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【あらすじ】
大学時代の友人の裕哉が所有する別荘に、当時の仲間6人で集まることになった修ーだが、トラブルの予感を感じたため、従兄弟である翻太郎に同行してもらうことにした。そこで裕哉の提案で、スマホの電波も届かない地下にある謎の施設に、面白半分で出かけることになる。
―行は「方舟」と書かれたこの施設に、道に迷った3人家族と共に朝が来るまで過ごすことになる。しかし深夜に地震が発生すると出入り口の扉が大岩がふさがれてしまい、10人全員が閉じ込められてしまう。さらにこの施設は徐々に浸水していて、約7日で完全に水没してしまう事がわかった。
方舟には大岩をどかすことのできる機械が備わっていたが、その装置を動かした人間は、どかした岩に装置の部屋の出入口をふさがれ、施設から出られなくなることがわかった。9人の命を救うためには1人の命が必要になる。誰がこの装置を動かして犠牲になるべきか。
不穏な空気が漂い始めた施設の中で殺人事件が発生する。この状況で誰が、何のために殺人を犯したのか。そして犯人に装置を動かす役割を求めると決めたが、犯人の命と引き換えに生きようとする自分たちは、犯人と同じ殺人を犯しているのではないか、との疑念が湧く。さまざまな思いが交錯する中、タイムリミットだけが刻々と迫っていく。

*何とも特殊な地下の施設「方舟」の断面図(ダ・ヴィンチwebより)
【感想】
鮮やかなどんでん返しで、有栖川有栖を初め新本格派のミステリー作家から賞賛を受けた、前評判の高い作品。前回取り上げた作品の作者の結城真ー郎と同時期に発刊された「尖がった」作品もあり、この年は「ユウキ」の当たり年かと思ったもの(?) それはさておきこちらは「特殊設定」もの。但し巻頭の図解説明で描かれた設定が細かく、それだけでちょっと引いてしまいました。
かいつまむと、タイムリミットがある空間の中で生き残るには1人の犠牲が必要のため、果たして誰が生賛になるのか。そんな状況の中でなぜか発生する殺人事件。読んでいて、生賛が必要なのに死者が出るなんて「もったいない」と思うのは、命を軽んじるミステリー読者の悲しいサガ。そこで殺人事件の犯人が生賛になることで話がまとまり、犯人探しが熱を帯びる。
ひねくれたミステリー読者からすると、殺人事件を犯した犯人が、慈善事業のような生費を素直に受け入れるとはとうてい思えない。そんな危惧を抱きながら読み進めると、探偵役の翻太郎が見事な推理を披露して犯人を指摘する。この点の細かな手掛かりと解明は、還暦過ぎたおじさんにはついていけないが、理屈はわかるので納得しながら読み進めることができた。
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*第二弾も「やってくれました!」
但し、ここから物語は見事に「反転」する。極限状態の中で、やや性格設定が薄い人間たちが演じる人間悲劇。やや「薄い」と思われた登場人物の性格付け、謎や展開、そして真相の暴き方も、すべては最後のために隠し持っていたもの。この反転力は綾辻行人の「十字館の殺人」に匹敵する。
そしてここでタイトルの「方舟」も、最後に再び生きてくる。人間の生と死に対時せざるを得ない設定の中、各人がどのように現実と向き合うのか、それとも逃れようとするのか。果たして方舟は「ノアの方舟」と同じく、残された生物を未来に誘う建物なのか、それとも人間の「業」をあぶり出す「装置」なのか。
蛇足ですが私は閉所恐怖症で、登場人物が地下に閉じ込められる、圧迫感のある設定は苦手です。以前洞窟の中での出来事を描いた江戸川乱歩賞作品「カタコンべ」で経験した圧迫感を思い出しました。
*江戸川乱歩賞作品と言うことで読みましたが、途中で呼吸困難になりました。