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20-1 ワイルド・スワン ① ユン・チアン(1993)

【あらすじ】

 著者の祖先は漢民族だが、万里の長城を越えて後に満州の要地、錦州に程近い義県という町で暮した。1909年に生まれた祖母の玉芳は容姿が恵まれたため、曾祖父は金持ちの妾にする狙いを定める。すると北京北洋軍閥の警視総監を務める将軍の目に留まり、15歳で将軍の妾となる。

 

 祖母は娘の宝琴を産むが、正妻が仕切る家での生活は自由が利かず息苦しいものだった。将軍が病に倒れると家を出て実家に戻ったが、曾祖父は将軍の伝手で警察の副署長となり、嫁に出した礼金で妾を囲い、好き勝手な暮らしをしていた。代わりに娘の面倒を看てくれたのは、同じ町で漢方医として評判の夏先生だった。66歳の夏先生は24歳の祖母の美貌に一目惚れし、結婚を申し込む。夏先生の子供たちは猛反対するが、夏先生の意思は揺るがなかった。1935年、夏先生は財産を全て子供たちに与えると、自分は祖母と母と連れて、大都市の錦州に行って新たな生活をすることになった。

 

 錦州は1932年に日本が張学良から奪って占領していた。凍えるように寒く、食料は日本軍に優先的に配給されて貧しい生活を強いられた。それでも祖母は夏先生夏徳鴻と名乗ることになった娘と一緒に暮し、近所の友達にも恵まれて、幸せを感じることができた。しかし母の夏徳鴻は学校に通うようになると、日本人からの差別に直面する。

 

 戦争で日本が降伏し、1週間後にロシア赤軍が占領して略奪を繰り返す。3ヶ月後にはロシアが退いて中国共産党が支配するが、毛沢東は農村から都市部を攻めるために一時期退き、その隙に国民党が支配する目まぐるしい展開となった。しかし国民党の上層部は腐敗していた。

 

 母は国民党に幻滅し、対抗する勢力の共産党に入党し活動分子となる。国民党から囚われて監禁されるも、母はくじけなかった。一時は中国全土を支配していた国民党は劣勢となり、重要拠点の錦州も共産党に包囲されて激しい攻防戦が始まる。母も弾薬庫に起爆装置を持ち込む任務を遂行した。

 

   

 *著者のユン・チアン。容貌に恵まれた祖母の血筋を感じます。

 

 共産党は錦州を占拠することに成功したが、その中に張守愚がいた。中国南西部に生まれた張は、国民党に迫害されて共産党に入党し、幹部に昇格していた。張は錦州で中国共産党の講義を行なうと、母はすっかり張のファンとなり、結婚を決意する。しかし家族の同意を得ない結婚に祖母と夏先生は混乱し、革命よりも恋愛を優先させたとして、周囲からは自己批判を求められた。

 

 母は錦州での生活に耐えられなくなった。結婚して2ヶ月足らずで父の故郷、四川省に転勤を求めて受理される。父は党の立場から車に乗ることが許される中、母は重い荷物を背負って1日何十キロも道なき道を歩くことを強いられる。途中妊娠していることに気づかず流産して命の危険に晒されながらも2000キロを超える旅を終えて、つい2ヶ月ほど前まで国民党の拠点だった四川省に辿り着いた。

 

 

【感想】

 中国は清の国が滅亡すると列強が蹂躙し、中国国民党軍閥日本陸軍、そして中国共産党が争いを繰り返す。その犠牲が全て人民に押しつけられた時代に生きた、女性3代の物語。

 本を読み進めると、1970年代にアメリカでベストセラーになったアレックス・ヘイリーの「ルーツ」を思い出した。ルーツはアフリカ系黒人人種が虐げられたが、本作品でまず犠牲になる人種は「女性」である。

満州の「街並み」を描いた小説は、直木賞を受賞しました。

 

 清国時代では当たり前だった、纏足(てんそく)の描写が衝撃的だった。か弱い女性を見せるために、幼い時から甲の骨を砕いて、がんじがらめにして成長を止めて、筆舌にし難い痛みにひたすら耐えるのが一般的な女性の風習というのだから恐ろしい。男子の宦官の制度もそうだが、身体に手を加えるのが最大の親不孝と言われた儒教国で、このような風習が古くから行なわれているのは不思議である。

 「満州国」における日本軍の支配も目を背けてしまう描写が続く。中国人は日本人には全てにお辞儀をしなければならず、また時に理由もなく殴られる。日本の軍人が人を切り捨て、罪人が犬に食い殺される映像を見せられ、恐怖を植え付ける。徒競走で日本人に勝った中国人の娘は、殴りつけられて放校処分に課せられた。そして中国人は鉱山で死ぬまで過酷な労働を課せられる。

 戦国時代で奴隷にした敵国の敗残兵や、江戸時代の身分制度の厳しい社会に通じる仕打ちが、20世紀になっても行なわれていた。「王道楽土」と関東軍が読んだ満州国が、いかに中国人の民を欧米列強から解放するとの美辞麗句を連ねても言葉だけで、「植民地」であることは隠しようがない。

 

 日本が敗戦を迎えたあと、短期間の間にロシアが、そして国民党の支配が続き、錦州は略奪にさらされる。羽振りのいい商売は、女性を売春宿や金持ちの奴隷兼女中に売りとばす仲介業のみ。路傍に立つ女の子の後ろ襟に指された棒に「十歳女児、十公斤大米(米十キロで、娘売ります)と書いてあったという。

 祖母を軍閥に売った曾祖父は、国民党に捕まり監獄に入れられる。釈放されてもお金もなく、子供たちからは見捨てられて、棺桶もなくトランクケースに入れられて葬式もなしに埋葬された。支配者が激しく変わる錦州の町で、祖母と母は頭上に吹き止まない嵐に耐えながら、生活していく。そしてようやく見つけた希望の光が共産党だった。

 

 著者の父と母は「長征」で父の故郷へ赴く。錦を飾るはずの故郷では共産党によって、男女に関係なく、想像を絶する過酷な運命が待ち受けていた。だいぶ省略して書いた【あらすじ】も、ここまでは全体の1/4にすぎず、著者はまだ登場してない。

 

 

*母の夏徳鴻が、身重の身ながら歩いた2000キロの位置

 

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