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3 たかが殺人じゃないか 辻 真先(2020)

 

【あらすじ】

 昭和24年、旧制高校を修了したはずの「カツ丼」こと風早勝利は、新制の学校改革によって残り1年を新制の東名学園で過ごすことになった。同級生には女子生徒も加わって、好奇心旺盛な学園生活となる。ミステリー作家を目指し推理小説研究会に所属する一方、戦後に隆盛した映画への興味もつきない。そんな中顧問の勧めで勝利たち推理小説研究会は、映画研究会と合同で一泊旅行を計画する。顧問と男女生徒五名で湯谷温泉へ、修学旅行代わりの小旅行を行なうことになった。

 

 そこで密室殺人事件が、さらにキティ台風が襲来する中で首切り殺人事件が起きる。そんな中で同行した咲原鏡子には秘密を抱えていて、大人たちが彼女に接する態度には、なんだか含みがあった。

 

 

【あらすじ】

 本作品を述べるには、まず作者の辻真先について触れなくてはならない。

 1933年生れで発刊当時は88歳。NHKに入社して黎明期のテレビ制作に関わったあと、退職してやはりアニメ業界で「鉄腕アトム」を皮切りに、大げさではなく黎明期におけるほぼ全てのアニメ作品に関わった「レジェンド」。21世紀になっても「ルパン三世」や「名探偵コナン」の脚本をこなした。速筆でも有名で、1話の脚本をおよそ15分で書き上げた逸話を持つ。

 そして1972年に「読者が犯人」を謳った「仮題・中学殺人事件」で作家デビューする。続篇「盗作・高校殺人事件」は、作者が犯人で被害者で探偵という一人4役という離れ業を披露した。「改訂・受験殺人事件」と合わせて青春三部作と言われている(私は50年ほど前に読んだが、内容はあらかた忘れてしまった)。

 

*「中学・高校・受験」の3作をまとめた「合本・青春殺人事件」

 

 そんな作者の体験に基づいたと思われる本作品は、戦後混乱期の名古屋の状況を背景に、ミステリー事情や映画のトレビアなどが溢れている。主人公の「カツ丼」(名古屋で初めてカツ丼を出した料亭の子、の設定)は、ミステリー作家を目指して創作活動も行なう、まさに作者を投影した設定になっている。

 そんな中で「密室」と「バラバラ死体」という2つの殺人事件が起きる。まず密室は、地下はコンクリートの基礎で固められ、屋根板はスライドすることは可能だが、家の外側からしか動かせない。バラバラ死体は、各登場人物の行動を振り返ってみると、アリバイのない時間はいずれも5分や10分程度のため、遺体を解体する時間は誰にもない状態。

 トリックにこだわる作者であり、「初めにトリックありき」の印象。密室もバラバラ殺人も余り必然性は感じられず、過去に使われたトリックが透けて見え、昭和24年が舞台のため、建物も道具も現在ほど密室に恵まれていないため(?)、設定に工夫を凝らしている。

 

 但し事件の真相に至ると、それまでに文中を飾っていた「トリビア」が徐々に収斂されていく。登場人物の設定や動機などが、「昭和24年」でしか成立しない形となるばかりでなく、合わせて時代が流れても変わらない「ほろ苦い青春」も描いている。およそ50年前に発刊された、ライトノベルのような青春三部作と似て異なり、人物の背景に深みを与えている。これは実際にこの時代をこの年代で体験した作者でなければ著すことができない作品だと、読みながら唸った。

 そして最後に作者は「叙述トリック(ギリギリでネタバレではないと思う)」を披露してこの作品をまとめた。それは生きる上で様々な事情を抱える人の物語に、作者らしく最後に暗い雰囲気を一掃させてくれるもの。2020年に「このミステリーがすごい」を受賞したのも、未読時は偉大な先人への忖度かと邪推したが、これならば納得。ほろ苦くも未来を感じる青春ミステリーは、88歳でも健在どころか、更なる進化を遂げていた。

 

 戦争シーンはないが、作者本人は「反戦ではなく厭戦」と語っている。タイトルの回収も見事だが、私はチャップリンの映画「殺人狂時代」を思い出した。

 

 

*「ひとり殺せば悪党だが、100万人だと英雄になる」 by Charies Chaplin

 

 




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