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6 法廷遊戯 五十嵐 律人(2020)

【あらすじ】

 久我清義(きよよし)織本美鈴は同じ児童養護施設出身者で、法律家を目指すためにロースクールに通っているが、そこでは「無辜(むこ)ゲーム」が時折開催される。それは学生の誰かが自分の保護法益を侵害されたときに、自分が被害者かつ検察官の役割を担い、犯人を指名してかつその悪事を証明する。十分な立証ができたかどうかは、ロースクールの中で一番の秀才である結城馨審判者として判断する。

 

 そこに清義が被害者兼検察官として告訴した。罪名は名誉棄損。16歳の頃、児童養護施設の施設長をナイフで刺した事件を暴露されたこと。清義は犯人と指名した同級生に尋ねるが、犯行に用いられた児童養護施設での集合写真、そして傷害事件を封じる新聞記事、それらをどうやって手に入れたのか、と。

 

 清義は無辜ゲームに勝利し、目的の司法試験にも合格した。約1年後、司法修習を終えた清義のもとに、結城馨から「久しぶりに、無辜ゲームを開催しよう」と、一通のメールが届く。清義は母校に戻り模擬法廷の会場に赴くと、そこには胸元にナイフが刺さった結城馨と、血まみれになったナイフを持つ織本美鈴の姿があった。

 

【感想】

 メフィスト賞受賞作品らしく(?)、専門知識を駆使した「尖った」作品。本作品のテーマとして底流に流れる「無辜(=罪のないこと、またその人)ゲーム」の言葉からしても、普段は目にしない。本文中に無罪と冤罪の定義について論じるところもあり、単なる法律上の知識だけでなく「法哲学」の領域まで話を広げている。小説の後半では「同罪報復(目には目を)」の論理も重要な柱となっていく。

 途中挿入されるエピソードもそれぞれ興味深い。痴漢被害をビジネスにする(元)女子高生。お墓から添え物を盗む泥棒。織本美鈴にストーカーまがいでつきまとう「なんでも屋」。作者の本業は弁護士でもあり、自分だけでなく同業者の間で漏れ聞こえる「あるある」話を参考にして、ネタとして昇華させた印象を受けるとともに、伏線としても機能していてその展開は見事。ただし……

 

*こちらは映画化されました。主役の永瀬廉と、杉咲花北村匠海(公式HPから)

 

 前半はロースクールや無辜ゲーム、そして日常の犯罪エピソードをちりばめながらも、ラストに殺人事件を提示してから、物語は収斂されていく。しかし厳しい言い方だが、物語が収斂されていくほど、小説としての面白みは失っていく印象を受ける。

 なぜ主要人物を法曹界に置いたのか。主人公の清義が法曹界を目指す動機について触れられてはいるが、その動機とその後の言動が、私の中ではどうしてもつながらなかった。

 主要登場人物の3人とも、ロースクールではとびぬけた秀才とされている。それだけの才能がありながら、内2人は授業料を稼ぐために犯罪まがいに手を染めるだけでなく、過去に犯した「事件」に関わっている。ならば本来は法曹界からは離れた、もっと即物的に報酬を得ることができる、別の職業を選択すべきだったのではないか。

 真犯人の動機も正直「まどろっこしい」。復讐することに、これだけあれこれと考えた挙句に、結局自縄自縛させてしまっている。復讐ならばもっと素直(?)に、直截的な行動に打って出るのが本来の姿。リーガル・ミステリーなのでやむを得ないが、法律に依拠しすぎたために犯人も被害者も、感情や動機よりも法律を優先してしまい、ストーリーが損ねてしまった感が否めない。

 

 そんな感想を抱くのも、主人公の過去から小説「永遠の仔」を思い浮かべながら読み進めた、私自身のせいだろう。

 




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