加工して作成した姿態に係る児童ポルノ等について本県の区域外で行われる作成又は製造を含む。)をしてはならない。
2 何人も、SNSの利用その他の手段により児童ポルノ等の提供(県内に居住し、又は県内に通学若しくは通勤する青少年の容貌の画像情報を加工して作成した姿態に係る児童ポルノ等について本県の区域外で行われる提供を含む。)をしてはならない。
3 知事は、前2項の規定に違反した者に対して、期限を定めて、当該児童ポルノ等の廃棄、削除その他の必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
4 知事は、前項の規定による命令を受けた者が当該命令に従わないときは、その者の氏名若しくは名称又はこれらに代わる呼称及び当該命令の内容を公表することができる。この場合、当該公表による青少年の心身への影響に十分配慮するものとする。【関係条文】
第28条第18条の3
第1項又は第2項の規定に違反したときは、当該違反行為をした者は、5万円以下の過料に処する。
2 第18条の3第3項の規定による命令を受けた者が当該命令に従わないときは、5万円以下の過料に処する。
【要旨】
本条は、すべての者に対して、児童ポルノ等の作成、製造、提供を禁止する規定です。
【解説】
1 第1項は、児童ポルノ禁止法第7条第3項から第5項まで及び第7項が定める児童ポルノの製造禁止について条例において確認的に規定しているとともに、同法第7条第2項に規定する電磁的記録その他の記録の作成を禁止しています。
本項は、県内青少年の児童ポルノ等を県外で作成・製造する行為も明示的に禁止しており、条例の効力が一般的に属地主義であることの例外となります。また、本項により禁止される児童ポルノ等の作成又は製造については、目的は問いません。したがって、いじめ目的で青少年の児童ポルノ等を作成・製造した場合も含まれます。
2 第2項は、児童ポルノ禁止法第7項第2項及び第6項が定める児童ポルノ及びその電磁的記録の提供禁止について条例において確認的に規定するものです。本項は、県内青少年の児童ポルノ等を県内から県外へ提供すること、県外から県内へ提供すること、県外から県外へ提供することのいずれも明示的に禁止しており、条例の効力が一般的に属地主義であることの例外となります
また、本項は、児童ポルノ禁止法と同様、目的を問わず全ての提供を禁止しています。
3 「何人も」とは、第15条の解釈と同じく、県民はもとより旅行者、滞在者などの全ての自然人を指し、国籍性別、年齢を問いません。
4 「児童ポルノ等」とは、第10条第9項に規定する児童ポルノ等をいい、いわゆる全身の実写画像のみならず、生成AIその他の情報処理に関する技術を利用し、青少年の容貌の画像情報を加工して作成した姿態(当該青少年の容貌を忠実に描写したものであると認識できる姿態に限る。)を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録及びその記録媒体を含みます。
5 第3項は、児童ポルノ等の作成・製造・提供の禁止に違反した者に対して知事が命令を行うことができる旨の規定であり、例えば、違反者から当該児童ポルノ等の提供を受けた第三者に対して当該児童ポルノ等の削除を命ずることはできません。また、「必要な措置」としては、例えば、違反者自身が当該児童ポルノ等を提供した第三者に対して当該児童ポルノ等の廃棄を依頼することや、違反者自身がインターネット上に拡散された当該児童ポルノ等の投稿削除依頼をプラットフォーム事業者に対して行うことなどが想定されます。
なお、インターネット上に掲載された児童ポルノ等については、本項による対応とは別途被害者が、特定電気通信による情報の流通によって発生する権禾|脹害等への対処に関する法律に基づく発信者情報の開示請求を行うことや、プラットフォーム事業者に画像の削除依頼を行うことも可能です。
6 第4項は、第3項の規定に基づく命令を受けた者が当該命令に従わない場合に当該者の氏名(法人の場合はその名称)又はこれに代わる呼称を命令の内容とともに公表できる旨を定めています
「これらに代わる呼称」とは、例えば、通称やSNSのアカウント名などを想定しています。
本項に規定する公表は、違反者に対する制裁的意味合いも有するものの、県民への注意喚起や抑止力としての意味合いも持っており、罰則として位置付けられてはいません。公表を行うか否かは、行為の悪質性の程度(商業目的であるか否力等)や公表により被害者及び違反者に及ぼす影響の程度、県民への注意喚起の必要性等を総合的に勘案して決定します。例えば、違反者が被害者と知人である青少年であった場合、違反行為の態様によっては、違反者の氏名を公表することが被害者及び違反者のその後の心身の健全な成長の妨げとなるおそれがある場合も想定されるところ、こうした場合には、公表を行わないか、氏名は非公表として命令内容のみを公表することが考えられます
7 第1項又は第2項の規定に違反して児童ポルノ等を作成・製造・提供した者は、5万円以下
の過料に処すこととされています(条例第28条第1項)。また、第3項の規定による命令を受けた者が当該命令に従わないときは、5万円以下の過料に処することとされています(第28条第2項)。これらの過料は刑罰ではなく行政処分(秩序罰)であり、各規定に基づき過料を課すか否か及びその金額については知事に裁量があり、行為の悪質性等を踏まえ総合的に判断します。なお、第3項の規定による命令を受けた者が当該命令に従わない場合、公表及び過料の対象となり得ますが、これらの適用は連動するものではなく、それぞれ個別に判断されます。第28条
1 第18条の3第1項又は第2項の規定に違反したときは、当該違反行為をした者は、5万円以下の過料に処する。
2 第18条の3第3項の規定による命令を受けた者が当該命令に従わないときは、5万円以下の過料に処する。
【要旨】
本条は、禁止規定の実効性を確保するため、これらの規定に違反した者に対して一定の過料(行政上の秩序罰)を科す旨を規定したものです。
【解説】
1 本条は、児童ポルノ等の作成、製造及び提供の禁止規定に違反した者並びに児童ポルノ等の廃棄、削除その他の必要な措置をとるべきことの知事命令に違反した者に対し、それぞれ5万円以下の過料を処すことを規定しています。
2 「過料」は金銭罰の一種ですが、罰金や科料のような刑罰ではありません。本条例の過料の性質は、行政上の秩序罰としての過料であり、条例上の義務に違反した者に対し制裁として科せられるものです。