
「前回は『生きる力』で、今回は『あわれみ』?」
「今年からなにか路線変更でもしたのかい?」

「いえ、あの、毎回言ってますが、これも福祉に大きく関係する事柄だと思っていますから、付き合ってください。」

「なにか売り出そうとしてないかい?おらなにも買わないからね?」

「大丈夫ですってば」

「それにしても、『あわれみ』って人のことを可哀そうと思うことであって、いい感情だとはいえないね。上から目線みたいで。」

「かわいそうに思う心。慈悲。同情。という意味があるそうです。」
引用元:

「うーん、同情ならなんとなくわかるけど、慈悲となるとやっぱり宗教的なものを感じるね。」

「仏教由来の日本人特有の感情にも思えますね。」

「どうも私には「あわれんでほしい」というマウントを感じることが多いんですよ。」

「そんな人いるかい?」

「口には出さないけど、『自分はこんなに辛いんだから許される』と思っている人って結構いると思いません?そういう人たちを指しています。」

「となれば、やっぱり福祉の話とかけ離れると思うよ?多分普通(一般的なという意味)の人より、障がい者にはたくさん会ってきたけど、そんな風に感じさせる人にはあったことないよ。それに保育園児だったらなおさら感じないね。」

「なるほど、そういう意味では高齢者福祉に限ったものなのかもしれませんね。」

「今回なぜこのようなお題にしたかといえば、介護者に求められるものなのではないかと思ったからです。」

「昔、私が福祉の道を選んだ後に母に『あんたみたいなやさしさのないような人は福祉にはいらない』と言われましたね。」
※注 母は全く福祉関係者ではありません。

「その母の言葉には、やさしさというより慈悲深さ、ひいてはその人をあわれむ気持ちが乏しいことに対しての表現・言葉だったと思います。」

「その言葉に、若い私にはどうも『やさしさ・あわれみの強要』と反感をもちました。」

「あわれみは福祉従事者の素質として必須項目なのでしょうか?」

「うーん、それこそ、それはおらに聞かれても困るよ。」

「直接は関係ないかもしれませんが、介護の担い手になってくれる外国人労働者に対してもその傾向を感じるんですよ。」

「介護労働者って、タイやフィリピン、ベトナムの人が多いんです。でもゼロではないんですが、中国の方とかって、なり手が少ないだけでなく、施設側が募集を断る傾向もあるんです。」

「へーなんでだい?」

「簡単に言えば、タイやフィリピンの人のほうが優しく、対応がきめ細やかな人が多いからだと聞いています。」

「国の違いってあるものかね。どうもおらにはわからんけど、施設側もそういう人を求めているってことなんだね?」

「でもそれって、利用者側から言えば、お金を払っているんだから当たり前だと思うんじゃないの?上からモノをいうことですら当たり前に。」

「私が介護を始めた頃は、『優しく』接せることなど前提の話であって、それよりも利用者は罵詈雑言から多少の暴力も許されるような時代でした。」

「自分はあわれなんだから、敬えというような人が多かったです。」

「優しい→あわれみ→敬え の変換活用みたいだね」

「介護職員に求めるものが、賃金は低くても、目指すものはナイチンゲールか、はたまたマザーテレサであれ。みたいなところを感じます。」

「実際に介護の教科書にマザーテレサは出てきてましたしね。」

「マザーテレサの様な思想を持てというくらいであって、マザーテレサにはなれないよね。」

「人口全体の高齢化という社会問題の側面が、他の福祉職より強い印象があります。」

「なので、対価が伴わないのに、大きな心・器・人間性を持てみたいな押しつけが、この介護職には求められているのではないでしょうか?」

「おらより上の人たちって『敬え』と強要してくる人たちが多いのは確かだと思うよ。」

「なんだか、『敬え』と『あわれみ』の違いがなくなってきたように思える。」

「心理傾向を考えてみると、そういうものを強要するって、自己評価の低さが強く感じられます。だからプライドだけ高くなり、人を信じていない。敬えとは言えないからせめて『あわれみ』と言い換えているというか。」

「自分は弱いんだから理解をしろ、というのは理解できなくもないんですが、では自分の苛立ち、未達成な不満、報われない境遇などすべてを相手に向けていいかと言えばそれは違うと思うんです。」

「そりゃ、モラハラはなくならないよね」

「子どもを育てたときに言われたことがあるけど、自分たちは苦労してきたんだから、苦労して子どもは育てるべきだ。なんていわれたことあるよ。」

「自分と同じ状態を受けないと、自分の気持ちが報われないのかもしれないね。」

「父がよく『こんなに長生きをして苦労をして、不幸になるとは思わなかった。』と言っています。高齢者も想定外の事態なのかもしれませんね。」
