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【あらすじ】
後漢王朝の悪政によって庶民が苦しむ中、張角が宗教団体を母体に起こした「黄巾の乱」を契機として、中国全土は混乱の渦にに巻き込まれる。都では董卓が最後の皇帝となる献帝を擁立して実権を握ると、暴虐の限りを尽くす。それを見た袁紹や曹操は、洛陽を脱出し反董卓の同盟軍を集めて戦いを挑む。董卓は絶世の美女・貂蝉を奪い合った義理の息子の呂布によって殺害された。
混迷の中台頭したのが、北部で勢力を拡大した曹操。自ら兵法書を著し、詩人としても優れ、有能な人材を見極める万能の人物。克州の長官に就任すると百万の黄巾賊を破り、その兵力を従えて自らの基盤を築き上げた。
景帝の末商とされた劉備は、関羽・張飛という豪傑と「桃園の誓い」と呼ばれる兄弟の契りを結んで、流浪しながら世に出る機会をうかがっていた。劉備は少ない軍勢を率いて陶謙の配下となり、陶謙が病死すると徐州を支配する。しかし曹操との戦いに敗れ、身を寄せてきた呂布にも裏切られてしまい、ようやく手に入れた拠点を失ってしまう。
漢王朝最後の皇帝になる献帝が曹操に庇護を求めると、曹操は司空の地位に就き自らの正統性を天下に示した。対して衰術が皇帝を自称するも、曹操が戦いで破りのちに病死、続けて呂布も処刑された。衰術の配下だった孫堅は江南の戦いで戦死し、その息子・孫策も刺客の手にかかり暗殺される不幸が重なり、弟の孫権が孫家を継いだ。
*曹操孟徳(歴史人HP)
天下の覇権をかけ、曹操と漢の名門・衰紹が黄河を挟んで官渡の戦いが勃発する。最初は衰紹が優勢に進めていたが、曹操の奇襲によって衰紹の軍勢が総崩れとなり敗走し、衰紹はその後失意の内に病死する。この戦いで勝利した曹操は、天下を制するまであと一歩に迫った。
衰紹の配下だった劉備は、官渡の戦いの前に荊州の劉表の庇護を求めた。江南の孫権は家臣たちをまとめ上げ、国の地盤を固めて次なる戦いに備える。華北の平定を成し遂げた曹操は、荊州の劉表を呑み込む勢いで大軍を南に進めると、劉表は病死し、跡を継いだ劉綜は早々に降伏してしまう。
劉備は身の危険を感じて荊州を脱出し夏ロへ逃れると、この地で孫権の配下・魯粛に出会う。劉備は呉と同盟を組んで曹操と対抗するために、諸葛孔明を江南へ派遣した。曹操は孫権に対し降伏を促す書状を送り、家臣の大半が降伏に賛同する中、魯粛と周楡らは強固に反対する。使者の孔明か開戦論を説くと孫権の心も動き、曹操との戦いを決意した。
こうして英雄たちは「赤壁の戦い」へと導かれていく。
【感想】
三国志を題材とした「作品」は小説に限らずゲームやマンガ、映像など限りなくあり、私の知識は恥ずかしい限り。その中で教科書のような存在の「吉川三国志」を取り上げます。
三国志には「正史」と「演義」があります。「正史」は三国鼎立状態を(西)晋が統一した280年頃に陳寿が「魏志」「呉志」「蜀志」と三国の記録をまとめた「ノンフィクション」。「魏志」の中に邪馬台国を記述した「魏志倭人伝」が含まれていることで、(お堅い) イメージが湧くと思います。晋は魏から生まれた国のため、魏(曹操)が中心と言われ、読者層は知識人に限られました。
その後無名ながら王に出世した劉備を主人公とした「講談」が、庶民の娯楽として広まります。講談師たちは独自にキャラを立てて話を盛って、劉備に対する悪役として曹操を配置するとウケが良いことで、どんどんと「正史」から離れていきます。こうして全国に流布した講談の数々が、陳寿からおよそ1000年後に「三国志演義」としてまとめられました。これが中国でも日本でも爆発的な人気を得ます。「吉川三国志」は演義に準拠した物語の完成版というべき存在になっています。
陳舜臣の「私本三国志」は正史に光を当て、一般に流布している演義版とは別の物語として提示しました。
宮城谷昌光の「三国志」は演義から更に離れた上級者用。蔡倫の時代までさかのぼり、後漢時代の権力構造や社会風俗をきっちりと考証した小説です。
対して北方謙三の「三国志」は演義に基づきながらも、作者の感性から登場人物を独自に練り直して、新たな「北方ワールド」を作りあげました。
物語の前半は、後漢が終焉を迎え董卓や呂布など「暴君」が暴れまくる中で、曹操が台頭していきます。知恵と武略と胆力を併せ持つ「治世の能臣、乱世の奸雄(かんゆう)」は、才知を駆使して群雄から一頭地抜け出します。
しかし三国志は、多くの人間に降りかかる運命の非条理を描く物語。力のある人間が天下を統べることができず、才能ある人物が実力通りに活躍できるわけでもありません。その中で小さな邑に生まれた劉備がやがて天下の風雲に乗り、英雄曹操と対峙するまでに成長していきます。
「劉」の姓を持ち、字(あざな)に「徳」を有する男は、前漢の高祖劉邦や後漢の光武帝劉秀と同じように、友に恵まれ人が集まり、天下統一目前の曹操に一矢を報い、「天下三分の計」を計ります。「義」の関羽、「力」の張飛、「智」の諸葛孔明に加え、抜群の安定感を誇る趙雲など有能な家臣たちに支えられます。
文武に秀で、かつ胆力も有する曹操にも、夏侯惇(私は夏侯家の家臣たちを見ると、家康の側近の大久保一族を思い起こします)ら、身を粉にする忠実な家臣が側に仕え、天下統一に邁進します。
そして孫権は、「身を低くし辱を忍び、才能ある者に仕事を任せ綿密に計略を練るなど、越王勾践と同様の非凡さを備えた、万人に優れ傑出した英雄」(陳寿)として、赤壁の戦いにおける周瑜や呂蒙、そして諸葛孔明の兄諸葛瑾(きん)などの人材が衛星のように取り巻き、天下に臨みます。
これら英雄たちが、時に正面から戦い、時に奸計を巡らし、時に「運」に翻弄されながら、壮大な物語を展開していきます。
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