こんばんは。okapです。
自分はどこにも行けない、何もできないという閉塞感を抱えている人へ。
辻村深月『凍りのくじら』を紹介します。
主人公は高校生の芦沢理帆子。
本当は、読書が好きだし、なによりドラえもんと藤子・F・不二雄(作中では、理帆子は敬意を込めて藤子先生と呼ぶ)を愛しているが、普段はそれをおくびにも出さない。
進学校とされる高校に通う生徒には珍しく、夜遊びを繰り返す。しかし、高校では派手な顔立ちのため、遊びの場では頭の良さのため、自分は異物であると思っている。
どこにも居場所がないくせに、どこにでも行けるような顔をして、あちこちを渡り歩く。でも、そこには諦めしかない。
この本を初めて読んだ私も高校生でした。
そして、ここまで強烈に「これは自分だ」と思った本はありませんでした。
小説を愛するあまり、虚構に対する思い入れが強い理帆子。
小説のなかで人が死ぬより、現実にする怪我の方が痛いに決まってる。でもそう思えない。
周りの人に溶け込めない自分。周りを馬鹿にする自分。
そういった、自分の汚い部分を重ねていました。
そして、物語の終盤にもたらされる救い。
汚い部分も全てひっくるめて、まるごとあなたが愛おしいんだという力強く、あたたかいメッセージが提示されます。
あなたの描く光はどうしてそんなに強く美しいんでしょう。
ーそれに対する私の答えは決まっている。
暗い海の底や、遥か空の彼方の宇宙を照らす必要があるからだと。
物語のなかで出てくるこの言葉は、辻村深月の創作の姿勢そのものに思えてなりません。
自分への諦めや、閉塞感を感じている人に、手にとっていただきたい一冊です。
辻村深月の作品群はそれぞれリンクしており、理帆子も度々他の作品に登場します。
そんな心憎い仕掛けもたくさん凝らされているので、是非読んでみてください。
- 作者: 辻村深月
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/11/14
- メディア: 文庫
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