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18 青雲はるかに (秦:范雎) (?-BC 255)(1997)

【あらすじ】

 范雎(はんしょ)は晋の名宰相の士会を先祖に持つが、家は貧しく官途は閉ざされていた。そこで楽毅に攻め込まれている斉に行って、活躍の場を求めようとするが、斉に居場所はなく魏に向かう。そこで吟尼に会い、そこから原声という美女とめぐり合う。

 

 生涯の友と定めた鄭安平の妹の薬代を稼ぐために、范雎は魏の須賈(しゅか)の家臣となって斉へ向かった。斉では襄王との面談で「法は元々斉で確立したが、商鞅が法を守る法を作って秦に持ち込んだ」と説いて認められ、仕官を誘われた。まずは魏に戻ってからと考えた范雎だが、須賈は襄王から范雎に褒美が下されたことを不審に思い、宰相の魏斉に范雎が機密を漏洩したと讒言する。怒った魏斉は范雎を半死半生にして厠の中に放り込ませた。助けられた家臣から、原声が魏斉の妾になったことを知る。范雎は魏斉を殺すまでは死なぬ、と誓う。

 

 秦が瞬く間に魏へと侵攻する。率いた秦の宰相魏冄(ぎぜん)と魏斉の会談で、魏は温の地の割譲を認めた。一方で范雎は、魏斉の妾として失意の日々を送る原声と再会する。秦は再度魏に侵攻し、秦の猛将・白起は、魏と趙の軍をわずか8日で撃破する大勝利を収め、魏は重ねての領土の割譲を余儀なくされた。

 

 魏冄が実権を握ることに面白くない秦の昭襄王。腹心の王稽は范雎と出会い、秦へ招聘した。范雎は昭襄王に、王の周囲にいる太后や魏冄を追い落とす献策を語る。王は讒言ではなく国を思ってのことだと理解して、仕官を認めた。

 

 范雎は更に「遠交近攻」を主張した。占領できない遠方の地を獲得しても意味がない。昭襄王は趙を攻めたが大敗北を喫し、ようやく范雎の意見を認めた。范雎の戦略は、秦は斉・楚と結び、三晋(韓・魏・趙)を滅ぼす。魏冄の戦い方は、勝っても領地の維持はできず、国力が下がる一方だと。秦の中華統一は、苑碓の頭脳によって端緒についた。

 

  *范雎

 

 翌年昭襄王は范雎を宰相とした。范雎は魏の魏斉に対して容赦せず、魏斉の首を持って来なかったら、魏の首邑を全滅させると警告を鳴らす。対して魏斉は妾の原声を盾にして、趙の平原君のところに逃げ込んだ。それを見て苑碓は、友の鄭安平を将軍に任用して、後日の攻勢に備えた。

 

 范雎は猛将白起を起用して韓を攻める。白起の攻撃は、天下の城を全て落ちる思わせるほど凄まじかった。韓は上党を秦に割議する意向を示すも、当の上党が秦に降ることをよしとせず、趙へ身売りした。これによって秦と趙が全面対決する「長平の戦い」につながってゆく。

 

 この戦で大敗を喫した趙に対し、白起は趙の青年男子の全てと言われる、40万もの捕虜を穴に埋めて命を奪う。そして程なくして魏斉が自頸した。范雎は魏斉の首を前にして、一賎臣が一国の宰相に対して、完璧ともいえる復讐をやり遂げたことをかみしめる。

 

 

 

 

 

*「秦国のターミネーター」と私が密かに思う、白起将軍(ウィキペディア

 

【感想】

 孟嘗君の時代に現れた縦横家張儀は若い頃屈辱に会い、秦の宰相となってから復讐を遂げた。本作品のあらすじを読んで范雎張儀を取り間違えたが、時代が少しだけ下っている。そして屈辱を受けた相手は、張儀范雎と異なる。

 張儀縦横家、つまるところ「舌先三寸」で相手を丸め込む自信家であるが、対して范雎は権力の行使による復讐劇は権力を介して行うべきとして、その結果は「清冽」だとしている。そのためにも妻となる原声だけでなく、范雎を愛する美女、南芷(なんし)という魅力的な女性を取り混ぜて、范雎ともに数奇な半生を描くことに注力している。

 しかし素直には頷けない。「重耳」も「湖底の城 呉越春秋」の伍子胥もそうだが、国の王なり宰相なりが個人の感情で戦うことで、無関係な多くの兵士を巻き込むことを「清冽」と呼ぶのは、21世紀を生きる者として抵抗を感じる。感情と政道は分けることこそ、覇道でなく王道ではないか。

 但し当時は諸子百家の黎明期で、心の束縛を求める儒学も仏教もまだ浸透していない。王を敬い人を見て自分を律する動きはあるが、人間の「素」が露わだった時代で、宮城谷昌光が魅力を感じたところ。そして国の方針と復讐劇のベクトルが一致した時代でもある。

 范雎が生涯の友とした鄭安平は、将軍に抜擢するも相手に降伏してしまう。秦国に仕官を推薦した王稽も、范雎の引きで領主となるが、その後部下から讒言を受け処刑された。ようやく娶ることができた原声は、短い期間で先立たれてしまう。范雎は、秦国で権勢を握った者たちの末路がみな悲惨なことを見て、自ら致仕を申し出る。

 生涯の友と定めた妹を助けるために、自らを奴隷の身に落とすことも厭わない。そうしなければ「青雲へ向かって飛び立つ翼は授けられない」と范雎は思った。宮城谷昌光は「青雲の志」を、高位に就くことと、優れた人物をさす2種類あると説明している。固有名詞をタイトルに選ぶことが多い宮城谷昌光だが、本作品のタイトルは他と一線を画している。

 

 

 *始皇帝の曾祖父にあたる昭襄王。「キングダム 大将軍の帰還」では戦神として大将軍・王騎の師の立場を、草刈正雄が演じました。
 

 春秋時代は辺境として蔑まれていた秦。戦国時代になると剽悍な兵を背景に、商鞅(魏)張儀(魏)魏冄(楚)范雎(魏)と外部の人物と思想を柔軟に取り入れ、かつ「血の粛清」を繰り返しながら強国として成長した。

 

 舞台は整った。ここに不思議な運命に導かれた「英雄」が、満を持して登壇する。

 

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