1. この頃、やたら聖アントニウスの誘惑への言及を目にします。これまで全然聞いたことなかったのに。
誘惑って言われると真っ先に出てくるのは荒野の誘惑で、逆に言うと他は失楽園のやつくらいしかすぐには出てこない程度の知識なのですが、ちょっと見た感じだとマーラと釈迦の話の西洋版みたいな内容のようです。
絵画ではかなりの人気モチーフらしく、美術史の本に毎度出てくるのはたぶん当たり前なんですけど、とうとう美術とは全然関係ない本でも出くわしたため、観念してフローベールのやつを借りることにしました。
こういう事はそれなりの頻度で起こります。時代もジャンルもばらばらなはずの本やらネット記事やらが、示し合わせたように同じ単語を繰り返してくるのです。私の興味に基づく時代の再編集の中で、なぜか局所的なブームが起きている。前にそれが発生した時のリフレインは"Ignoramus et ignorabimus"というフレーズであり、その前はオブローモフでした。
頻度錯誤と言ってしまえばそれまでですけど、今のところは面白いから良い。これがネガティブな方面で起こり始めると芥川の歯車みたいになってしまいそうで怖いですが。まあ現時点でも、精神状態が悪ければ何らかの暗示を読み取れないこともなさそうなラインナップではあります。人間は何にでも意図や意味を見出そうとする生き物です。
ちなみに私は、聖アントニウス関連の絵の中だと、今のところグリューネヴァルトのイーゼンハイム祭壇画が好きです。なぜなら名前が格好いいから……しかしグリューネヴァルトという名は本名でなく、誰かがミスったせいでそのまま定着してしまった名前だという(ひどい話だ!)。
でも海外の人の名前なんてどうせ好き勝手な発音で呼んでるし今更か。世界規模で見たら本人に馴染み深い音で呼ばれることのほうが少なそう。ギョエテとは云々という川柳もあります。
ところで聖アントニウスの火というのは麦角菌による中毒を指し、祭壇画の置かれている礼拝堂が麦角中毒の患者を収容していたことから、このような絵が描かれたのだと言います(この前読んだ入門書の受け売り)。あんまり関係ないけど聖(セント)エルモの火なら船のマストの発光現象で、白鯨でも有名ですね。聖なんとかの火シリーズって他にもあるのか?
2. なんか退屈なので、プログラミングの勉強でもしようかと思ってAIに作らせたゲームのソースコードを改変したりしていたのですが、奴らは一瞬でゼロからそれなりのものを作ってくれるので便利です。ちょっと前まで、一定以上の規模だと一発でビルドが通るものを出すことは珍しかった気がするんですけど、また賢くなった。
こういうのをそのままポートフォリオとして提出してくる学生とかが増えたら、企業の人は困るだろうなあと思います。全然過程を理解してない場合でも、何回か手直しさせれば割と見られる結果を出してくるのがAIなので。
しかしカンニングや替え玉は、あくまで本人が同じ成果を出すことができないから問題なわけで、そいつがAIを活用して一定以上の成果を出し続けられるなら、それはそれで評価対象にはなる気がする。まあ私にはまだ関係ない話ですけど。趣味に使ってる分には楽しい玩具だし、まあまあ有能な話し相手だなと思うくらいです。
人工知能のことはさておいて、やっぱり私は何かを読むのは好きなんですけど、自分で最初から作るのはあまり得意ではない。ソースコードでも同じです。結局、散らばった情報をかき集めて何かしらのルールを見つけ、すべてを分かった気になってる瞬間が一番楽しいんですよね~
当然すべての事象に適用される法則なんて今のところは存在しないから、ただ単に理解したかのような錯覚をしているケースがほとんどなんですが。各論、例外、私の嫌いな言葉! まあ適用限界がシンプルではっきりしてるならそれはそれで良いです。綺麗だから。
やはり私はそれが真実かということよりも、自分が納得できるかどうかという基準で法則性を受け入れているような気がする(もちろん前提として、実際の例や現象と矛盾している法則に納得することはできませんけども)。だから私の主観における世界や経験と整合的で、かつ私にとって説得力がある陰謀論やカルトが現れたら、あっさり騙されると思います。むしろ自分から引っ掛かりに行くでしょう。
いや、私はなぜ今の自分がそういうものに陥っていない前提で話しているのか。既にそれらの術中にあると考えたほうが自然です。いったい俺は誰に騙されているんだ。自分では分からないので、実害が出そうだったら教えてください。