- 価格: 750 円
- 楽天で詳細を見る
【あらすじ】
弁護士の剣持麗子は、所属する法律事務所からボーナスが減給された。仕事の成果は高く評価されていたものの、減給の理由がチームプレイができないことと知ると、激怒して事務所を辞めてしまう。
直後に麗子は1通のメールを受け取る。差出人は元彼の森川栄治、そこには栄治が亡くなり葬儀が終わったことが記されていた。驚いた麗子は大学時代の仲間の篠田に連絡を取ると、栄治は自分を殺した犯人に約60億円を譲るという、不思議な遺言状を残していた。
篠田は、栄治の死は自分のインフルエンザが感染したことが原因と説明した。麗子は金目当てかと疑うも、篠田の代理人として「犯人選考会」に参加、親族などによる「一次選考会」は見事に突破した。歴代の元力ノに別荘を分配する手続きをするために軽井沢に向かいが、そこで栄治の顧問弁護士だった村上が殺害され、遺言状や元力ノリストが盗まれる事件が発生した。
果たして犯人はだれか。そして不思議な遺言状を残した真意は何か。
【感想】
若手弁護士の手からなる小説が前回から続く。こちらはタイトルからしてキャッチーで、提示される謎も「食いつきやすい」テーマ。
若く(そしておそらく美貌の)女性弁護士が主人公。但し能力は優れているがチームワークが苦手という、ちょっとポンコツ感(?)も併せ持つキャラ設定。ミステリー業界では女性刑事にこのような性格設定が多く、おなじみのキャラクターとも言える。そんな主人公が一人称で語りかける形で、物語が進行する。

*2022年にフジテレビでドラマ化されました。「美貌でちょっとポンコツ感」を演じるならば、綾瀬はるかさんの右に出る女優さんはいませんね (^^)
ストーリーは、60億の遺産を自分を殺した犯人に与えるという不思議な遺言から始まる。ー生懸命自分を犯人に仕立てる作品は、アントニイ・バークリー著「試行錯誤(Trial and Error)」を思い出す。そして両作品ともにテーマは殺人事件だが、ユーモアが漂うところが共通する。
最初の「容疑者」は、死因はインフルエンザを感染させたためと、罪悪感が乏しい設定。そのため麗子さんも力強く弁護し、見事なプレゼンテーションで犯人選考会の「第ー次予選」を見事突破。しかしこのままでは終わるわけなく、事件は複雑な様相を呈していく。
この後事件の真相は、新薬製造にかかる副作用へと疑惑が広がり、そこからさらに2転3転。但し最初に提示された設定が見事なだけに、その後の展開は物足りなさが残る。動機、犯人、そして莫大な遺産の行方と、一応はうまくまとめたけど、ミステリーとしてはちょっと尻つぼみ的な印象を受ける。
それを踏まえた上で、本作品は各登場人物のキャラクターがキモとなっている。特に主人公の剣持麗子が作品中を疾走し、そして予定調和的な結末を迎えるのは、微笑ましい限り。やっぱり内容と人物設定がうまくマッチすることが、作品が成功する大きな要因と感じる。
そして作者の新川帆立さん本人も、主人公に負けていないキャラ。元々作家を目指すも、まずは国家資格を得て収入を安定させることが先決と考えて、東大理科三類を受験して医者を目指すも不合格。但し後期試験で同大の文科ー類に合格すると進路を弁護士に方針変更し、法科大学院へと進んで司法試験にー発合格する。更には司法修習中に日本プ口麻雀協会のプロテストを受けると首席で合格するという、かなりハジけたエピソードを持つ。その後大手法律事務所に入所するも過酷な労働時間に嫌気をさして、企業内弁護士に転向して作家活動をスタート。そして29 歳で「このミステリーがすごい!」大賞を本作品で受賞した。

凡人から見ると、なんともエキサイティングな人生。才能の一部でもいいから、分けてもらいたいものです。