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【あらすじ】
完全犯罪請負人と呼ばれる黒羽烏由宇(くろばうゆう)。ホワイトデーの日に依頼人と会う予定の前に、何者かにビルから突き落とされて、オブジェに串刺しとなって瀕死の重傷を負った。4か月に亘り意識不明の状態が続き、ついにその心拍も途絶えそうになった時、黒羽は幽霊に変貌していた。
事件が起きた当日にあった約束が気になって調べると、その依頼主の夫婦は殺害されていた。娘の三井音葉は両親への復讐を誓うと、面会予定だった黒羽を懸命に捜し、ついに幽霊の黒羽を探り当てた。音葉は幽霊の言葉を聞く特殊能力を持ち、黒羽の明晰な推理を聞くことで黒羽への疑いを解いた上で、両親の犯人を捜して復讐することを依頼する。それは黒羽に瀕死の重傷を負わせた犯人を捜すことにもつながった。
幽霊としてこの世に存在できるのは7日。その間に、姿形が素通りするために犯人を捕まえることができない条件下で、小学校6年生の少女に知識や推理方法を伝授しながらの捜査が始まった。
【感想】
作者の方丈貴恵は2019年に「時空旅行者の砂時計」で鮎川哲也賞を受賞したデビュー作を皮切りに、特殊設定を舞台として華麗なロジックを駆使してきたが、本作品もその流れを汲む。
幽霊が探偵役を務めるのは、山口雅也の傑作「生ける屍の死」を思い出すが、本作品はそれだけでない。まずタイトルからしてジェイムスの傑作「女には向かない職業」へのオマージュが感じられるが、物語の途中で言及される「逆さまの事件」はエラリー・クイーンの「チャイナ橙(オレンジ)の謎」、そしてチョコレートを利用した毒殺はアントニイ・バークリーの「毒入りチョコレート事件」につながっている。ちなみに「毒入りチョコレート事件」は、初めて多重推理をテーマとした古典ミステリーとしても有名。登場人物がそれぞれの推理を披露していくが、この形式で日本でも数多くの名作が発刊されている。
但し本作品では「全てを素通りできるが、移動スピードはママチャリが限界 (^^)」の、幽霊になった黒羽烏由宇と、小学6年生の三井音葉による「バディ」が繰り広げるによる多重推理なのが特殊。お互いが足りないところを補い合って推理を繰り広げて実証を重ねていく過程は1つ1つが論理的だが、余りにも伏線が繊細で緻密なため、正直ついていけない場面もチラホラ。そんな中、黒羽から推理の教えを受けた音葉が成長することで、「多重推理」を披露し合うことになるのは見事。
しかしそんな多重推理も、もう少し絞った方が読むほうには親切かと思った(笑)。これでもか、これでもかと推理を行い、その推理がひっくり返る繰り返し。いくら伏線がたくさんあると言っても、たいていの読者はそこまで拾いきれません。
ネタバレすれすれなので深く説明できないが、音葉の叔母(殺害された母の妹)の登場シーンは余りにも鮮やか。また黒羽の師匠の設定も考え抜かれたもので、黒羽がこのような「職業」を選ぶことになったきっかけを説明しただけでなく、物語全体に厚みを与えてくれた。
そして全体的な雰囲気として、幽霊が登場する割に全体が軽やかなため、かなり緻密な伏線を仕込んだにも関わらず、読みやすかった。最後は黒羽と音葉の将来(?)に幸あれ、と思わずにはいられない。
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*作者・方丈貴恵のデビュー作です。
蛇足だが、各章の最後に挿入される「インタールード」の挿話は効果的。私は読みながら貫井徳郎の「慟哭」を思い出していたが、これもネタバレになるかな?