野球で走者がタッグを避けて3フィート以上横に逃げると、「スリーフィートオーバー(ラインアウト)」としてアウトになることがあります。最近でも、WBC1次ラウンド日本vs韓国戦での大谷翔平の走塁が話題になりました。
では、走者の「走路」とはどこを指すのでしょうか。また、どの程度までなら走路を外れて走ってもよいのでしょうか。
実際の試合でも、走者が塁を回るときには外側に膨らんで走ることがよくありますが、あんなに膨らんで走ってもなぜアウトにならないのでしょうか。分かっているようで意外とあやふやな「走路を外れたとき」のルールについて、図を使って確認してみましょう。
※2026年3月8日、大幅加筆しました
スリーフィートオーバーとは?走者が走路を外れてアウトになるルール
そもそも、走者の「走路(ベースパス)」とは
公認野球規則で「走路」はどのように定義されているのでしょう。
『公認野球規則』の本を開いたことがある方ならすぐに「定義」の項目を調べると思うのですが、実は定義の項目に「走路」の記載はなく、規則5.09(b)(1)の中で示されています。
走路について説明しているのが、次の条文です。
公認野球規則5.09(b)(1)
【注1】 通常走者の走路とみなされる場所は、塁間を結ぶ直線を中心として左右へ描く3フィート、すなわち6フィートの幅の地帯を指すが、走者が大きく膨らんで走っているときなど最初からこの走路外にいたときに触球プレイが生じた場合は、その走者と塁を結ぶ直線を中心として左右へ各3フィートが、その走者の走路となる。
ここに「3フィート」という用語が出てきます。3フィートは91.44cmで、だいたい1m弱と覚えておけば十分でしょう。
通常の走者の走路はこんな感じ
「塁間を結ぶ直線を中心として左右へ描く3フィート、すなわち6フィートの幅の地帯」を図示すると下の図のようになります。

多くの球場では、芝と土の境界線が通常の走路の端となっていることが多いですが、必ずそうなっているとも限りません。
走者が走路を外れて走っていたらどうなる?
例えば長打を打ったときなどは、しばしば走者が走路を外れて走ることがあります。実際、トップスピードで走っている走者が塁のところで直角に曲がって次の塁に向かって走るようなことはあり得ませんね。どうしても身体が外側に振れるので、安全に走り抜けるためにも、外に膨らんで走ることになるのは想像がつくと思います。このことは、規則で特に禁止されていません。
しかし、通常の走路を外れて走っているときに送球が来て、野手が触球しようとしてきたら、状況は変わります。この場合は、「その走者と塁を結ぶ直線を中心として左右へ各3フィートが、その走者の走路」となります。

「タッグを避けて」走路を外れたら、アウト
繰り返しになりますが、走路を外れて走ること自体は禁止されていません。
しかし、走者をアウトにするため野手が走者にタッグ(触球、ボールを保持した手やグラブで走者に触れること)しようとしたとき、走者は、走路の幅を超えて避けてはいけないというのがルールです。
走路は左右両方に3フィートずつで合計6フィート(約1.8m)あります。そして、走者が走路から外れるように左または右に3フィートを超えて逃げることを「スリーフィートオーバー」といい、この場合、その走者はタッグされなくても、アウトになります。
このとき、野手がタッグしようとしていなければ、ラインアウト(スリーフィートオーバー)は宣告されません。タッグするためには、ボールを保持した手やグラブで走者に触れなければならないので、走者に向かって腕を伸ばそうとする動作はもちろん、その手またはグラブにボールが保持されていなければなりません。例えば、右手にボールを持って、左手にはめた空っぽのグラブで走者に触れようとしても、それはタッグとは言いません。(状況によっては、逆に走塁妨害が宣告されることもあります)
つまり、野手が走者に触れようとしていない状況では、走者が走路を外れていてもアウトにはなりません。
審判員は、「アウト・オブ・ザ・ベース・ライン」と宣告し、下のように逃げた方向に両手を振るジェスチャーをすることになっているようなのですが…

審判員によって、この宣告やジェスチャーがまちまちなんですよね。「ラインアウト」や「スリーフィートオーバー」と言って走者にアウトを宣告する審判員が多い印象があります。
英語では、現在は「アウト・オブ・ベースパス(Out of the base path)」という表現が一般的です。
実例で確認!
スリーフィートオーバーと判定された例
2018年4月6日 阪神vs中日戦
阪神がホームユニフォームを着ていて、球場は京セラドームです。
この球場、土と芝の境目に注目してもらうと、フェアグラウンド側に比べてファウルグラウンド側のほうが、土の部分が広くなっているのがお判りでしょうか。単純に境目で3フィートだとは判定できないことが、こういうところからもご理解いただけるかと思います。
さて、走者はアウトになるまいと、がんばってタッグをかわしましたが…


このタイミングで、球審がマスクを持っている左手で走者を指しています。この時点でスリーフィートオーバーになったと判断したのでしょう。走者の足に注目すると、土と芝の境目からさらに芝側まで出ているように見えますね。3フィートを超えて逃げたと判断するには十分です。
2026年3月7日 WBC1次ラウンド 日本vs韓国戦(大谷の走塁)
#WBC 日本vs韓国
— EggCooker (@CryptoEggmen) 2026年3月7日
野球の詳しいルール判らないんだけど
これは大谷選手はアウトなの?
走塁していいエリアと
そうでないエリアがあるの?
極端な話
フィールド内を逃げた回ってはいけない?
単純には考えると
タッチされてないから
セーフなんじゃないって思っちゃうpic.twitter.com/EXa46OkRKo
大谷選手がアクロバットな動きで野手のタッグをかわしています。確かにタッグされていません。
タッチされてないからセーフなんじゃない?という疑問はもっともです。
しかし、画面が切り替わる瞬間の二塁塁審のこのジェスチャーを見てください!

先ほど見たジェスチャーですね。
この場面では、野手が大谷選手にタッグしようと腕を伸ばした瞬間に、大谷選手が左方向に3フィートを超えて逃げたと審判員が判断しました。

このように、野手のタッグを避けて走路の幅を超えて逃げた場合に、スリーフィートオーバー(アウト・オブ・ベースパス)が宣告され、タッグが成功していなくても走者はアウトになります。
このプレイはスリーフィートオーバーと判定されませんでした
2024年3月18日、センバツ高校野球 近江対熊本国府戦で8回表、一死一・三塁から、熊本国府がスクイズを仕掛けましたが、近江がこれを外し、三塁走者が三本間に挟まれました。
捕手から三塁手にボールが渡った後の様子を4コマピックアップして見てみましょう。

このとおり、走者は、走路を外れて大回りして三塁に戻ろうとしています。しかし、三塁手は走者を目で追ってはいますが、アウトにするためにタッグをしようとする様子が見られませんでした。
そのため、三塁塁審は、三塁セーフと判定しました。
スリーフィートオーバーはアピールプレイではない
このプレイが起こったあと、X(旧Twitter)上には「アピールしないからセーフになった」「スリーフィートオーバーはアピールプレイ」といった投稿が目立ちました。
なぜスリーフィートをアピールしないのか
— チャロ🐴🐲 (@CHAROdra) 2024年3月18日
常連校との違いはこういうとこだよな
スリーフィートにはアピールプレーの要素があり、タッチする動きが重要です。ただし、守備側がタッチしにいく姿勢を見せないと適用されないので、注意が必要です。少年野球では「タッチ!あ〜ん届かな〜い!🥺」と言うように指導されるようです。それによって、スリーフィートの正しいルールが伝えら
— @yosiokamamoru (@yosiokamamoru) 2024年3月18日
ちょっと誤解があるようです。スリーフィートオーバーはアピールプレイではありません。
もしかすると、過去に、審判員に向かって「スリーフィートオーバーです!」と主張し、そのあと審判員がアウトを宣告したという経験がある人が、このように投稿しているのかもしれません。
しかし、審判員に「スリーフィートオーバー!」と叫んでも、審判員はそれでアウトを宣告することはありません。野手に求められているのは、走者をアウトにするためにタッグをしに行こうとすることです。野手がタッグしようとしていなければ、ラインアウト(スリーフィートオーバー)は宣告されることはありません。
あるいは、走者をアウトにするためにタッグをしに行こうとすることを「アピール」と表現しているのかもしれませんが、それは野球規則でいう「アピールプレイ」には当たらないので、「アピールプレイ」という言葉を使って説明すると混乱が起こります。スリーフィートオーバーに関して「アピール」という言葉を使うのは避けることを強くお勧めします。
▼「アピールプレイとは何か」かはこちらから num-11235.hateblo.jp
まとめ
- 通常は、「塁間を結ぶ直線を中心として左右へ各3フィート、すなわち幅6フィートの地帯」が走路
- 走路を外れて走塁すること自体は、ルールで禁止されていない
- 野手のタッグを避けて走路の幅(左右3フィート)を超えて逃げると、その走者はアウト
- 走者が通常の走路から外れている状態でタッグプレイが始まった場合は、「その走者と塁を結ぶ直線を中心として左右へ各3フィート」がその走者の走路として考えられる
- 「走路から3フィート外れたら常にアウト」というわけではなく、野手のタッグを避けて走路の幅を超えて逃げたときだけスリーフィートオーバーが適用される
以上を頭に入れておけば、野球観戦する上では困らないと思います。ルールを知って、より楽しく野球観戦していただけたら幸いです。