
肉体的援助。
なかなかのパワーワードなんですが、これ、れっきとした野球規則用語で、ベースコーチが走塁を肉体的に援助したことを指します。今回はこれについて解説していきます。
関連して、ホームランを打った打者がベースコーチとハイタッチしたらアウトなのかについて、私の見解を述べたいと思います。
ベースコーチの肉体的援助とは
ベースコーチの肉体的援助について定めたルールは、公認野球規則6.01(a)(8)にあります。
公認野球規則6.01(a) 打者または走者の妨害
次の場合は、打者または走者によるインターフェアとなる。
(8) 三塁または一塁のベースコーチが、走者に触れるか、または支えるかして、走者の三塁または一塁への帰塁、あるいはそれらの離塁を、肉体的に援助したと審判員が認めた場合。インターフェアに対するペナルティ 走者はアウトになりボールデッドとなる。
審判員が、打者、打者走者または走者に妨害によるアウトを宣告した場合には、他のすべての走者は、妨害発生の瞬間にすでに占有していたと審判員が判断する塁まで戻らなければならない。ただし、本規則で別に規定した場合を除く。
このとおり、
- 触れるか支えるか
して、
- 走者の帰塁や離塁
を肉体的に援助したと審判員が認めた場合、守備妨害が宣告されてボールデッドとなり、肉体的援助を受けた走者がアウトになります。
実例を見てみましょう
2017年5月19日 西武vsソフトバンク
二塁走者のデスパイネ選手が三塁を回ったところで三塁ベースコーチに接触。

ベースコーチが帰塁を援助したとして、デスパイネ選手にアウトが宣告されました。
2022年3月25日 選抜高校野球 木更津総合vs金光大阪
二塁走者が三塁を回り本塁に向かおうとしたところで転倒。三塁ベースコーチが帰塁の指示を出しましたがこのときに走者に触れました。

ベースコーチが帰塁を援助したとして、二塁走者がアウトになりました。
ベースコーチは走者に触れてはいけないのか?
そういうことでもありません。
ベースコーチが、デッドボールを受けた選手にコールドスプレーを吹きかけたり、痛がっている選手に肩を貸したりすることは普通に行われています。
それはボールデッド中だから?
四球後のボールインプレイ中でも、走塁の指示を出すために走者にくっついて話すこともありますよね。あれも別に、いけないわけではありません。
先ほども確認したように、問題になるのは
- 触れるか支えるか
して、
- 走者の帰塁や離塁
を肉体的に援助したと審判員が認めた場合です。ベースコーチが走者に触れることの全てがアウトになるわけではありません。
ホームランのときのハイタッチはダメなの?
プロ野球ではよく、ホームランを打った打者がベースコーチとハイタッチをする姿を見かけます。

しかし、日本のアマチュア野球では相手チームへの侮辱行為にあたるとしてこれを禁止し、実際にやったらアウトを宣告している団体があり、このとき、アウトを宣告するときの根拠として「肉体的援助」を持ち出すようです。
ランニングホームランならまだしも、柵越えホームランを打っているのですから、ボールデッドかつ打者走者に本塁までの安全進塁権が与えられている状況です。それにも関わらず、ベースコーチが打者走者にハイタッチをすることの何が肉体的援助に当たるのか、私にはよく分かりません。
また、そもそもハイタッチを禁止している理由は相手チームへの侮辱行為だからだとしているのに、アウトにする根拠と整合性が取れていないことも気になります。
参考事例として……
こちらはボールインプレイ中に一塁ベースコーチが打者走者とハイタッチしています。一塁上でハイタッチをする瞬間、映りこんでいる審判員が両手を挙げていないことを確認してください。ボールインプレイ中ですよ。
当然ながら審判員はこのハイタッチを見ています(球審や三塁塁審が視野に入っているはずです)が、アウトを宣告するようなことはありません。なぜなら、走者の帰塁や離塁を援助したものではないからです。その根拠は公認野球規則であり、「プロ野球だから~」とか、「アマチュア野球では~」「教育の一環なので~」なんてことは関係ありません。
これがOKなんですから、サヨナラホームランで思わずベンチの選手が走者に抱き着いたからといって、(もちろんやっていいことではないですが)肉体的援助だ、得点取り消しだ、などと騒ぐこと自体がおかしいと思いませんか?ホームランでの走塁はボールデッドです。
とはいえ、所属団体で「ハイタッチはアウト」ルールが適用されているならば、選手・監督の皆さんはそれに従ってください。せっかくのホームランがアウトになったのではアホらしいですものね。あるいは、監督会議や団体の理事会など、大会が始まる前に問題提起してみてください。
ぜひ、すすんで謎ルールを広めるようなことだけはお控えください。「ハイタッチはアウト」に公認野球規則上の根拠はありません。