医療業界と福祉業界で働く身として、どちらの業界も似ているなーと思うことはよくあります。
DX・AIなどという言葉が流行りだせば、業界全体が興味を示しますが、それを実際に現場で運用に転嫁している病院・事業所はどれくらいあるでしょうか?iPadがビジネスで使われだした時も、浸透は他業界より遅く、それほど使わないのにノートパソコンにこだわっていました。現場スタッフからすればノートパソコンほどのスペックは必要なかったですよね?またクラウドの時代だと言われれば、クラウドソフトばかりに目が行きましたが、結局一般企業は、googleドライブ+スプレッドシートで情報の共有化などが進みました。
ではAIは?と聞けば、まだ実用段階ではないと思っている気がしています。AIにしても、もう一般企業は運用を始めているんです。例えばPowerShellでネットワーク下のパソコンのログ管理や、ポート開放情報をまとめることって、専用のソフトかスクリプトの知識のある職員が必要でしたが、もうお手持ちのPCで、しかも無料で、AIがパッチ処理のコードまで打ってくれます。ITの知識があるないなんて関係なくなってきて、クラウドと同様に使うか使わないかの選択の時代だと思います。

なぜここまで、医療・福祉業界はIT系に弱いのか。比べるなら医療業界のほうがまだ、電子カルテやDX加算などがあり、病状、診断結果など個人情報の観点から閉域網での運用をしてきましたから、SEを雇い入れなければならなかったという経過がありますよね。そうはいっても、実際のところは外来患者を多く抱える病院と、入院が専門の病院ではその基盤的な土壌に差があります。さらに入院と言っても、急性期と慢性期で差があります。
一方福祉に目を向けると、保育事業の対象は若いお母さんたちがターゲットなだけに、IT化は望めません。高齢事業・障がい者事業は請求システム自体が電子化されているため、ある程度のIT化は進みましたし、新設の事業所であれば、色々な場面でIT化を進めている様子もあります。
順にするなら
外来病院>=急性期病院>慢性期病院>高齢事業・障がい者事業>保育事業
という図になると思います。
外来病院・急性期病院になれば一般企業並みのIT化が進んでいるところもあるはずです。似ている事業体なのに、どうしてこのような差が生まれたかが問題です。
IT化がパッケージに左右され過ぎて、初期費用・導入費用(イニシャル)にお金を掛け過ぎているという側面があります。ITのわからない人がわかるようになることを目指していたため、お気に入りのベンダーの勧められるまま購入している、というのが一点目として考えられます。ベンダーはどこの業者も「わかりやすい」「だれでも操作できる」と謳いますから、経営者自身でもわかるものだと思ってしまうんでしょうね。それでいて「ノンコードで、次世代の非リレーショナルです」などのキャッチフレーズを理解しないまま導入してしまっている気がするんです。AWSの導入すら実現可能かどうかなのに、非リレーショナルを導入したら、汎用データベースとして使えなくなります。CSV機能搭載といっても、それを組み入れるソフトはどうする気なんでしょう・・・。となれば、最低でも利用者情報・職員情報それぞれのパッケージソフトが必要になります。でもこの手のパッケージは、イニシャルが高くても、運用コスト(ランニング)が低いため、ずっと使えると思ってしまうんでしょうね。
もう1点としては、補助金ありきで導入している点です。
厚労省はずいぶん昔から、医療分野の情報化の推進を進め、病院のICT化を進めてきました。
では、医療・福祉系では一番進んでいるであろう病院は多くの加算がついていると思わないでしょうか?
病院の診療報酬で関係加算を一覧にしてみます。
医療DX推進体制整備加算(2025年4月改定)
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加算区分 |
点数(医科) |
主な要件 |
マイナ保険証利用率 |
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加算1 |
12点 |
電子処方箋導入済・電子カルテ情報共有サービス活用 |
45%以上 |
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加算2 |
11点 |
同上(加算1より要件緩和) |
30%以上 |
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加算3 |
10点 |
同上(加算2より要件緩和) |
15%以上 |
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加算4〜6 |
10〜8点 |
電子処方箋未導入でも算定可能(経過措置) |
同上 |
→電子処方箋・電子カルテを導入しつつ、患者がマイナ保険証を利用している率によって加算が変動
在宅医療DX情報活用加算
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加算区分 |
点数(医科) |
対象 |
要件概要 |
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加算1 |
11点 |
在宅患者 |
電子カルテ情報共有・電子処方箋・オンライン資格確認の活用 |
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加算2 |
9点 |
同上 |
上記要件の一部未達でも算定可能(経過措置あり) |
医療情報取得加算(初診・再診時)
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加算区分 |
点数 |
条件 |
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初診時(マイナ保険証) |
1点〜3点 |
オンライン資格確認で診療情報取得・活用 |
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再診時(マイナ保険証) |
1点〜3点 |
同上 |
データ提出加算(A245)
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加算区分 |
点数(医科) |
病床数200床以上 |
病床数200床未満 |
算定タイミング |
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加算1 |
145点 |
○ |
× |
入院初日 |
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加算2 |
155点 |
○ |
× |
入院初日 |
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加算3 |
145点 |
○ |
× |
入院90日超ごと |
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加算4 |
155点 |
○ |
× |
入院90日超ごと |
※病床数200床未満の場合は、それぞれ215点・225点に引き上げられます
注)私の思いつく限りなので、忘れているものがあればご指摘ください。
点数なのでわかりにくいかもしれませんので、大よその話ですれば、外来受診(医師が3~4人で対応)のある病院なら、ひと月で数十万~数百万の収益になるかもしれませんが、上記で説明した慢性期の病院になると、年間で数百万程度にしかなりません。
では介護保険に目を向けます。
介護保険は事業がたくさんあるので、共通するものだけになると
科学的介護推進体制加算(LIFE加算)
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加算区分 |
単位数 |
対象 |
要件 |
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加算 |
40単位/月 |
通所・施設系 |
LIFE(科学的介護情報システム)へのデータ提出・フィードバック活用 |
生産性向上推進体制加算(2025年新設)
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加算区分 |
単位数 |
対象 |
要件 |
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加算Ⅰ |
所定単位数の3% |
全サービス |
ICT導入・業務効率化・職員満足度調査の実施 |
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加算Ⅱ |
所定単位数の1.5% |
同上 |
加算Ⅰより要件緩和型 |
こちらもわかりにくいと思うので、だいたいで説明すると各事業所毎月10万円もいきません。
診療報酬・介護報酬の点を整理すると、どちらも新たなICTソリューションを導入できるだけの加算とは言えません。
となれば、自ずと補助金導入を待つような体制になるというわけです。
内容が多くなり過ぎたので、どのような制度改革が必要かはまた次回に。