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【あらすじ】
辺境に位置する秦国の更に西域に生を受けた白氏。祖父は楚との戦いで対峙した楚側の武将、呉起の強さに畏敬を抱き、孫に白起と名付けた。ところが呉起は寵愛を受けた王が没すると同時に殺害され、秦を強国に押し上げた商鞅も王が亡くなると、車裂きの刑に処せられた。
商鞅のあと登用された、縦横家と呼ばれた魏出身の張儀は、屈辱を受けた楚への復讐を求めて強硬な外交政策を進める。貧しい白起は生活のために軍隊に入り鍛練を重ねていくと、皇后の弟で軍を支配する義冄の目に留まる。義冄は張儀と違い武力を信奉し、その下で白起は部隊長から将へと出世していった。
張儀は不仲の武王が即位すると、秦を離れ魏の宰相へと移り、後の座を魏冄が襲った。白起は将軍となり、敵を殲滅させる戦果を挙げて周辺から恐れられていく。伊蕨の戦いでは楚と友誼を取り戻し、趙と連携する韓と魏を攻撃して、24万人の兵を斬首する戦果を挙げた。
秦と友誼を結んだ楚の頃襄王(けいじょうおう)は父の懐王が秦で客死した恨みを抱いていた。秦を倒して覇王になる野望を秘めるも、内治には向かず国民の心は離反していた。楚への攻撃を任された白起は、鄢・郢(えん・えい)の戦いで、蓄えた水を放流して城中の軍民合わせて数十万人を溺死に追い込んだ。白起は罪人を使って荒れた地の開拓をさせて復興に尽力するが、楚の政治家で詩人でもある屈原は楚の将来に絶望し、石を抱いて入水自殺する。
華陽の戦いでは趙と魏が韓に攻め入った。韓は秦に救援を求め、白起は一日に100里の行軍で急襲する。隙を突かれた趙・魏軍は大敗し、13万人が斬首された。しかし魏に復讐心を燃やす范雎が昭嚢王に取り入ると、領土が奪える魏・韓を攻める遠交近攻策を進言すると共に、魏冄を始めとして王の側近を排除させる。白起はまず「近攻」の韓の脛城を攻め、5万人を斬首した。
*白起(ウィキペディア)
韓そして魏と攻め、白起はその奥にある趙と対決する。長平の戦いでは若い趙括率いる趙軍を翻弄し、兵糧攻めに追い込んで大勝する。白起は捕虜の兵糧が賄えず、少年兵240人を除く40万人余りに及ぶ兵を生き埋めにした。この報に接した范雎は大勝した白起を警戒し、趙の首都の邯鄲を包囲する白起と武将を交代し、わずかな条件で趙と和議を結んだ。
新たな将軍の力量は白起と比べて遥かに劣り、趙の平原君の援軍として現れた魏の信陵君・楚の春申君の連合軍に大敗北を喫する。秦は慌てて白起に出兵を命じるが、白起は范雎の一連の行動に不信感を抱き、病と称して出仕を拒んだ。
しかし昭襄王は白起の我儘を許さず、白起に賜死を求める。白起は自問する。「我は固より死ぬべきだ。良平の戦いにおいて降伏兵数十万余りを一夜で生き埋めにした。それでも罪にならないのか。天に対し罪を犯したのだ」と嘆息して、自らの首を刎ねた。
【感想】
中国の春秋戦国時代において、戦闘力はMAXと思われる秦の武将、白起。当時は辺境と言われた秦国の更に西方に生れ、貧しい家庭から入隊して出世していく姿は、幕末薩摩の「人斬り半次郎(桐野利秋)」を連想する。
あらすじでその戦いを羅列するように記したが、白起が率いる戦いは敵の全てをなぎ倒すような圧倒的な勝利を続け、対して敵の被害は尋常でない。更にその後の「仕打ち」が凄まじく、白起と対時するだけで腰が引けてしまう状態に陥る。
しかし塚本靑史は、本作品を戦場での駆け引きや戦術に焦点を当てず、戦国時代末期の各地の情勢を国王、宰相、そして「蘇秦三兄弟」を代表とする縦横家を描くことで、秦が台頭していく様子を描いている。春秋戦国時代が長く続くと諸国の王は権威や形式にこだわり、国を統治する能力が欠落していった。
そんな中、宰相が各国から乞われ、孟嘗君や張儀のように複数の国の宰相を経験する現象も生まれる。本当に必要な人材ならば、国の外からも招聘することで、時に失敗するが時に国力を増強することに成功する。その代表が秦。
秦は徐々に勢力を拡大して、諸国が秦に対抗する「合従」と秦を取り込んで友誼を結ぷ「連衡」を問う縦横家が動き回り、その周りを戦国四君と呼ばれた斉の孟嘗君、趙の平原君、魏の信陵君、楚の春申君が秦に対抗すべく、合従の鼎として画策する。しかし一世代早い孟嘗君はまだ秦に対抗する余地があったが、残りの三君は白起が退いた後に微かな一矢を報いたに過ぎず、秦国の拡大を止めることはできなかった。
そんな時代に弁舌や遊説、そして侠客の数を争いその立場を固めようとする動きには背を向けて、最後まで「力」を信奉した白起。本来ならば自らが国王になる力量もあったかもしれないが、政治的な動きをせず、巨大な功績の報償として与えられたのが「賜死」だった。
春秋時代はまだ人の「華」を素直に称賛する心があったが、戦国も末期になると、強いだけでは周囲のやっかみによって排されてしまう。それは同じく武将として戦闘力が高かった楽毅も、同じ運命を辿っている。
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