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怪我したくない人生

1. 鼻を切った。ひげ剃りでガッとやってしまいました。なんでそうなるの?と思われるかもしれませんが、私だって分からない。基本的に、私は体を直接動かす系の行為はすべて苦手です。毎日が不得意だ。指の一本さえ動かさずに生活をこなせたらどれほど良いか……

 

幸いにも傷はごく浅く、せいぜい切り傷から血が滲んでくる程度なのですが、場所が場所だけに絆創膏なども貼りづらくて、不便です。もともと鼻炎気味なので、しばらく鼻をかむたびに傷のことを気にせねばならないと思うとげんなりします。今回は浅いから良いんですが、このように平面ではなかったり、日常的に動かしたりする箇所って、どうやって止血するのが正解なのでしょうか。

 

たとえば手や指もそういう部位の一つで、いま現在も手の甲に身に覚えのない切り傷がある(これも浅い)のですけど、こうひっきりなしに動かしていてはかさぶたが出来るのも遅かろうと思う。かといって動かさずにいるのも不便だし、それで治る保証もありません。

 

私は以前、理由もなく親指の腹の皮がべろべろに剝けていた時期があるのですが、絆創膏で固定してできるだけ動かさないようにしていたら、なんだか固い皮が繰り返し形成されて事態が悪化した経験があります。その固い皮膚は、しばらくするとひび割れて、元の剥けたままの皮膚が出てくるのです。そのまま固定していると、再び別の固い皮が形成されます。

 

かさぶたの役割でも果たしているのかと思ったら、別にそういうこともなく、単に生まれては剥がれ落ちていくだけ。なんなんだお前は。固定せず、普通に動かすようにしたら治りました。気色の悪い話をして申し訳ない。しかし皮膚の仕組みというのはどうもよく分かりません。

 

こういうことを書いて病弱な人間だと思われても困るので、一応言っておくと、私は全体としてかなり健康な人間ではあります。めったに病気にならないし、なっても治りは早いほうです。入院したこともありません。ただ単に、運動しないため貧弱で、不注意のせいで大したことのない傷をしょっちゅう作っているというだけです。余計に同情の余地がないな。

 

2. 大病を患ったこともないし、骨折したこともない私ではありますが、今でも覚えている比較的大きな怪我が四つあります。内訳は、顔、歯、歯、膝です。すべて幼少期の怪我であり、中学以降のものはないです。私はその辺りで、自分に外界での活動が全く向いていないことを悟り、徹底的に引き籠ることにしたのでした。

 

運動でもしようものなら、転倒に次ぐ転倒で骨折しまくっていたでしょうから、賢明な判断というほかない。三次元的、かつリアルタイムな情報を処理する能力が致命的に欠けているのです。私が絶対に赤信号を渡らないのは、ルールに従おうという殊勝な気持ちゆえではなく、やってきた車に気づかず撥ねられることが分かりきっているためです。

 

話が逸れましたが、四つの怪我のうち最もひどかったのは、大きな鏡に歯をぶつけた時のものです(ちなみにもう一つの歯の怪我は、前を走っていた子の頭にぶつかった時)。なんで鏡なんかにぶつけたのかというと、科学館の中に「鏡の迷宮」的なコーナーがあり、愚かにもそこで走り回っていたからです。

 

鏡があるんだから向こうから自分の鏡像が走ってくることには気付けたはずなのですが、私の認識はまるで追いついていなかったらしい。イルカは自分の鏡像を正しく認知できるといいますから、私よりイルカの方が遥かに頭が良いということになります。結果、血塗れの大惨事になり、その科学館から鏡は撤去されたという。本当に申し訳ありません。

 

というか普通に歩いていても物にぶつかりまくる私が、走るなどという大それた行為をしていいはずがない。部屋で大人しくしているのがいちばんです。どうして寝ているだけではいけないのでしょうか。私にそれ以外のことが向いているとは思えない。無理に外へ出れば、私にも周りにも、どうせ良い結果は訪れないのです!!

 

まあそういう訳で(そういう訳ではないが)、二十四年もの間、私は肉体的にも精神的にも引き籠ってきました。小学校から大学院まで通ってはきましたが、それだけです。何かをしようという気にならなかったので、何もしてこなかった。外との関わりを一切放棄して安全な所に立て籠もり、この場所こそが自分の世界だという気でいたわけです。

 

O God, I could be bounded in a nutshell, and count myself a king of infinite space, were it not that I have bad dreams.

— William Shakespeare, Hamlet (Act 2, Scene 2)

 

これが私のモットーでした。恥ずかしい人間ですね。しかし現実なんてどうせ悪い夢のようなもので、引き籠っていても安全というわけではありません。多少なりとも外と関わらざるを得なくなってまだ一年未満ですが、ようやく私にもそれが分かりかけてきました。

 

外が内と比べて恐ろしいということはそれほどなくて、どちらも同じ程度に苦しいものであり、ただ苦痛の種類が違うのです。世を恨んで引き籠もっているのと、外へ出て色々やるのとで、私は今のところ大した差を感じていません。どっちでも良いと思います。違いといえば、無用な恐怖をそこまで覚えなくなったというくらいです。

 

まあ社会の与えてくる種類の苦しみに飽きたら、のそのそ胡桃の殻に這い戻ろうかと思っています。書いてる間に鼻の血も止まったので、もう寝ることにしよう。




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