
痛烈なピッチャーゴロ。
投手はとっさにグラブを出し、打球はグラブのウェブ部分に深く挟まりました。
しかし、ボールがグラブから抜けず、投手は仕方なくグラブごと一塁へ投げました。
さて、判定は……?
今回は、意外と盲点かもしれない、こんなイレギュラーな状況でのルールについて解説します。
このプレー、何を見て判定すると思いますか?
打球がグラブに挟まって取れなくなるというのは非常にレアケースで、まさに珍プレーです。
ついついこういうところに目が行きがちですよね。
- 打球がグラブに挟まったこと
- ボールが挟まったままのグラブを投手が投げたこと
あるいはこういう風に考える人もいるかもしれませんね。
- グラブにボールが挟まった時点でボールデッド?
- グラブを投げることは反則にならない?
でも実は……
審判員が一塁で見ているポイントは
「グラブを投げたかどうか」ではありません。
一塁で判定するときこれよりも注目してみているポイントがあります。
実例で、一塁塁審の動きや目線を確認してみてください。分かりますか?
では、実例を見てみましょう!
2015年4月19日、シカゴ・カブスのジョン・レスター投手は、ピッチャー返しの打球をグラブで捕った時に、グラブにボールが挟まってしまいました。
レスターは落ち着いてグラブを外し、一塁手のアンソニー・リゾにグラブごと投げて打者走者を一塁でアウトにしました。
そう。判定はアウトだったのですが、アウトだったのには理由があって、グラブごとボールを投げたとき、送球が間に合えば"必ずアウトになる"とは限りません。
実は一塁塁審は、アウトの判定をするためにあることを確認していました。
※なお、ボールがグラブに挟まっただけではボールデッドにはなりません。
規則上、「挟まること」自体は反則にもボールデッド要件にも該当しません。
一塁塁審がみていること、実は…
このプレーで最も重要なのは、最終的に一塁手が「正規の捕球」をしたかどうかです。
そのために、まず「捕球」の定義を確認しておきましょう。
公認野球規則では、ボールを
- 手で確実につかむ
- または グラブで完全に保持する
ことが「正規の捕球」です。
公認野球規則では、定義15に「CATCH」(捕球)の定義が示されています。
定義15 CATCH「キャッチ」(捕球)
野手が、インフライトの打球、投球または送球を、手またはグラブでしっかりと受け止め、かつそれを確実につかむ行為であって、帽子、プロテクター、あるいはユニフォームのポケットまたは他の部分で受け止めた場合は、捕球とはならない。(以下略)
ポイントは、一塁手がそのグラブをどう受け取ったかです。

例えば、ボールがグラブに挟まったままの状態を腕や胸で抱えるように受け止めただけでは、正規の捕球とは見なされません。必ず手でつかむ動作が必要になります。
レスターのプレーで重要なのは、グラブごと投げたことが反則かどうかではありません。
一塁手がベースを踏みながら、
ボールの挟まったグラブを「手で確実につかんだ」かどうか。
つまりこのプレーは、
「珍プレーには見えるが、判定の根拠は極めてオーソドックスな捕球要件」
というわけです。
一塁塁審は、ボールが挟まったグラブが投げられたことよりも、一塁手がそのグラブをどう扱ったかをしっかり確認していたのです。
補足:「グラブを投げること」は反則にならないの?
今回のようにボールが挟まったグラブを投げる行為は反則ではありません。
しかし、
ボールに向かってグラブを投げたり、帽子やマスクなどの用具を本来身に付けるべき位置から外してボールに触れさせたりすることは反則になります。
そのような行為をした場合、ボールの状況によって次のペナルティーが課され、さらにボールインプレイの状態が続きます(自動的にボールデッドにはなりません)。
| ボールの状態 | ペナルティー |
|---|---|
| 打球 | 3個の安全進塁権(テイクスリーベース) |
| 送球 | 2個の安全進塁権(テイクツーベース) |
| 投球 | 1個の安全進塁権(テイクワンベース) |
安全進塁権は、グラブを投げてボールに当てた瞬間の走者の位置を基準に与えられます。なお、グラブを投げてもボールに当たらなければ、ペナルティーは適用されません。