「俺は自分が地獄にいると信じている、だから俺は地獄にいる。カテシスムの実行だ。俺は自分の受けた洗礼の奴隷だ。両親よ、貴方が俺の不幸を作ったのだが、貴方もまた、御自分の不幸は作ったのだ。想えば不憫なお人よしだ。」
「地獄に境界はなく、一定の場所に限られてはいない。われらのおるところすなわち地獄、地獄あるところわれらの永劫の住まいなのだ。」
「愛も憎しみもわたしには同じようなもので、永遠の苦悩を与えるにすぎぬ。否、お前こそ呪わるべきだ。神の意志に反して、お前は今当然悔いているものを自分の意思で選んだからだ。ああ、わたしのこの惨さは何としたものか! どこへ逃げたらこの無限の怒り、この無限の絶望から脱することができるのか? どこへ逃げようが、そこに地獄がある! いや、わたし自身が地獄だ!」
「こういう人々にとって、地獄はもはや飽くことを知らぬ自発的なものとなり、彼らはすでに自発的な受難者にひとしいのである。なぜなら、彼らは神と人生を呪った結果、われとわが身を呪ったことになるからだ。ちょうど荒野で飢えた者が自分の身体から血をすすりはじめるように、彼らは憎悪に満ちた傲慢さを糧にしているのである。それでいて永遠に飽くことを知らず、赦しを拒否し、彼らによびかける神を呪う。生ある神を憎悪なしに見ることができず、生の神がいなくなることを、神が自分自身と自己のあらゆる創造物を絶滅することを、彼らは要求する。そして、おのれの怒りの炎で永遠に身を焼き、死と虚無を渇望しつづけるだろう。しかし、死は得られないだろう。」
「さらばだ。地獄はおまえをおいてゆく。だがそれが、悪魔にとって、結局のところ、なんだというのだ。おまえは知っているかな。どこに本当の地獄があるかを。(かれの心臓をさし示しながら)そこにあるのだ。おまえが地獄を肋の下からとりさってしまわぬかぎり、おまえはずっともちつづけることになるのだぞ。罪はおまえの胸の中にある。懊悩はおまえの頭の中だ。呪いがおまえの本性だ。苦行帯をひきしめろ。おまえの主義で引裂かれろ。飢えて気絶するほどに断食しろ。へりくだれ。卑下しろ。もっとも清らかなことばをさがせ。もっともつつましい随順をもとめろ。(中略)……おれはまたやってくるぞ。……またやってくるぞ。……」
「呪われた、呪われた創造者よ! わたしはどうして生きたのか。ふざけ半分に与えた存在の火花をどうして消しとめなかったのか。わたしにはわからない。まだ絶望しきってはおらず、わたしの感情は怒りと復讐に燃えていた。わたしには、その家と住んでいる者どもをめちゃめちゃにし、その悲鳴とみじめさに腹鼓を打って、喜ぶことだって、できるわけだった。
「夜になると、わたしは、隠れ家を出て、森のなかをぶらついた。今はもう、見つかるのを怖れてびくびくすることもなかったので、おそろしい哮え声をあげて苦悩をぶちまけた。まるで罠を破った野獣のようで、邪魔になるのをたたきこわしながら、鹿のような速さで森じゅうをうろつきまわった。おお! なんというみじめな夜を過ごしたことだろう! 冷たい星が嘲るように光り、裸の木々が頭の上で枝をゆすり、ときおり小鳥の美しい声が宇宙の静寂を破った。自分を除けば、あらゆるものが休むか楽しむかしていた。わたしは魔王のように、おのれの内部に地獄をもち、自分が同情されないのを感じながら、木々を根こぎにしようとし、やがて、まわりというまわりをめちゃくちゃに破壊してやろうと思った。
「しかし、これは、永つづきのしない感情の昂ぶりでしなかったので、体を動かしすぎてへとへとに疲れ、絶望に打ちひしがれたまま、湿った草の上にへたばってしまった。この世の数限りもない人間のなかに、わたしを憫んだり助けたりする者が、一人として無いのに、この敵に対して親切な気もちをもたなくてはいけないのか。否、その瞬間からわたしは、人類に対して、また何よりも、わたしを造り、この堪えがたい不幸へと送りこんだ者に対して、永遠の戦いを宣言した。