今週のお題「自由研究」
2年前、東京オリンピック・パラリンピックを見ているときに、結構真剣に取り組んだ自由研究がありました。過去の焼き直しになっちゃいますが、このお題のチャンスを生かし、はてなブログへの引っ越しも機に、再構成して紹介し直そうと思います。

サッカーの審判員はレフェリー。野球の審判員はアンパイア。
以前から「何が違うんだろう」と気になっていた。
審判員としてのスタンスの違いかとも思ったのだが、スポーツを観戦していると、「Referee」として審判員が紹介されるスポーツもあれば、「Umpire」であるスポーツもあって、これは調べると意外と奥が深いんじゃないか?と思ったのがきっかけ。これが分かると、スポーツの観戦がさらに面白くなるのではないかと考えた。
目標
レフェリー(Referee)とアンパイア(Umpire)の違いを、自分なりに日本語で説明できること。
しかし、地球上にある様々なスポーツをすべて調べ上げるのは困難なので、手近な目標として、サッカーの審判員がレフェリー、野球の審判員がアンパイアと呼称される理由のようなものが分かればとりあえずのゴールとする。その上で、サッカーと野球以外の競技では審判員がどのように呼称されていて、どのような権限があるのかについても、可能な限り調査してみたい。
調査方法
思いつくままに挙げてみると、ざっとこんな感じだろうか。
- まずはすでに類似の研究があるかどうかを、Google検索で。
- レフェリーとアンパイアの語源に当たるため、辞書・辞典で。
- 各競技において審判員をどのように定義しているか、各競技規則で。
- 実際にその種目でRefereeやUmpireの呼称が使われているかどうかを、オリンピックの映像内のテロップや会場内の表示などで。
調査1 類似の研究があるか
私が調査するまでもなく、すでにまとまった調査結果があるならそれを参照したほうが話は早いので、まずはググってみる。
レフェリー:選手と一緒に動いて審査を行う人
アンパイア :一定の場所で裁定を行う人
また、スポーツの傾向によっても使い分けがあるようです。
レフェリー:時間制のスポーツ(サッカー・ラグビー等)
アンパイア :ターン制のスポーツ(野球・テニス等)
「アンパイアが一定の場所で裁定を行う人」
というまとめには疑問を感じた。というのも、野球の審判員は、担当する塁に貼り付いて判定するわけではないからだ。外野に打球が飛べば一塁や三塁の塁審が外野に走り、空いた塁は内野に残った審判員がカバーリングする。
例えば、走者一塁でレフトに長打が打たれたとすると、三塁塁審が打球判定のためにレフト方向の外野に走り、空いた三塁は、球審がカバーに入る(とりあえず、直ちには本塁でプレーが起こらないから)。
しかし、これで二塁打を超えるような長打になりそうな場合は三塁と本塁の両方にプレーが起こる可能性があるため、球審は三塁にとどまり、一塁塁審が本塁のカバーに行く。
このような、走者の位置と人数や打球の方向によって、カバーリングに行くメカニクスがあるので、少なくとも野球の審判員はテニスの審判員のように、「一定の場所」にとどまって判定してはいない。
また、「ターン制のスポーツはアンパイア」というまとめについても、バレーボールはレフェリーと呼ばれていた気がする?
しかし、こちらの記事で紹介されている「語源」はヒントになりそうだ。
referee:審査を委託される人
umpire:仲裁人
なるほど。これを手掛かりに、辞典で確認してみることにしよう。
調査2 辞典で意味を確認
レフェリー【referee】
《「レフリー」とも》ボクシング・レスリング・サッカー・バレーボール・バスケットボールなどで、審判員または主審。
アンパイアにおいて、「特に野球の…」としているのが特徴的か。
類似語に「ジャッジ(judge)」があったことが気になる。「オフィシャル(official)」という呼び名の審判員もいるので、併せて余力があれば調べてみたい。
次に英和辞典『研究社 新英和中辞典』(研究社)で調べてみた。
referee
1a (競技・試合の)審判員,レフェリー 《★【解説】 主に basketball,boxing,football,hockey,rugby,wrestling などに用いる; cf. umpire》.
b (相撲の)行司.
2 仲裁人,調停者.
3 (学術論文の)事前審査員.
4《主に英国で用いられる》 身元照会先,身元保証人.umpire
(競技の)アンパイア,審判員 《★【用法】 主に badminton,baseball,cricket,table tennis,tennis などに用いる; cf. referee1 1b》.
be (an) umpire at a match 試合の審判をやる.
【語源】古期フランス語「第三者」の意; a numpire が an umpire と誤解されたもの
こうしてみてみると、確かにreferee には審査や照会といった意味も含まれるようだ。また、学術論文を事前に審査する人もレフェリー。相撲の行司もレフェリーなのか!
また、umpireの語源が「第三者」という古期フランス語に由来することもわかった。
英英辞典『merriam-webster』も当たってみた。
referee
1: one to whom a thing is referred: such as
a: a person to whom a legal matter is referred for investigation and report or for settlement
b: a person who reviews a paper and especially a technical paper and recommends that it should or should not be published
c chiefly British : REFERENCE
one referred to or consulted: such as
a person to whom inquiries as to character or ability can be made
2: a sports official usually having final authority in administering a gameumpire
1: an official in a sport who rules on plays
2: one having authority to decide finally a controversy or question between parties: such as
a: one appointed to decide between arbitrators who have disagreed
b: an impartial third party chosen to arbitrate disputes arising under the terms of a labor agreement
3: a military officer who evaluates maneuvers
referee の説明を見ると、「試合の管理において最終的な権限を持つ役員」と書かれている。また、他の意味の説明の中には、referred という単語が入ってくる。referは、参照する、照会する、委託するといった意味だ。
一方、umpireには、「スポーツで、競技を司る役員」と書かれていて、「最終的な権限」という強い言葉は審判員の説明としては書かれていない。他の意味の説明には、争っている双方を仲裁する役割、第三者という言葉と共に、最終決定権という言葉が出てくる。
さらに、こんな記載もあった。
The word umpire was formed by metanalysis, or the changing of the division of words based upon how they sound together. The original word in English was noumpere, which was a borrowing of the French term nompere. The -pere of nompere was the French word for “equal,” a descendant of the Latin word par (“equal”) that is the root of words like peer, pair, and, of course, par. Noumpere became the form used in English for “one without equal” or “peerless,” but frequent references to a noumpere ended up becoming references to an oumpere, which became the modern word umpire. It’s ironic that the word for a person who literally calls balls and strikes is called by a name created by a linguistic foul.
拙訳:umpire(アンパイア)という言葉は、メタアナリシス(単語の分割を、その音の響きに基づいて変化させること)によって形成された。英語の原語はnoumpereで、これはフランス語のnompereを借用したものである。nompereの-pereはフランス語で「等しい」という意味で、ラテン語のpar(「等しい」)の後裔であり、peer、pair、そしてもちろんparの語源でもある。Noumpereは英語では「one without equal」または「peerless」(他に等しいものがないもの、無類のもの)という意味で使われていたが、noumpereが頻繁に使われた結果、oumpereになり、それが現代語のumpireになったのだ。文字通りボールとストライクを判定する人の言葉が、言語的な反則によって作られた名前で呼ばれているのは皮肉なことである。
ここまでのまとめ
Refereeは、言われてみれば確かに、referが含まれている言葉だ。「試合を進めるにあたって、規則に照らして最終的な権限を持った人」という意味合いのようだ。だからこそ日本語にしたときには「主審」という用語を当てるのが一般的なのだろう。
一方、Umpireは、当事者間で争いごとが解決できなかった時の「第三者の仲裁役」として関わり、最終決定をする人というニュアンスのようだ。
初めから権限が委ねられているか、両者で解決できなかった時の仲裁役か…というところが両者の違いといえそうだ。また、どちらも審判員であることは間違いないが、Refereeの方がUmpireよりも権限が強そうな感じもしてきた。
後編では、各スポーツの競技規則に当たってみる。