こんにちは、ドコモ 6Gテック部のアムナートです。 2026年3月にスペイン・バルセロナで開催された Mobile World Congress (MWC) Barcelona 2026 において、NTTドコモ・6Gテック部は「6GによるAI・ロボットとの共生(Living with AI and Robotics by 6G)」 をテーマとした展示を行いました。本展示では、ドコモが提唱する 「Network for AI」 の考え方のもとに、人工知能(AI)やロボットがその能力を最大限に発揮するために、ネットワークがどのような役割を果たすのかを、コンセプト映像や実機デモを通じて紹介しました。 本記事では、MWC Barcelona 2026での展示内容に加え、出展に向けた準備や現地の様子、そして最新技術のトレンド、現地で感じたことをお伝えします。
MWCの概要
MWC Barcelona1 は、通信・モバイル業界を中心とした世界最大級の国際展示会として、2026年3月にスペイン・バルセロナで開催されました。主催者であるGlobal System for Mobile Communications Association(GSMA)2 によると、今年のMWCには 世界207の国・地域から約10万5,000人が来場 し、通信事業者、ベンダ、スタートアップ、政策関係者など、多様な分野の関係者が一堂に会しました3 。会期中は 約2,900の出展社・パートナー が参加し、1,700人以上の業界幹部や政策決定者がカンファレンスに登壇 するなど、AIや次世代ネットワークを中心に活発な議論が行われました。


MWC Barcelonaは、単なる製品展示の場にとどまらず、通信業界の技術トレンドや将来像を世界に発信する場 として、その存在感を改めて示したイベントとなりました。
MWC Barcelona 2026ドコモの展示解説
今回の展示のコンセプトは、AIやロボットと人が自然に共生する未来を、6Gネットワークが支える というものです。 6Gを単なるつなぐ通信及びデータパイプから「価値を生む知能基盤」へと進化させるという考え方のもと、以下の展示を行いました。
Network for AI のコンセプト
AI・ロボット時代においては、端末単体で処理を完結させるのではなく、ネットワーク側が計算・制御・知能の基盤となる ことが重要になります。会場では、ドコモの6G Harmonized Intelligenceプロジェクト4 の概要を紹介し、この考え方を分かりやすく伝えるためのコンセプト映像を展示しました。

次世代ユーザインタフェース 「Composer」
Composer は、人の意図やその場の状況に寄り添いながら、AIまたは次世代のAI(Artificial Superintelligence: ASI)との関わりをなめらかにつなぐためのユーザインタフェース(UI)のコンセプトです。複雑な操作や細かな指示を必要とせず直感的な動作により、人を中心にAIが連携し、暮らしや活動を裏側から支えていくものです。これを支える基盤として、リアルタイム性と柔軟性を備えた6Gネットワークが必要となることを示しました。
センサレスロボットの展示
今回の展示では、ロボット自身が周囲の状況を把握するのではなく、ネットワークを通じて世界を感じ取り、行動するという新しい考え方を紹介しました。ロボットは単なる「身体」の役割を担い、周囲の状況を捉える感覚(Sense)はネットワークから提供されます。これにより、ロボットは広い範囲の状況をリアルタイムに把握し、周囲の環境に応じて柔軟に動くことが可能になると同時に、ロボットの外装にやわらかく軽い素材を用いることができます。今回は、その考え方を分かりやすく伝えるため、ドコモダケ5 をロボットのデザインとして採用し、展示に用いました。本展示を通じて、ロボットやデバイスがつながり合い、社会全体が一つの知能のように機能する未来を支える、ネットワークの可能性を提示しました。
In-Network Computing(INC)の実証実験
さらに、ネットワーク内でAI処理を行う In‑Network Computing の実証実験6 映像も展示しました。INCを適用することで、アプリケーションレイヤの処理機能を、ネットワークのデータ転送制御と一体で扱うことより、遅延や端末の消費電力を低減しつつ、高性能・高機能なサービスを実現できます。本実験では、複数のカメラやセンサから得られるデータをネットワーク側で集約・AI処理し、人や物体をリアルタイムで検出する様子を紹介しました。本展示を通じて、ネットワークそのものが知能の一部として機能し、AIやロボットの振る舞いを支える基盤となる可能性を示しました。
自律共生ロボット「DENDEN」
自律共生ロボット「DENDEN」 は、人と同じ空間で活動しながら、社会を支えるパートナーとなる存在です。人が常に関与しなくても状況を把握し、環境の見守りや安全確保などに貢献する未来を想定しています。多くのロボットが同時に動き、協調して働くためには、広いエリアを安定して支えるネットワークが不可欠であり、その可能性を分かりやすく表現しました。
今回の展示に対しては、6Gを通信技術の進化ではなく、AIやロボットを成立させる知能基盤として捉えている点に高い関心と共感が寄せられました。特に、「なぜ6Gが必要なのか」「AI時代にネットワークはどのような役割を担うのか」といった点について、技術・ビジネスの両面から具体的な議論が活発に行われました。センサレスロボットやDENDENについては、人がいない場所や危険な環境で価値を発揮する点が評価され、環境モニタリングや防災など、実社会での活用に期待する声が多く聞かれました。また、Composerは、人とAI・ロボットをつなぐ新しいインターフェースとして、将来の体験やデバイスの可能性を感じさせる展示として受け止められていました。

全体として、AIやロボットそのものではなく、それらを支え、調和させるネットワークの重要性を明確に示した展示だった、という評価が印象的でした。
出展の舞台裏:展示を支えた国内での準備と調整
今回の展示は、ロボットにとって初めての海外出展という点で、これまで以上に入念な準備が求められました。ロボットの海外輸送は展示直前に行えるものではなく、かなり前倒しで計画する必要があったため、追加機能の開発や実証実験のスケジュール調整は簡単ではありませんでした。限られた時間の中で対応いただいた開発協力者の皆さんには、改めて感謝したいと思います。

また、海外出展にあたり、通常の国内展示準備に加えて多くの手続きが必要でした。特に輸出管理については、対象や用途を一つひとつ確認しながら、慎重かつ徹底的に対応しました。こうした見えない準備があってこそ、安心して展示に臨むことができます。
スケジュールとしては、1月下旬に国内で実証実験と映像撮影を実施し、展示内容を固めました。その後、2月上旬にはロボットたちが日本を離れ、バルセロナへ渡航。展示会場での華やかなデモの裏側には、このような地道な準備と挑戦の積み重ねがありました。
現地で感じたこと
MWC の会場は、各ブースの前では自然と人だかりができ、デモを見るだけでなく、「この技術がどこで使われるのか」「誰と組めるのか」といった実践的な議論があちこちで交わされており、技術展示の場から未来を議論する場へと進化していることを強く感じました。
会場全体を通じて、AIはもはや特別なテーマではなく、すべての展示の前提として語られていました。特に、AIがロボットや機械の身体を持ち、現実の世界を見て、考えて、実際に動く技術(Physical AI)といったキーワードが自然に使われ、ネットワーク運用から端末体験、産業用途まで、AIを軸にしたストーリーが当たり前のように受け止められている印象でした。一方で、ロボットやAIを端末や機器単体で完結させる展示が多い中、ネットワークを知能の基盤として捉える考え方は来場者との対話の中で新鮮な視点として受け止められていました。「なぜネットワークが重要なのか」「それは5Gでは足りないのか」といった問いが次々と投げかけられ、展示をきっかけに議論が深まっていく手応えがありました。
また、6Gに関する展示は増加傾向にあるものの、多くは将来技術や性能紹介にとどまっており、6Gの価値を社会の文脈で語る展示はまだ少数でした。その中で、「AIやロボットを成立させる基盤としての6G」という視点は、多くの来場者に「Why 6G」を強く意識させるものだったと感じています。

全体としてMWC Barcelona 2026は、技術の新しさ以上に、技術が社会にどう溶け込むのかを世界中の関係者が本気で議論する場へと変わりつつあることを実感させるイベントでした。
まとめ
MWC Barcelona 2026を通じて、通信業界は「速くつなぐ」存在から、AIやロボットを社会で成立させる知能基盤を担う存在へと進化しつつあることを強く実感しました。6Gは性能の延長ではなく、AIやロボットが現実世界で協調し、価値を生み出すための基盤として、その役割が問われ始めています。
ドコモは、Network for AI の考え方のもとに、6Gを見据えた研究開発・実証・標準化を引き続き推進し、AIやロボットが自然に社会に溶け込む未来を具体化していきます。今回の展示は、多くの開発協力者や関係者の皆さまの支えがあって実現したものです。この場を借りて改めて感謝するとともに、通信の枠を越えた価値創出に、これからも挑戦し続けていきます。

- MWC Barcelona(Mobile World Congress Barcelona):GSMAが主催する、モバイル・通信分野における世界最大級の国際展示会・カンファレンス、毎年スペイン・バルセロナで開催される (MWC - The Largest And Most Influential Connectivity… | MWC Barcelona)↩
- GSMA(GSM Association):世界中の通信事業者や関連企業で構成される国際業界団体、モバイル通信分野における標準化、政策提言、業界イベントを担う↩
- MWC Barcelona 2026 attracts nearly 105,000 attendees – Mobile News↩
- https://www.youtube.com/watch?v=WMZblFDC7AQ↩
- docomodake | NTTドコモ↩
- In-Network Computingによる遠隔GPUリソースを活用した低遅延AI映像解析の実証に成功 | お知らせ | NTTドコモ↩