
打撃妨害が発生しても、打者がそのまま打ってフェアの打球になることがあります。このとき、結果によっては攻撃側の監督に「打撃妨害のペナルティを適用する」か「打球の結果をそのまま生かす」かを選ぶ権利が発生します。打撃妨害時の「監督の選択権」について、公認野球規則に基づいて解説します。
▼基本的な打撃妨害のルール(審判の処置・走者への影響など)はこちらをご参照ください。 num-11235.hateblo.jp
打撃妨害があっても審判はすぐ止めない
打撃妨害が発生したとき、球審はすぐにタイムをかけません。捕手を指さして妨害を宣告しながら、プレイをそのまま見守ります。
これは、打者が打ってフェアの打球になった場合に、攻撃側が有利な結果を選べるようにするためです。
打撃妨害後のプレイはこう判断する
打撃妨害があっても打者が打った場合、審判員は次の流れで判断します。
打撃妨害が起きた ↓ 打者含む全走者が1個以上進塁した? → YES:審判員がプレイをそのまま継続 → NO :審判員が打撃妨害ペナルティを適用 ↓ 監督が成り行きを生かすことを申し出た? → YES:監督の選択権が発生 → NO(何も言わない):ペナルティそのまま適用
以下、9回表1アウト一・三塁で、打者が打撃妨害を受けながらも投球を打った場面を考えます。
選択権が発生しないケース
場面①:ピッチャーフライで打者アウトになった
打者が打ってピッチャーフライ、打者はアウト。走者は動けずそのままです。
打者含む全走者が進塁していないため、監督の選択権は発生しません。審判員はタイムを宣告してプレイを止め、打撃妨害のペナルティを適用します。打者のアウトを取り消して一塁を与え、一塁走者が押し出しで二塁に進んで、1アウト満塁で再開します。
場面②:走者一掃のツーベースになった
打者が打ってレフト線を破る長打、2人の走者が生還して打者も二塁に進みました。
打者含む全員が1個以上の塁を進んでいるため、こちらも監督の選択権は発生しません。審判員は打撃妨害のペナルティを適用せず、成り行きどおりプレイを継続させます。2点が入って1アウト走者二塁で再開です。
公認野球規則5.05(b)(3)ただし書き
ただし、妨害にもかかわらず、打者が安打、失策、四球、死球、その他で一塁に達し、しかも他の全走者が少なくとも1個の塁を進んだときは、妨害とは関係なく、プレイは続けられる。
監督の選択権が発生するケース
場面③:犠牲フライで1点入ったが打者はアウト
打者は外野フライを打ち、打者はアウト。三塁走者がタッチアップして得点し、2アウト二塁の状態になっています。
得点が入りましたが打者がアウトになっているため、「全員が1個以上進塁」の条件を満たしていません。審判員はタイムをかけて打撃妨害を宣告します。
そして、打者を一塁、一塁走者を二塁、三塁走者を三塁に戻して1アウト満塁の状態にします。
ここで攻撃側に「監督の選択権」が発生します。
- A:打撃妨害のペナルティを適用→1アウト満塁で再開
- B:プレイの結果を生かす→犠牲フライで1点、2アウト二塁で再開
何も言わなければAが適用されます。Bを選ぶ場合は、監督はプレイが終わったらただちに球審に通告しなければなりません。
公認野球規則5.05(b)(3) 妨害にもかかわらず~
妨害にもかかわらずプレイが続けられたときには、攻撃側チームの監督は、そのプレイが終わってからただちに、妨害行為に対するペナルティの代わりに、そのプレイを生かす旨を通告することができる。
9回表で1点が非常に重要な局面。監督はBを選び、球審に「プレイを生かす」と通告。犠牲フライで1点、2アウト二塁で試合が再開しました。
ところが試合再開後、三塁走者の離塁が早かったとして守備側はアピールプレイを行い、三塁塁審がアウトを宣告。3アウトチェンジになってしまいました。
監督はあわてて球審に「やっぱり打撃妨害を適用して、1アウト満塁に戻してくれ!」と申し出ましたが……
公認野球規則5.05(b)(3)【注1】 監督がプレイを生かす旨を球審に通告するにあたっては、プレイが終わったら、ただちに行なわれなければならない。なお、いったん通告したら、これを取り消すことはできない。
一度Bを選んで通告した以上、取り消しはできません。3アウトチェンジです。
例外規定
例外①:打撃妨害の前にボークがあった場合
打撃妨害より先にボークが発生していた場合は、ボークのペナルティが優先されます。打撃妨害があったとしても、ボークによる走者の進塁が先に適用されます。
例外②:スクイズプレイで打撃妨害が発生した場合
スクイズプレイ中に捕手が打撃妨害をした場合は、特別なルールが適用されます。
公認野球規則6.01(g) スクイズプレイまたは本塁の妨害
三塁走者が、スクイズプレイまたは盗塁によって得点しようと試みた場合、捕手またはその他の野手がボールを持たないで、本塁の上またはその前方に出るか、あるいは打者または打者のバットに触れたときには、投手にボークを課して、打者はインターフェアによって一塁が与えられる。この際はボールデッドとなる。
この場合、ボークと打撃妨害が同時に宣告されます。三塁走者に本塁が与えられ、打者にも一塁が与えられます。
まとめ
- 打撃妨害が発生しても審判はすぐ止めず、プレイを見守る
- 打者含む全走者が1個以上進塁した場合→審判員がプレイをそのまま継続(選択権なし)
- それ以外の場合→審判員が打撃妨害ペナルティを適用。ただし監督が申し出れば選択権が発生
- 一度通告したら取り消しはできない
- スクイズ中の打撃妨害はボークと同時宣告という特別ルールが適用される