これまで当ブログでは、介護保険にまつわる問題点について様々な角度で記事を書いてきました。
都道府県・市町村・事業者側の問題点
算定率の高い全サービス種別・高算定率加算一覧と処遇改善加算について
介護職員の賃金がなかなか上がらない、上げられない加算問題がある
資格問題
福祉職の資格制度をめぐる課題と展望(ケアマネージャー以外の資格制度について)
質の底上げを図りながら、日本の資格を国際水準に近づける
財源
介護保険とGDPの関係について
GDPは上がっていく予測だが、独自GPIを見る限り、地域包括ケアは理念倒れし、国民の支え・生活の質・安心感は低下していく
DX
介護DXの課題と可能性
DXには機材よりも人材育成DXを進め、研修体制を整えるべき
法律問題
努力義務の総括
努力義務の多用により形骸化が進み、自治体によっての成果に差が出る原因になっている
寿命問題
居酒屋けんざん(53)寿命って
とまとめてきました。
日本人は長生きを歓迎していない
では、どうやったら持続可能な介護保険制度になっていくかについて考えてみます。
① 医療・介護のねじれ
医療は国が統一的に運営する「全国一律の保険制度」であり、
・診療報酬
・医療提供体制の基本ルール
・医療費の算定方法
などが全国で共通です。
一方で介護保険は、1,571の市町村が保険者であり、
・保険料
・要介護認定のスピード
・地域支援事業の内容
・サービス提供体制
・減免措置
などが自治体ごとに大きく異なります。地域差が生まれやすい構造です。
その結果、
・家族介護を前提とした旧来の設計
・入院期間が長かった時代の前提
・地域包括ケアが未成熟だった時代の前提
が制度に残り続け、現実のニーズと制度が噛み合わない状況が続いています。
医療保険と介護保険が分かれた背景には財源問題がありましたが、今求められているのは「社会全体が安心して利用できる制度設計」へと再構築することです。
② なぜ介護保険は問題になりやすいのか?
医療保険と介護保険が分離された当時、背景には“生産能力のない高齢者が急増する”という危機感があり、その受け皿として介護保険が整備されました。しかし長寿社会は、単に高齢者が増えたというだけではなく、人生の構造そのものを変えてしまったのです。
教育 → 仕事 → 引退 の三段階モデルは崩れ、
・第二のキャリア
・晩年の社会参加
・予防医療・予防介護
・リハビリテーション技術の進化
など、新しいライフデザインが求められる時代になりました。
しかし、長寿社会がもたらした最大の変化は、労働市場の再編ではありません。
「社会の学びの構造」が変わったことです。
これまで日本社会は、若者が学び、高齢者は引退し、社会の中心から退くという一方向モデルを前提にしてきました。しかし平均寿命が80年を超え、90歳が珍しくない現代では、このモデルはすでに現実と乖離しています。むしろ長寿社会とは、**“高齢者が社会を再教育する時代”**の到来です。
教育という再投資
高齢者こそが、
・産業の変遷
・地域の歴史
・成功と失敗の蓄積
・人生の折り返しを越えた視点
を持つ唯一の世代です。これはAIでも若者でも代替できない「経験知」であり、社会の持続可能性にとって不可欠な資源です。
本来、介護保険制度は高齢者を「支えられる側」として扱うだけでなく、社会に知を還元する仕組みを組み込むべきでした。しかし現行制度は“高齢者=負担”という旧来の価値観を前提にしており、長寿社会の利点を十分に活かしきれていません。
持続可能な介護保険を考えるなら、財源やサービス供給体制の議論だけでは不十分です。
高齢者が社会を再教育し、知と経験を次世代へ循環させる仕組みを制度に組み込むことこそ、長寿社会の本当の可能性を開く鍵です。
