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短編小説の集い2025の参考記事です!

こちらは「短編小説の集い2025」の参加例記事になります。

こんな感じで記事を作成してください。

 

nogreenplace.hateblo.jp

 

【お名前(HN)】

「だが無力だ」というHNです。無力さん、zeromoon0さんと呼んでください。

 

【執筆歴】

ここの欄は初めての人は初めて、たくさん書いてる人は年数なんかを書いてくれると嬉しいです。無力さんは……ずーっと、なんか書いてますねえ。

 

【ひとこと自由欄(任意)】

この記事は参考作品ですので、皆さんのイマジネーションの邪魔をしないようお題に沿った作品ではありません。よかったら私の作品も読んでみてください。皆さんの楽しい作品がたくさん読めるのを待っています!!

 

【作品名/字数】

「桃の消しゴム」(2073字)

 

【本文】

 宿題をやろうとして筆箱を開けると、ふわりと桃の香りが広がった。中を覗き込むと、身に覚えのあるピンクの派手な消しゴムが入っていた。

 

「あー、美咲の消しゴムじゃん……」

 

 俺のそっけない黒のペンケースの中から、隣の席に座っている相沢美咲(あいざわみさき)の消しゴムが出てきた。どっかで間違って入ったんだろう。俺の消しゴムが入ってないから、向こうの筆箱に俺の消しゴムが入っているんじゃないだろうか。俺って名推理。

 

「明日返せばいいから、使わせてもらおう」

 

 まずは宿題をやらなければ。俺はピンクの消しゴムを脇に置いて、算数のノートを出す。今日は計算問題ばっかりだから、とても面倒くさい。それに割り算の筆算は下にずらーっと数字が無駄に並んで、ノートがいまいちきれいに感じない。小数点の移動とかも面倒だし、消えてもいいだろ。少数の割り算さあ。

 

「ちくしょう、割り切れないか……」

 

 俺はピンクの消しゴムを手に取って、そしてピンクの消しゴムをよく見て、それからピンクの消しゴムを置いた。何となく、美咲の顔が思い浮かんで集中できない。この消しゴムを使ったら明日なんて言われるかわからないから、とりあえず消しゴムは家にあるのを使うことにしよう。

 

 別の消しゴムを用意して、俺はピンクの消しゴムを筆箱にしまった。明日返せばいいや、それだけの話だろう? そうなんだけど、宿題に集中できない。別に美咲のことが気になってるんじゃない。俺は消しゴムがいい匂いなことが気に食わないんだ。

 

 だいたい、消しゴムがいい匂いする必要ってあるか? 消しゴムは消しゴムだろう、匂いとか香りとかいらないじゃん。それで授業中遊んじゃって先生に怒られるくらいなら、全国で匂い付きの消しゴムとか禁止すればいい。消しゴムの色だって、こんなピンクである必要なんかないんだ。全国一律白にしてしまえ。

 

 そうすれば、俺がこんなに消しゴムひとつで悩むこともないんだ!

 

 やっぱり気になって俺はピンクの消しゴムを取り出す。とってもいい香りが辺りに広がった。畜生、桃の香りなんかしやがって。大体美咲がこんな臭い消しゴムを学校に持ってくるのが悪いんじゃないか。そのせいでうちまで桃くさくなったらたまったもんじゃないだろ。消しゴムのカバーもこんなにキラキラして、消しゴムにキラキラとかいらないだろ。どうせ真っ黒になるんだから。

 

 キラキラと言えば、幼稚園の頃の美咲がよくしていた透明で緑色の髪飾り、すごくきれいだったな。二つに結ったおさげの高いところにキラキラがあって、こっちに走ってくると髪の毛と一緒にキラキラ光って、ああキレイだなって思ったんだよな……って、美咲のことを考えている場合じゃない。消しゴムのことだ、いや宿題をやらなきゃ。

 

 ああ、割り算の筆算なんか消えちまえばいいのにな。美咲も幼稚園の頃は可愛かったんだよな。「てっちゃん、いっしょにあそぼう」なんて手を出してきたときは「俺こんなかわいい子と遊んでいいんだ」ってちょっと思ったもんな。

 

 でも今はどうだ? あんなに可愛かったおさげを止めちゃって他の女子みたいに肩くらいに切りそろえて、筆箱ばっかりキラキラさせてるのに服は何だか男っぽくなって自分のこと「僕」とか言ってみたりやたらとテンション低くてイライラしてたり、俺のことガキ扱いしてきたり。なんだ、美咲のこと考えてたらムカついてきたな。あー、女子なんか大嫌いだ! 割り算の筆算より嫌いだ!

 

 そうだ、この消しゴムのカバーの下見てやれ。女子って消しゴムの下に好きな男子の名前書いてたりするんだろう? そんで名前見てやって、明日学校で「お前あんな奴のこと好きなんだろー!」って言ってやろ言ってやろ。そうだ、そうすればいい。

 

 俺は消しゴムのカバーをそっと引っ張った。つるっと中が少しだけ見えた。その瞬間、なんで俺はこんなことやってるんだろうって虚しくなった。別に美咲が誰のことを好きでもいいじゃないか。どうして俺がそんなこと気にする必要あるんだ?

 

 ……そのことについては、考えないことにしようか。

 

 一応、消しゴムのカバーの下は改めた。もちろん、誰の名前も書かれていなかった。それにほっとした俺が一番ガキだなあって、何だかおかしくなってきた。たかが消しゴムひとつで、俺は何をこんなに慌ててるんだろう?

 

 認めっちまえば、楽になれるのにな。

 ああそうだ、そうに違いない。

 畜生、美咲の奴め。

 俺の消しゴム勝手に使ってたら許さないからな。

 

 それから宿題をすぐに終わらせて、俺は小遣いを握りしめて買いものへ向かった。買うのは別の匂いのするかわいい消しゴム。「昨日間違って使っちゃったから新しいのをプレゼントするよ」って、もっといい匂いの消しゴムを渡せば美咲は喜ぶんじゃないだろうか。あいつはきっとバニラとかそういう匂いのほうが似合う気がする。桃の匂いは、ちょっとガキっぽいものな。

 

 そんな俺にぴったりのピンクの消しゴムは、明日まで俺の筆箱にしまっておくことにした。また筆箱を開けたら、いい匂いがするんだろう。ああ、いい匂いの消しゴムも悪いもんじゃないな。俺は普通の白でいいけど。

 

<終>




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