先日こんなニュースがありました。
2024年「老人福祉・介護事業」の倒産、休廃業・解散調査 2025/1/7
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休廃業は、訪問介護448件(同24.4%増)、通所・短期入所70件(同5.4%減)、有料老人ホーム25件(同92.3%増)、その他69件(同9.5%増)で、7割以上(73.2%)を訪問介護が占めた。倒産と休廃業の合計では、基本報酬のマイナス改定やヘルパー不足などが影響した訪問介護が529件(同23.8%増)と前年から102件増え、訪問介護事業者の苦境が浮き彫りとなった。
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報酬改正から約一年、訪問介護の倒産が止まらない状態です。
記事の中にもあるように、訪問介護はデイサービスや有料老人ホームなどの他の事業に比べ、場所代がかからないので、赤字なら清算してしまおうという動きが、倒産を促進してしまっている現状だと思います。
この問題をもう少し掘り下げてみたいと思います。
1.原因は20年以上前
この状態を作り出した原因を考えたいと思います。
あちこちのニュースで取り扱われているのは、人材難であると出ています。
また、googleのAIでは
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人手不足、物価高騰、介護報酬改定、地域ニーズの変化、 同業者との競争激化
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とありました。
ですが、私にはそう思えないんです。
原因をひも解けば、介護保険制度導入までさかのぼります。
導入時、訪問介護は高齢者福祉事業の中でも敷居が低いとされ、コムスンという大企業まで誕生しました。それから、介護保険制度の予算は毎年膨らむ一方の中、打ち出されたのは、時の首相である小泉首相の「聖域なき構造改革」でした。
ウィキペディアの中では触れられていませんが、この構造改革により、福祉事業の市場開放が一気に進みました。当時、特養の内部留保問題も大きく世間に取り上げられており、さらに総務省の懸念材料だった高齢者の住宅問題の解決策が有料老人ホームでした。有料老人ホームと言っても種類複数あり、住むだけである高専賃、高優賃などの住宅型有料老人ホームから、介護付き有料老人ホーム、そしてサービスを選択するサービス付き有料老人ホームと分かれていました。どれが採算が取れるか、どのタイプなら参入できるかと、民間企業、社会福祉法人を含め、多くの事業者が有料老人ホーム事業に乗り出しました。その一方で、前段のコムスンの大規模な粛清も国は行い、やみくもに事業者が参入する福祉業界への粛清も行ったという経過がありました。
訪問介護事業を一大事業まで伸ばしたコムスンの粛清がありながら、なぜこの問題が現代の訪問介護と関係するのかと言えば、「サービス付き有料老人ホーム」の利益率が高かった、採算に見合ったという問題です。
本来、訪問介護は高齢者の住む住宅やマンションへ赴き、介護をするサービスです。それがサービス付き有料老人ホームに併設した訪問介護事業所であれば、併設した有料老人ホームに行くだけであり、訪問介護職員の移動距離の短縮につながりました。それでいて、移動距離が縮まった分を、本来は一人につき1時間半程度が妥当な生活支援サービスなのに、5~8時間もの長時間利用するというサービスが誕生します。これは受ける側の高齢者にとってはありがたいことなんですが、施設の介護保険収入からみれば
特養・介護付き有料老人ホーム<サービス付き有料老人ホーム
という図になります。特養など建て運営するより、サービス付き有料老人ホームで訪問介護をフルに利用してもらった方が、国から受ける介護報酬が高いのです。想定外の介護保険制度利用に、国もただ手をこまねいていたいたわけではありません。特定のサービスを利用に対して集中減算などを設けてみたり、監査を厳しく行ったりしましたが、実際にそこに住み暮らしている高齢者の実害につながらないようにしながらの指導は、大きな効果を生みませんでした。
この流れの末、膨らむ介護保険費縮小のために、行われたのが今回の報酬改定だったというわけです。
そして今まさに議論されているのが、膨張する訪問介護の生活支援サービスの介護保険適用外にする動きにつながっています。

2.ただ生活支援サービスを適用外にすればいいわけではない
生活支援サービスで潤っているサービス付き有料老人ホームの粛清を行うべく、生活支援サービスを介護保険サービス適用外にすれば、多少の訪問介護が潰れようと介護保険の適正な利用が進むと考え議論は進んでいます。
考えなければならない一番の問題は、高齢者はどこで「死ぬ」かです。
介護保険導入前は、病院が一番多かったんですが、医療費が高騰しだせば介護保険を導入し、施設と在宅で「死ぬ場所」を増やしました。「看取り加算」という加算を導入し、病院への負荷を減らそうとしたこの構造で、在宅生活の支柱は訪問介護でした。在宅での医療行為は訪問看護で週数時間、入浴などの清潔や介護予防はデイサービスで、それ以外の支援はほぼ訪問介護を利用するしかありません。
その訪問介護を支える訪問介護員は、高齢化が進んでいます。訪問介護のサービスに、生活支援サービスともう一つのサービスである身体介護サービスは、訪問介護員の負荷から拒む職員が多いのです。なのに、生活支援サービスは保険適用外となれば、おのずと訪問介護員の収入が落ちるのは目に見えています。であれば、訪問介護は清算してやめようと考えるのはごく普通のことです。それでいて、サービス付き有料老人ホームは、訪問介護事業から手を引くだけで、住宅型有料老人ホーム化していくだけなので、国が思う粛清など意味を持たないのです。
国民の終の棲家は、自宅ですらなくなる事態になるのはもう間もなくです。
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