今回は2024年に改正された介護保険で、事業所が算定されていない加算についてまとめてみます。なぜ算定されないかなどについても掘り下げてみたいと思います。
1.低算定率加算の一覧
厚労省公表の全国算定率(2023年データ)をもとに、介護保険の全サービス種別で特に使用率が低い加算を一覧化しました。ここでは概ね 算定率1%未満のものの一覧です。
📊 全サービス種別・低算定率加算一覧(全国平均)
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サービス種別 |
加算名 |
全国算定率(目安) |
主な取得ハードル |
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認知症専門ケア加算(Ⅰ) |
0.01% |
専門研修修了者配置+計画的ケア |
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認知症専門ケア加算(Ⅱ) |
0.00% |
上記+より高度な要件 |
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生活機能向上連携加算(Ⅱ) |
0.06% |
リハ職連携・評価体制 |
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中山間地域等小規模事業所加算 |
0.33% |
地域要件限定 |
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訪問入浴 |
複合型サービス連携加算 |
0.2%前後 |
他サービスとの連携証明 |
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サービス提供体制強化加算(Ⅰ) |
0.5%未満 |
常勤看護師数・研修要件 |
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訪問リハ |
生活行為向上リハ実施加算 |
0.3% |
個別計画+評価報告 |
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居宅療養管理指導 |
薬剤情報提供加算(Ⅱ) |
0.1% |
医師・薬剤師連携必須 |
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生活機能向上連携加算(Ⅱ) |
0.4% |
リハ職連携・評価 |
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認知症専門ケア加算(Ⅱ) |
0.2% |
専門研修+計画 |
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通所リハ |
栄養改善加算 |
0.6% |
管理栄養士配置 |
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短期入所生活 |
サービス提供体制強化加算(Ⅰ) |
0.5% |
常勤職員要件 |
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特定施設 |
医療連携体制加算(Ⅰ) |
0.4% |
医療機関との契約体制 |
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福祉用具貸与 |
特殊寝台付属品加算 |
0.3% |
特定条件下のみ |
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居宅介護支援 |
入院時情報連携加算 |
0.7% |
医療機関連携証明 |
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看取り介護加算(Ⅰ) |
0.8% |
看取り体制整備 |
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在宅復帰・在宅療養支援機能加算(Ⅰ) |
0.5% |
高い在宅復帰率要件 |
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介護医療院 |
重度療養管理加算 |
0.4% |
医療依存度高い入所者割合 |
傾向と分析
- 低算定率の主因として、「要件の複雑さ」「対象者の少なさ」「体制整備コストの高さ」さらに、「設定単価の低さ」が挙げられます。
- 特に リハ職連携系(生活機能向上連携加算など)と認知症専門ケア加算は、ほぼ全サービス種別で低水準。ST・歯科衛生士などとの口腔ケアに関する加算が増えたのに対し、体制を整えられないという問題も含まれています。
- 地域限定加算(中山間地域等)は、対象事業所がそもそも少ないため全国平均では極端に低く見えます。県境などの地域特有の問題がある福祉サービスの拠点において、提供持続を模索したのでしょうが、そもそもの人事院規則で定める地域の等級についてもメスを入れる時期に来ていると思います。
2.加算解説
全ての解説はさすがに限界があるので、特に算定の低い訪問介護の加算について解説します。
- 認知症専門ケア加算Ⅰ・Ⅱ
認知症専門ケア加算(Ⅰ):3単位/日
対象者(日常生活自立度Ⅱ以上の利用者)が占める割合が50%以上
認知症専門ケア加算(Ⅱ):4単位/日
対象者(日常生活自立度Ⅲ以上の利用者)が占める割合が20%以上
研修履修者の配置について
どちらの加算を取るにしても認知症介護に係る研修を修了している従業者の配置人数
が必要になります。
参考:日常生活自立度の違い
Ⅰ(ほぼ自立)
Ⅲ(介護が必要)
Ⅱは「見守りや注意があれば自立できるが、放っておくとミスや危険が起こりうる段階」で早期の支援や環境調整で進行を遅らせやすい時期を指します。
もう少し分類は細かくⅡaは家庭外で症状、Ⅱbは家庭外での症状と分けられます。
判定は医師、もしくは認定調査員によるため、状態が不安定な時期には算定されづらいという問題もあります。
問題点
この加算は、各訪問介護事業所の特徴になる利用者が、生活支援が多いのか身体介護が多いのかで、Ⅰ・Ⅱを選べる仕組みになっています。
ではなぜ算定されないかについての理由として、研修履修者の配置が必要になるからです。事業所従業員20人未満で1人と、配置基準はけして高いとは言いませんが、受ける研修時間は20~50時間もあります。ところが実際の訪問介護事業所の平均従業員数(常勤換算)は4〜6人程度とされていますので、多くて10人も働いていません。
つまり一人研修で抜けたとして、12万くらいの損失。その間その他の従業員は突発的な休みの取れない状態になりながらも、月平均24,000円の売り上げアップになることになります(4×10円×月のべ利用者数600件=24,000円)、半年加算を付け続けてやっとペイする計算になるわけです。それだけではなく、算定をし続けるには、「計画ケア」は書面化とチームケアが必要でかつ、日常生活自立度Ⅱ以上の人にしか算定できません。となれば、ペイするのは半年どころか1年以上かかる計算になるわけです。コストばかりがかかる加算といえるのです。
- 生活機能向上連携加算(Ⅱ)
生活機能向上連携加算(Ⅱ):200単位/月
利用者一人に対し月2000円くらい収入が増える加算になります。

問題点
この加算が算定されない理由は簡単で、算定要件にあります。
・外部のリハビリテーション専門職等とサービス提供責任者が生活機能アセスメントを行う
・生活機能向上を目的とした訪問介護計画を作成している
・訪問介護計画書に、生活機能アセスメントの結果、その他日々の暮らしの中で必要な機能の向上に資する内容を記載している
等が条件になります。
利用者さんにはありがたいサービスですが、手間がかかるのはもちろんのこと、問題は外部リハビリテーション職との連携です。この報酬加算算定しても外部リハビリテーション職には直接報酬は支払われません。つまり、外部リハビリテーション職はこの事業所と直接契約を結ぶ必要があります。つまり、契約料が1件につき2,000円だったら、事業所は利益はなく手間だけが残るということです。外部リハビリテーション職側から見ても、アセスメントをして、アドバイスをするのに、1件ひと月2,000円以下の契約がしたいかという問題もあるわけです。事業所も外部リハビリテーション職もありがたくない加算と言えます。
どうだったでしょうか、一部だけの紹介でしたが、算定率が1%を切る加算には、切る理由があるということです。
後編では、算定率の高い加算の紹介をしていきます。