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13 此の世の果ての殺人 荒木 あかね(2022)

【あらすじ】

 3か月後の2023 年3 月7 日に、小惑星熊本県阿蘇郡に衝突し人類は滅亡すると予測された。日本にいる限り生存の可能性はなく、運よく助かってもその後地球は粉塵により極寒の超氷河期に入り、生き残ることはできない。世界は日本を中心に混乱を極めた。

 ゴーストタウンと化した福岡県太宰府市で、23 歳のハル(小春)は実家近くの自動車学校に通っていた。唯一の生徒となった小春に付き合っているのが教官のイサガワ先生。

 しかし教習車のトランクから女性の刺殺体を見つけてしまった。元警察官のイサガワ先生は、機能不全に陥っている警察に代わり、犯人探しを買って出る。教習車の助手席にハルを乗せて。ハルは教官で元刑事のイサガワ先生とともに、地球最後の崩壊寸前の社会での謎解きを始めていくと、そこには少年たちのいじめ問題が含む連続殺人へと発展していく。

 ハルとイサガワが知り合った仲間と行動をともにし、事件の真相に迫っていく。

 なぜ、滅亡する世界で殺人が起こったのか?

 なぜ、小春とイサガワは滅亡すると分かっていながら、殺人事件を追うのか?

 

*第二弾も登場人物の心理描写が冴えて、「Z世代のアガサ・クリスティ」の称号を得ました。

 

【感想】

 第68 回江戸川乱歩賞受賞作で、特殊設定物が続く。人類滅亡を目の前に控え、自動車教習所に通うシュールな設定に、心が鷲掴みされる。こんな設定のきっかけを、作者はこう語っている。

 

「私は運動神経がにぶいので運転も得意ではなくて、通うのがつらくなってしまったんです。その気分を切り替えるために“もしもこの自動車学校を舞台にしたミステリーを書くとしたら、どんな話になるだろう?”と想像するようになったんですね。(中略)

 警察の機能が停止している状態であれば可能なんじゃないかという発想から、人類を滅亡させることにしました(笑)」

 

 多くの人びとが、少しでも生存の可能性を高めようと日本を去る。そして残された人びとは、絶望から死を選ぶ。ハルの家族も、母は何も告げずにひとりで逃げ、捨てられた父は自殺を選択し、引きこもりの弟の成吾は部屋から出てこようとしない。

 そんな中淡々を自動車学校に通うハル。社会人1年目で職場は馴染めず、疎外感を覚えている引っ込み思案の性格だが、それでも生きていく支えとして免許の取得を目指す。そしてイサガワ先生も、当たり前のように教官としてハルに指導する。

 最初はコロナ以降に大流行(?)した「特殊設定物」と思ったが、読み進めるとそうではない。極限の世界の中でも自分のリズムを失わずに生き続ける人たち。そしてそんなハルとイサガワ先生のコンビに、同じく医師としての務めを最後まで果たそうとする伴田や、残された人々を組織としてまとまろうとする槍山などが交錯する。中でも両足がなく車椅子を使う暁人と、喧嘩っ早いけど根は良い奴の光。この辺は村上春樹著「海辺のカフカ」に登場するホシノさんを思い出す。

 

*シュールな設定の中で登場する善人を読んで、こちらの作品を思い浮かべました

 

 そんな人物設定が終盤に向けて徐々に収敏されていく。特に主人公のハルの冷めたキャラクターが、殺人事件を解明する動機につなげた構成は見事としかいいようがない。そしてラストシーンはこの作品だからこそ生まれたもの。最初はどうかな、と思いながら読み始めましたが、脱帽です。

 しかし「なぜ、滅亡する世界で殺人が起こったのか?」の動機は、確かにこの設定ならばうなずけるものはあるが、やや残念。

 (でも年の瀬には、雰囲気が合いそうな作品です)

 




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