サッカーの反則の中でも、試合の行方を大きく左右するのが
DOGSO(決定的な得点機会の阻止) と
SPA(大きなチャンスとなる攻撃の妨害) の判定です。
両者は似ているようで、適用されるカードの色も、反則後の扱いも大きく異なります。特にDOGSOは、4つの要件をすべて満たした場合にのみ一発退場となるため、審判にとっても判断が難しい場面が少なくありません。
本記事では、競技規則に基づいて
- DOGSOの4要件
- SPAとの違い
- ペナルティーエリア内で懲戒が一段下がる例外
- アドバンテージ適用時の扱い
を、実際の試合映像を交えながら分かりやすく整理します。
※2026年3月、サッカー競技規則2026/27改正に対応させました。
- DOGSOとは何か――なぜ一発退場になるのかを4要件から整理する
- SPAとは何か
- DOGSOが一発退場とされる理由――“戦術的な阻止”という考え方
- ペナルティーエリア内だと「一段階下がる」とは
- まとめ
DOGSOとは何か――なぜ一発退場になるのかを4要件から整理する

DOGSOとは、Denying an Obvious Goal-Scoring Opportunity の略で、日本語では「決定的な得点機会の阻止」を意味します。
試合中、守備側競技者が反則を犯したとき、次の 4要件をすべて満たすとDOGSOとなり、一発退場 になります。
- 反則とゴールとの距離
- 全体的なプレーの方向
- ボールをキープできる、またはコントロールできる可能性
- 守備側競技者の位置と数
主審は、反則が起こった瞬間の状況を「写真を撮ったように」切り取って、この4要件を満たしているかを判断します。
4要件のチェック方法
4つの要件は、
「この反則がなければ、攻撃側はほぼ確実に得点できたか?」
を判断するための基準です。
1. 反則とゴールとの距離
反則が起こった地点からゴールまでが「決定的な得点機会」と言えるほど近ければ該当します。ただし、競技規則に何mと示されているわけではありません。そのため、主審は「得点の可能性がどれほど高かったか」を総合的に判断します。
2. 全体的なプレーの方向
攻撃側の競技者がゴールに向かっていたかどうか。ゴール方向にプレーが向いていれば該当します。
3. ボールをキープできる、またはコントロールできる可能性
仮にこの反則がなかった場合に、反則を受けた攻撃側競技者がボールをキープできるか、またはコントロールできるかどうか。反則を受けた瞬間はキープまたはコントロールできていなくても、反則がなければ次の瞬間にはできるだろう(キープまたはコントロールできる"可能性"がある)とみれば該当します。
4. 守備側競技者の位置と数
他の守備側競技者がカバーに入ることができる位置関係にいるかどうか。カバーできるディフェンダーがおらず、ゴールキーパーと1対1になってしまう、もうあとはシュートを撃つだけ、のような状況であれば該当します。
以上の4要件が揃っている場合、DOGSOと判定されます。
こちらのシーンで、4要件を確認してみましょう。2019 J1リーグ第30節 清水vs磐田 5分のシーンです。
磐田39番(ルキアン選手)がファウルを受けた瞬間、
1. その位置から清水(オレンジ)のゴールまでの距離が十分近い
2. プレーの方向は明らかにゴール方向
3. 清水3番(ファン・ソッコ選手)のファウルがなければ、確実にボールをコントロールできる状況
4. 守備側競技者はもうゴールキーパーしかいない
4要件が揃っているので、開始5分であっても自動的に退場となるのです。
SPAとは何か
SPA(スパ)とは、Stopping a Promising Attackの略で、「大きなチャンスとなる攻撃の妨害」のこと。DOGSOほど“決定的”ではないものの、有望な攻撃(Promising Attack)を反則で止めた場合に適用される反則です。
大きなチャンスだったかどうかは、DOGSOの4要件を参考に、主審が判断します(判断基準には主審の裁量があります)。
SPAであると主審が判断した場合、反則を犯した守備側競技者には、イエローカードが提示されます。
2019 J2リーグ第29節 徳島vs琉球 51分のシーンで確認してみましょう。
徳島9番(河田選手)がファウルを受けた瞬間、
1. その位置から琉球(白)のゴールまでの距離が十分近い
2. プレーの方向は明らかにゴール方向
3. 抜け出していれば守備側競技者はゴールキーパーだけ
4. しかし、ゴール前に上がっているボールが徳島9番の頭上にあり、コントロールできているとは言いがたい
といったところから、このシーンは4要件をすべて満たしているとはいえず、SPAと判断されてイエローカードが出されました。
なお、DOGSOは4要件が揃えばファウルの態様を問わず成立しますが、SPAは有望な攻撃を止めたかどうかを状況全体で判断するため、いわゆる「戦術的ファウル」かどうかも考慮されることがあります。
DOGSOが一発退場とされる理由――“戦術的な阻止”という考え方
怪我をさせるようなファウルじゃないのに、なぜDOGSOの4要件が揃うと、自動的に一発退場になるのか?それは、DOGSOが相手の得点につながる可能性をファウルでつぶすという、戦術的な悪質さ(タクティカルファウル)に対する懲戒だからです。
サッカーはなかなか得点が入らない競技です。そんな中、決定的な得点の機会をファウルで阻止し、フリーキックに逃れようとすることは極めて悪質です。そのため、DOGSOはファウルの強度に関係なく、一発退場となるのです。
ペナルティーエリア内だと「一段階下がる」とは
ペナルティーエリア内で、ボールにチャレンジした結果として起きたDOGSOやSPAは、懲戒が一段階下がるという例外があります。
具体的には、次のように懲戒が軽減されます。
- PA内でボールにチャレンジしたDOGSO → 警告
- PA内で意図的でないハンドによりDOGSO → 警告
- PA内でボールにチャレンジしたSPA → ノーカード
ということです。
三重罰案件って?
ペナルティーエリア内でDOGSOが起こると、
- PK
- レッドカードで一発退場
- 次節出場停止
という重い懲戒が科せられます。これを、通称、三重罰といいます。次の事例を見てみましょう。
▼このシーンでは、川崎F 5番(谷口選手)がペナルティーエリア内で、大分10番(野村選手)を手を使って倒すファウルをしました。 www.youtube.com PKが与えられ、状況がDOGSOのため、レッドカードで一発退場となり、次節は出場停止となります。
▼このシーン(36:43)では、YS横浜 48番(冨士田選手)が意図的なハンドで相手チームの得点を阻止しました。 www.youtube.com PKが与えられ、得点阻止によりレッドカードで一発退場となり、次節は出場停止となります。
ペナルティーエリア内でPKとなって懲戒が一段下がる場合
しかし、ペナルティーエリア内で次の状況でPKが与えられた場合は、懲戒を一段階下げて、退場ではなく、警告でイエローカードが提示されます。
- ボールをプレーしようと試みた、またはボールに向かうことで相手競技者にチャレンジした結果、反則が起きてDOGSOの状況になった場合
- 意図的ではないハンドの反則で相手チームの得点または決定的な得点の機会を阻止した場合(サッカー競技規則2024/25から適用)
▼このシーン(動画の45秒から)では、山口16番(瀬川選手)が、ペナルティーエリア内で柏13番を倒し、PKが与えられました。 www.youtube.com このときの状況はDOGSOでしたが、ボールにチャレンジしようとして倒したものなので、懲戒が一段下がり、イエローカードが提示されました。
▼このシーン(89:55)では、柏3番(ジエゴ選手)が、ハンドの反則で相手チームの得点を阻止しました。 www.youtube.com この試合は2023年12月のため、サッカー競技規則2023/24の規定でレッドカードでの一発退場となりましたが、サッカー競技規則2024/25の規定では、意図的ではないハンドの反則として懲戒が一段下がり、イエローカードが提示されることとなります。
同様に、SPAの状況の場合は、懲戒を一段階下げて、ノーカードになります。
▼このシーン(93:04)で、浦和28番(ショルツ選手)は、ペナルティーエリア内で町田10番を倒したため、PKが与えられました。 www.youtube.com このときの状況はSPA(ボールキープが▲)であり、ボールに向かうことで相手にチャレンジしたときの反則なので、懲戒が一段下がり、カードが提示されませんでした。
アドバンテージ適用で懲戒が一段下がる場合
また、懲戒の一段階下げが起こる別の状況として、主審がアドバンテージを採用した場合があります。
DOGSOやSPAが発生したものの、アドバンテージが適用されて攻撃側が利益を得た場合、DOGSO/SPAの懲戒は一段階下がります。このときの反則の発生地点は、ペナルティーエリアの内外を問いません。
▼このシーンでは、今治のゴールキーパー(修行選手)はペナルティーエリアの外で手を使ってシュートを阻止しました。 www.youtube.com ゴールが空っぽになっているので状況はDOGSOです。しかし、ファウルを受けた福島9番(イスマイラ選手)がこのボールを取ってゴールキーパーを振り切り、再度シュートにつなげ、ゴールとなりました。
主審はこのプレーでアドバンテージを採ってファウルを流しており、ゴールが決まった後、修行選手の懲戒をレッドカードから一段下げて、イエローカードの提示としました。
2026/27競技規則改正:アドバンテージ→ゴールならノーカードに
2026/27競技規則(第12条)の改正により、DOGSOにあたる反則に対してアドバンテージを適用し、そのままゴールが生まれた場合、反則を犯した競技者への懲戒は行われません。
ゴールが決まったということは、「反則によって得点の機会が阻止された」という事実がなくなるためです。
2025/26までの規則では、アドバンテージ適用でDOGSOの懲戒が一段下がってイエローカードになります。改正後は、ゴールが生まれた場合に限り、それがさらにノーカードになります。
まとめると、次のようになります。
| 状況 | ~2025/26 | 2026/27~ |
|---|---|---|
| DOGSO→アドバンテージ→ゴールにならなかった | イエローカード | イエローカード |
| DOGSO→アドバンテージ→ゴールになった | イエローカード | ノーカード |
この改正は、2026年7月1日以降に適用となりますが、2026 FIFAワールドカップにも先行適用されます。
なお、アドバンテージ後にゴールにならなかった場合は、引き続きイエローカードの対象となります。
▼この改正を含む2026/27競技規則改正の全体については、こちらの記事で解説しています。
まとめ
DOGSOについて初めて知ったという方は、まずはDOGSOの4要件を覚えられれば十分です。
- 反則とゴールとの距離
- 全体的なプレーの方向
- ボールをキープできる、またはコントロールできる可能性
- 守備側競技者の位置と数
4要件を全て満たしたらDOGSOで自動的にレッドカード、条件不足ならSPAでイエローカードです。
DOGSO/SPAの懲戒一段階下げは、ペナルティーエリア内でボールにチャレンジした場合、または主審がアドバンテージを採った場合に起こります。
DOGSOが何かが分かってくると、プレーを見た瞬間に「DOGSO!」と叫べるようになりますよ 笑
楽しいサッカー観戦のお役に立てば幸いです。