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児童買春罪で無罪(名古屋地裁h21.12.4)

 無罪判決は大阪地裁と名古屋地裁で1件ずつ。
 同様の問題を抱える人は、弁護人を聞いて、相談してみてください。
 ヒントとしては、被告人に近い所の事務所で、若い弁護士さんでした。プロファイリングじゃなくて、調べました。

http://www.47news.jp/CN/200912/CN2009120401000578.html
児童買春の被告に無罪判決 被害者供述に「信用性ない」
 18歳未満の少女に金を渡しわいせつな行為をしたとして児童買春・ポルノ禁止法違反の罪に問われたタクシー運転手の男性被告(69)=愛知県春日井市=の判決で、名古屋地裁(堀内満裁判長)は4日、無罪(求刑罰金50万円)を言い渡した。
 堀内裁判長は判決理由で「少女は捜査で明らかになった客観的事実に合わせて供述を変えており、供述に信用性があるとは言えない」と述べた。
 弁護人によると、男性は昨年8月に逮捕され当初は容疑を否認していたが、取り調べから逃れたいと思い途中で認め、名古屋簡裁が罰金40万円の略式命令。その後あらためて正式な裁判を請求し、無罪を主張していた。
 男性は「当たり前の判決が出た」と喜び、弁護人は「裁判所の判断に敬意を表したい。無罪の確定を願う」と話した。


 タクシー運転手による、車内での淫行とか強制わいせつ事件で、否認事件というのはときどき見かけます


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091204-00000205-jij-soci
 男性は昨年5月29日未明、愛知県小牧市の路上でタクシーに乗車してきた少女が18歳未満と知りながら、現金1万円を渡してわいせつな行為をしたとして略式起訴された。男性は罰金40万円の略式命令に応じて釈放された後、無罪を主張して改めて正式裁判を請求した。
 男性の弁護人によると、少女は事件後、知人らと一緒にタクシー会社に押し掛け、「どう責任を取るんだ」と男性を脅したという。男性は、逮捕後の警察の取り調べで自白を強要されたとしている。 

児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件

名古屋地方裁判所判決平成21年12月4日
       主   文
 被告人は無罪。
       理   由

第1 本件の公訴事実及び争点
 1 本件公訴事実は,「被告人は,平成20年5月29日午前1時55分ころ,愛知県小牧市ab番地付近路上を走行中の普通乗用自動車内において,Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,同児童に対し,現金1万円を対償として供与して,同児童に自己の陰茎を口淫させるなど性交類似行為をし,もって児童買春をしたものである。」というのである。
 2 本件における争点は,(1) 被告人がAと性交類似行為をしたか,(2) 性交類似行為の対償として1万円を供与したか,(3) Aが18歳に満たない児童であることを被告人が認識していたかの3点である。弁護人は,これら全てを否定し,被告人の無罪を主張する。
第2 前提事実
   関係証拠によって認定でき,かつ,当事者間にも特段争いのない事実は以下のとおりである。
 1 平成20年5月29日(以下,特に断りがなければ全て同日のことである。)午前1時40分ころ,Aは知人であるBの家から自宅へ帰るため,愛知県春日井市cd丁目e番地付近路上で,被告人が運転するタクシーに乗車し,「X店まで。」と行き先を告げた。
 2 タクシーが発進後,被告人とAの間で,Aが前記Bとセックスをしたことなどの会話があった。タクシーは同市f町g番地h所在のY商店の前で一旦停車し,Aが後部座席から助手席に移動し,被告人がAに1万円札を手渡した。
 3 タクシーは同所を発進した後,同県小牧市ab番地付近のa交差点を経由して,午前2時5分ころ,目的地であるX店付近に到着し,Aはタクシーから降りた。その際,Aは被告人の求めに応じて自己の携帯電話番号を教え,午前2時6分ころ,被告人がその場で自分の携帯電話からAの携帯電話に電話をかけ,Aの携帯電話に着信履歴を残した。
 4 なお,Aがタクシーに乗車してから降車するまでの間である午前1時55分ころ,Aの携帯電話に,帰宅を心配する母親から電話があったが,Aはこれに出なかった。
第3 A供述の検討
 1 被害状況について,Aは公判廷において以下のように述べる。
   タクシーに乗車後,被告人が,セックスをしたのかと聞いてくるなど性的な会話があり,1万円あげるからセックスしないかと言ってきた。早く帰らなければいけないなどと暗に被告人の申し出を断ろうとしたが,被告人はあきらめず,タクシーを止めて助手席に移るよう言い,後部座席左側ドアを開けたため,やむなく被告人の指示に従い助手席に移動した。足下に置いたかばんの中の携帯電話に母親からの電話が入ったことが,着信を知らせる携帯電話の振動で分かったが電話には出ずそのままにしておいた。被告人から1万円を手渡されたので,セックスするのは嫌だったが身体を触られるのは仕方がないと思っていた。被告人は,バイアグラを飲むと言い運転席で薬を飲んだ。運転席に近付くように言われ近付くと,被告人は右手を服の中に入れて胸をもんできた。その際,被告人はホテルへ行こうなどと言ったが嫌だと断った。被告人はタクシーを発進させ,タクシーを走らせながら,左手で胸をもんだりし,パンツを脱げと言って陰部に左手の指を第1関節くらいまで入れてきた。その際,被告人はあまりぬれてないねと言ったので,やりたくないからと答えた。その後,被告人は運転しながら右手で自分のベルトを外し,ズボンのチャックを開けて陰茎を出し,「フェラして。」などと言って口淫を要求してきた。口淫するのは嫌だったが陰茎に顔を近付けたところ,後頭部を左手で軽く押され,口淫を始めた。しかし,被告人の陰茎は勃起しなかった。
 2 しかしながら,Aの公判供述にはその信用性に疑いを抱かせる以下のような事情が認められる。
  (1)Aは,被告人の陰茎の特徴について,捜査段階で以下のように述べたことが認められる。
    (平成20年5月29日付け警察官調書。なお,以下の年月日は全て平成20年である。)
     「フェラチオをするときに分かったのですが,亀頭のカリの部分に,何個かのイボイボがあったので,イボか出来物かなと思いました。」
    (7月25日付け警察官調書)
     「チンコの先っぽの方にイボイボが10個くらいある,なんでイボイボがあるんだろうと思っていたのでした。」
    (8月5日付け警察官調書)
     「チンコの先っぽの少し下に小さなイボが10個くらいあったことを目では見ていませんが,唇や舌で感じたのでした。私は,今までに交際している彼を含め5人位の男性とのエッチをした経験があり,フェラも何十回もしたことがありますが,これまでチンコにイボが付いている人はいなかったので,チンコにイボイボがあるなんて初めてだと思い,とても印象に残っているのです。イボの大きさは,本当に小さくて私が描いて提出した図くらいの大きさでイボをつまんで引っ張ると簡単にとれそうな感じがしました。」(Aが書いた「イボの状況」と題する図面が調書末尾に添付されている。)
    (9月4日付け検察官調書)
     「運転手のおじさんのチンコの先っぽのほうに,イボが10個くらいあったとお話ししましたが,タクシーの中はとても暗く,目で見て直接確認したわけではありません。私がフェラチオしているときに,口や舌の感覚でイボがあると感じただけで,男の人のチンコの形が状況によって変わることからしても,イボがあったとは自信を持って言えません。」
    Aは,事件当日である5月29日から8月5日までに行われた取調べにおいて,被告人の陰茎にはいぼがあった旨一貫して述べている。しかも,いぼは10個くらいあったとその個数まで述べたり,つまんで引っ張れば簡単に取れそうなどとその形状についてまでも述べ,8月5日の取調べにおいては,「チンコにイボイボがあるなんて初めてだと思い,とても印象に残っているのです。」とその時感じた印象まで述べた上に,陰茎に付着するいぼの状況を図に書いている。このように,Aは,被告人の陰茎の特徴について,具体的かつ印象的に供述していた。
    ところが,9月4日の取調べにおいては,「イボがあったとは自信を持って言えません。」と供述を変え,それまでの供述内容を後退させた。供述を変えた理由について「タクシーの中はとても暗く,目で見て直接確認したわけでは」ないからとか,「男の人のチンコの形が状況によって変わることから」などと述べているが,それまでも「目では見ていませんが,唇や舌で感じたのでした」(8月5日付け警察官調書)といった供述をしていたのであり,男性の陰茎の形が状況により変わり得ることもそれまでの供述時点でAは知っていたとうかがわれることから,変遷の理由の説明が合理的であるとはいえない。
    この点,Aの9月4日付け検察官調書は,被告人が本件事件で逮捕された後に作成されたものであること,Aの公判供述によれば,検察官による取調べの際,被告人の陰茎のいぼについては,Aが述べるような事実はなかったと検察官から言われたこと,被告人も公判廷において,8月19日に取調官に確認されたが,いぼなどはなかった旨述べていることからすると,Aが8月5日の取調べまでに供述していた,被告人の陰茎の特徴についての内容が,少なくとも,8月19日時点における被告人の陰茎の状態とは異なっていたことは明らかであり,Aの9月4日付け検察官調書は,この事実に合わせる形で作成されたものと推測される。
    前記8月19日は,事件があった5月29日から2か月と20日程度が経過しており,その間に被告人の陰茎の表面の状態が変化したことも考えられないわけではない。しかしながら,そうした事情は本件全証拠を精査してみても明らかではなく,検察官も論告において何らの言及もしていない。そうである以上,被告人の陰茎の表面が事件後変化した可能性を推認することは,「疑わしきは被告人の利益に」の見地から採り得ない。
    そうすると,Aは,捜査段階において,被告人の陰茎の状態に関し客観的事実に反する内容の供述をしていたことになる。初めて会った男性の陰茎を口淫するという印象的な被害について,客観的事実と異なる供述をしていたという事実は,被告人に口淫をさせられた旨述べるAの公判供述の信用性に重大な疑問を投げかけるものというべきである。
  (2)次に,Aは,母親から電話があったのは,タクシーが停車して助手席に移動した後,口淫前であると述べる。ところが,捜査段階では,この点に関して以下のように述べたことが認められる。
    (5月29日付け警察官調書)
     「フェラチオはしてあげたのですが,(中略)全然元気にならないので,少ししてフェラチオを止めました。そうこうしているところで,私の携帯電話に母から電話が掛かってきました。」
    (7月16日付け警察官調書)
     「写真番号24番には,「母ちゃん」とありますが,これは私の母の使っている携帯電話番号で,私がタクシーの中で運転中にフェラさせられている最中に母から架かって来た電話なのです。それが,5月29日午前1時55分であることが確認できます。」
    (7月16日付け警察官調書)
     「電話が鳴っていたのでフェラを止めて,電話の相手を確認すると母からだったのですが(中略),その時に,Zだと思った覚えがあり,そう思っているとタクシーはじきにX店に着いた覚えですので,母から電話が入ってきた午前1時55分ころ,私が被告人にフェラさせらていたのは,被告人が運転するタクシーが愛知県小牧市地内を走行中であったことは間違いないのです。」
    (7月25日付け警察官調書)
     「私は,好きでもない人のチンコをしゃぶらされ,本当に涙が出るくらいイヤな気持ちだったのです。そうしている時に,私の携帯電話が振動したので,私は,自分の携帯電話を手に取り確認したのです。すると,母から私に架かってきた電話でしたので出るのをやめたのでした。」
    (8月5日付け警察官調書)
     「フェラさせられている最中の午前1時55分ころには,私の携帯電話に母から電話が入ってきたことは前にお話ししたとおりです。私は,母からの電話を区切りにフェラを止めたのですが,フェラを止めるとじきに私が降車場所として指定したX店の前に着いたのでした。」
    (9月4日付け検察官調書)
     「私がフェラチオしているとき,私の鞄の中に入れておいた携帯電話に着信があり,振動しているのがわかりました。(中略)このとき,タクシーの外を見ると,私の家の近くにあるZという大きな工場があるのが見えました。」
    以上のとおり,Aは,事件後まもなくから,母親から電話があったのは口淫をしている最中あるいはそれが終わったころであると,口淫と母親からの電話を関連付けた内容を,明確かつ一貫して述べていた。そして,母親からの電話が午前1時55分にかかってきたことから,口淫させられていた時刻が午前1時55分ころであるとも述べていた。
    ところが,公判廷では,母親からの電話は,Aが性的な被害を受ける以前であった旨,捜査段階での供述内容とは異なる供述をした。供述を変えた理由についてAは,「ずうっと考えていたら思い出しました。」と述べるにとどまっており,それ以上の説明はない。
    この点,関係証拠を総合すれば以下のような推論が可能である。すなわち,被告人立会による走行経路に関する引き当たり捜査等によれば,乗車から降車までの走行距離は約9.7キロメートルであり,タクシーが途中で停車した場所は,乗車場所と降車場所のほぼ中間地点に位置する。また,被告人運転のタクシーに関する乗務員日報などによれば,Aの乗車時刻は午前1時40分ころであり(日報にある午前1時44分との記載はメーターを倒した時刻),降車時刻は午前2時5分ころ(日報には午前2時7分とあるが,午前2時6分に被告人がAの携帯電話に電話をしていた事実があり,これは明らかに停車後のことであるから実際の停車時刻はそれより更に前と推察される。)と認められ,午前1時55分という時刻は,乗車から約15分後,降車約10分前となる。そうすると,これら客観的証拠から明らかな事実関係を前提にすると,午前1時55分という時刻は,タクシーが途中停車した後,まもなくのころということになる。これに対して,Aは,先に述べたとおり,捜査段階において,母親から電話があったのは口淫している最中あるいはそれが終わったころであった,母親から電話があった際,車の外を見ると,Zの大きな工場があるのが見えたと述べており,Zの工場は,降車場所からさほど距離を置かない位置にあることから,口淫と母親からの電話を関連させたAの供述は,時間的にも場所的にも客観的事実と整合しないことになる。
    もとより犯罪被害という異常事態におかれた者が,屈辱,ろうばいなどといった冷静さを欠いた心理状態となり得ることは容易に想定されるところであり,観察や記憶が混乱したとしても何ら不思議ではない。場所や時刻の特定などは特に不確定要素が多くなることは避けられないところである。更には,被害を受けたかどうかという問題といつ被害を受けたかという問題とは別の事柄であるから,被害を受けた時刻に関する供述があいまいだからといって被害を受けた事実に関する供述の信用性までが直ちに否定されるわけではない。
    しかしながら,タクシーに乗車している間,母親からの電話は1回しかかかっておらず,その1回の電話を,口淫という,Aにとっては屈辱的ともいえる行為と結び付けて述べていたのが,その後,母親からの電話があったのは一連の性的な被害を受けるより前の出来事であったとその供述を変えたことは,観察や記憶の混乱といった事象では説明が困難といわざるを得ない。むしろ,前記推論からすれば,Aの公判廷での供述は,捜査段階での供述後の捜査によって明らかとなった客観的事実と整合させるため変わったとみざるを得ない。このように客観的事実と異なる供述を一貫して述べていたのに,その後あたかも客観的事実と整合するかのように供述を変えるという供述態度は,Aの供述の信用性について重大な疑問を抱かせるものである。
  (3)さらに,途中でタクシーが停車した場所について,Aは公判廷で,「真っ暗で細い道」「自動販売機が置いてあって,ちっちゃいお店みたい」な場所と述べる。ところが,捜査段階では,この点に関して以下のように述べたことが認められる。
    (5月29日付け警察官調書)
     「周りが木で囲まれていて,灯りがない真っ暗なところで,車1台分くらいしか通れない位の道でした。」
    (8月5日付け警察官調書)
     「人気の無い暗い立木に覆われた森みたいな感じのする場所」
    (9月4日付け警察官調書)
     「周りに明かりがほとんどなく,自動販売機の明かりが目についたのを覚えています。」
    タクシーが停車した場所が暗いところであったという点では共通しているものの,当初は,「木で囲まれていて」「立木に覆われた森みたいな感じがする場所」と,周囲の状況についても述べていたのに,9月4日付け検察官調書にはそうした記述はなく「自動販売機の明かり」が述べられるに至った。自動販売機の明かりは,周囲が暗い状況であればあるほど印象的なものとなり記憶にも残りやすいはずであるのに,そのことが9月4日の取調べ以前には何ら述べられなかったのは,これまた不自然といわざるを得ない。これについては,8月19日に,被告人立会の下で行われたタクシーの走行経路を明らかにするための引き当たり捜査の結果,一時停車した場所が特定され,それによれば,タクシーが停車した場所は,愛知県春日井市f町g番地h所在の片側1車線道路に沿ったY商店駐車場前であり,同所には,自動販売機が店舗前に複数台横一列に設置されていることが明らかになった。Aの,9月4日付け検察官調書は,その後に作成されたものであり,その取調べの際,前記引き当たり捜査の結果に沿う形で,それまでの供述を変えたものと推察される。さらに,前記検察官調書では,自動販売機の明かりがあったことまでは述べているものの,店の存在についてまでは言及していなかったにもかかわらず,Aは,公判廷において,自動販売機のことに加えて,「ちっちゃいお店みたいな」場所と,引き当たり捜査後に明らかとなった事実に合わせるかのような供述をするに至った。当初述べていた「周りが木で囲まれ」た,あるいは,「森みたいな感じがする場所」という供述内容と,「ちっちゃいお店みたいな」ものがあったとする供述内容とは,明らかに矛盾するといわざるを得ない。
 3 以上の検討だけをみても,Aの供述は変遷している。そして,変遷の理由については,合理的な説明がされているとは到底いえないばかりか,その後の捜査,検討後に明らかとなった事情に沿う形で変化している。しかも,先に検討した3点のうち,特に,被告人の陰茎の特徴についてと,母親から電話がかかってきた時刻については,いずれも口淫被害と密接に関連する部分であって,この点についての供述に信用がおけないことの意味は極めて重要というべきである。
   もとより,Aと被告人とは事件当日初めて会った,タクシー運転手とその乗客という関係に過ぎず,Aが殊更に虚偽の事実を述べなければならない動機や利益といった特段の事情が明確になっているわけではない。また,当時,Aが16歳であったという年齢も無視できない。さらに,被告人がバイアグラを飲むと言って薬を飲んだという供述内容は,被告人自身,公判廷で,Aの目の前でバファリンを飲んだ旨認めていることにかんがみれば,体験したことを素直に語ったものとみることもできないわけではない。
   しかしながら,そうした点も十分に考慮してもなお,Aの供述のうち既に指摘した3点については信用性があるとはいえない。そして,口淫をさせられた旨の供述が,胸や陰部を触るといった他の性的な被害と関連して述べられていること,さらに,Aの捜査段階及び公判廷でのその余の供述内容にも,他の証拠と異なる部分が少なからず認められることなどにかんがみると,結局,口淫させられた旨述べる部分はもとよりのこと,口淫以外の被害状況について述べる部分についても,その信用性には疑いをいれざるを得ない。
第4 被告人の自白の検討
 1 被告人の捜査段階における自白内容
   犯行態様に関する捜査段階における被告人の供述内容(乙6)は以下のとおりである。
   5月29日午前1時40分ころ,春日井市内で女の子をタクシーに乗せた。タクシーの中で年齢を聞いたところ,16と答えた。女の子に「小遣い欲しいか。おじさんとやるか。」などと言って,金を払うのでいやらしいことをさせてもらえないかと頼んだ。女の子は最初は嫌がっていたが,信号待ちのときに財布の中から1万円札を取り出し,いやらしいことをしてもらう見返りのつもりで差し出したところ,女の子は受け取った。それを見て,女の子が1万円の見返りとしていやらしいことをするつもりがあるのだと分かった。そこで,fの交差点を過ぎた辺りの自動販売機の付近でタクシーを停車させ,女の子に助手席に移ってもらった。
   そして,女の子の胸元から手を入れ,おっぱいをもんだ。タクシーを発車させ,右手でハンドルを持って運転しながら,左手で女の子の乳房を服の上からもんだり,スカートの中に手を入れてパンティーの上から陰部をさすったりした。さらに,パンティーを脱いでもらい,左手の指で陰部を直接触ったり,膣の中に左手の中指を出し入れした。信号待ちのときにズボンのチャックをおろし,陰茎をズボンの外に出し,陰茎をなめるよう言った。女の子は初めは嫌がっていたが,なめてと繰り返し言うと,助手席から上半身を倒しこんで,陰茎を口に含んでしゃぶってくれた。陰茎をしゃぶってもらいながら運転を続け,a交差点を左折した。a交差点を通過した時刻は,その後,女の子がタクシーから降りた時刻である午前2時過ぎころから逆算して考えると,大体,午前1時55分ころで間違いない。
   タクシーが目的地付近に到着したことから,女の子はもう帰りたいと言い出した。私は陰茎が勃起しておらず,射精もしていなかったことから,物足りず,女の子に要求して1万円を返してもらった。それとは別にタクシーの正規料金4000円余りを支払ってもらった。
 2 被告人の捜査段階における自白の任意性について
   弁護人は,捜査段階における被告人の自白は,警察官の利益誘導や強要等によるものであり,被告人の検察官調書(乙6)はそのようにして作成された警察官調書の瑕疵を引き継いでいるのであるから,任意性がないと主張する。
   被告人は公判廷において,警察官による取調べの際,机をたたかれて怒鳴られたこと,飲酒運転で捕まったと思って10日間で略式命令で罰金を納めて出られるからなどと言われて自白を迫られたこと,警察官の言う内容の上申書を強引に書かされたこと,自分が言ったことを警察官は調書に書いてくれないことなどから,8月15日の午後には取調べ警察官に対して「好きなように書きなさい。」と言い,それ以後は警察官が書いた調書に内容を十分に確認せずに署名指印した旨述べる。
   しかし,被告人がAに1万円札を渡した時期については,Aの供述内容と異なる内容となっており,そのような供述を取調べ警察官が被告人に強いたとは考え難い。また,8月15日と同月19日の2回,被告人は,C弁護士と接見しているが,取調べ警察官から受けた強要等について,同弁護士に伝えた形跡はうかがえない。
   そうすると,警察官による取調べ状況に関する被告人の公判供述をそのまま信用することはできない。
   そして,検察官による取調べ自体には,任意性に疑いを抱かせるような事情はない上,乙6号証が作成された同月20日に,被告人の取調べを担当した検察官が,警察での調書には2か所おかしなところがあるがそれでもいいかなどと被告人に念を押したことは,被告人自身も認めているところ,このように検察官からそれまでの供述内容について再確認されたにもかかわらず,犯行を認める旨の従前の供述を維持していることにかんがみれば,警察官による取調べが乙6号証に録取された供述に影響を与えたとは認められない。
   そうすると,その他弁護人がるる主張する点を考慮しても,乙6号証の検察官調書の任意性は認められる。
 3 被告人の捜査段階における自白の信用性について
  (1)被告人は,検察官に対して,口淫をしてもらっていたのは,大体,午前1時55分ころのことに間違いありませんと述べている。しかしながら,関係証拠上,a交差点から降車場所までの距離が約1.7キロメートルと認められ,かつ,タクシーの停車時刻が午前2時5分ころであるから,被告人の前記供述を前提にすると,約1.7キロメートル走行するのに10分近くを要したことになり,a交差点から先,目的地に着くまでの間に特にタクシーを停車させたり減速させたなどの事実が認められないことからしても,明らかに不合理な内容となっている。
    また,被告人の8月18日付け警察官調書によれば,被告人は,午前1時55分ころという時刻は,Aの胸をもんでいたころであると供述していることが認められる。
    このように,午前1時55分ころに関する供述は不自然に変遷しているだけでなく,むしろ,Aの8月5日までに録取された供述を踏まえて,これに整合するような内容となるように作成されたものと推察される。
  (2)総じて,被告人が検察官に対して述べた内容は,その概要において,Aの捜査段階の供述内容と符合している。しかしながら,先に検討したように,Aの供述が信用するに足りないものである以上,これに符合するかのような被告人の供述もやはり信用できないといわざるを得ない。
  (3)加えて,被告人は逮捕当初,犯行を否認していた。自白に至るまでの被告人の弁解の概要は以下のとおりである。
    (8月13日付け警察官調書,弁解録取書
     「児童買春をした覚えはありません。車の中でエッチな話はしました。」
    (同日付け警察官調書)
     「その後冷静になってよく考えたところ,女の子に現金1万円を渡した後,服の中に手をつっ込んで胸をもんだり,おまんこつまり女性器をパンツの上から触ったことは間違いのないことなのです。ウソを言って申し訳ありませんでした。」「年齢は聞いた覚えがありませんが,高校生と聞いた覚えがあります。」
    (8月14日付け検察官調書,弁解録取書
     「女の子の乳房を触ったことや,女の子に1万円を払ったことは,間違いありません。」「女の子の年齢が,18歳になっていないということは知りませんでしたし,相手の女の子の膣内に指を挿入したこともなく,口淫させたこともありません。」
    (同日付け裁判官面前調書,勾留質問調書)
     「検察官に述べたとおりです。」
    その後の8月15日になり,被告人は,事実関係を概括的に認める旨の上申書を作成し,それ以降,自白調書が作成された。
    しかしながら,否認から自白に供述を変えた理由については,「昨日の夜留置場で落ちついてよく考えたら思い出せたのです。(8月15日付け上申書)」,「勾留されてから落ち着いてよく考えてみると,読んで聞かせてもらった逮捕事実について私がやった事実に間違いのないことだとよく思い出すことができました。(8月15日付け警察官調書)」,「留置場の中で冷静になり,事件を思い返してみて,このまま嘘をつき続けることは,自分の人生においてもいけないことだと思い直し,反省して,本当のことを言う気持ちになりました。(8月20日付け検察官調書)」と述べるものの,その内容はいささか平板あるいは紋切り型であって,否認を自白に改める説明としては説得力に欠ける内容といわざるを得ない。
  (4)結局,これら事情を総合考慮すると,被告人の捜査段階における自白調書(乙6)のうち,被告人がAの胸をもんだこと,陰部を触ったり中に指を入れたこと,口淫をさせたことに関する部分は信用できないと判断せざるを得ない。
第4 総括
   もとより本件では,乗客を乗せ目的地に向かう途中のタクシーが合理的な事情もなく一旦停車したこと,その際,乗客であるAが後部座席から助手席へ移動していること,乗客はA一人であり,Aが後部座席に座ることに何ら支障はなかったこと,被告人がAに1万円札を渡していること,Aは降車時に自分の携帯電話番号を被告人に教えていること,帰宅したAは家人にタクシーの運転手から性的な被害を受けた旨申告していることなど,被告人の本件犯行をうかがわせる事情は少なからず認められるものの,検察官が主張するような性交類似行為等の存在を認定することについては,合理的疑いを差し挟む余地があるといわざるを得ない。
第5 結論
   以上述べたように,被告人がAと性交類似行為等をしたと認めることについては合理的疑いを差し挟む余地があり,その結果,その余の争点について判断するまでもなく,本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるから,刑事訴訟法336条により,被告人に対し無罪の言渡しをする。
(求刑−罰金50万円)
  平成21年12月4日
    名古屋地方裁判所刑事第3部
        裁判長裁判官  堀内 満



 略式手続の承諾書には、自白の意味合いはありませんから、略式命令に応じておいて、記録を閲覧謄写して、正式裁判請求という手もあります。

  略式手続の告知手続書
                          地方検察庁検察官検事 某
本職は,下記の者に対し,略式手続について分かりやすく説明し,かつ,通常の手続に従って審判を受けることができる旨を告げ,略式手続によることについて異議がないかどうかを確かめたところ,被疑者は異議がない旨を申し立てて申述書でその旨を明らかにした。
   記
被疑者氏名 乙
罪名
   申述書
私は,検察官から略式手続について説明を受け,かつ,通常の手続に従って審判を受けることができる旨を告げられましたが,略式手続によることに異議がありません。
私は,仮納付の裁判に異議がありません。




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