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10 白鷹伝 山本 兼一(2002)

【あらすじ】

 浅井家に仕える鷹匠小林家次は、小谷城が織田軍の大軍に囲まれ、城主浅井長政と共に死を覚悟していた時、戦場の中に降り立つ白鷹を見つける。若い頃、武田家に仕える鷹匠禰津松鴎軒の元で修行した時に見かけた唐轡 (からくつわ)と呼ばれる白鷹。その凛々しく気高い姿見た時から心を奪われ、いつの日か自分のものにしたいと願っていた。その白薦が、家次が死を覚悟した時に目の前に舞い降りた。

 

 すると浅井長政は家次に、妻の市と3人の娘を織田の陣まで届ける役割を託した。鷹匠は戦場では斥候の役割も担い、またお市らは鷹を眺めるのが好きで、家次と気心が知れているため適任だった。家次はお市らを織田軍に届けると囚われたが、織田信長に呼び出される。鷹に思い入れの深い信長は家次の評判を聞いていて、戦場で家次が見た白鷹を信長も対岸から見たと語る。その白鷹を捕らえるために、家次は信長に仕えることを決意する。

 

 その頃家次の養子元長と、韃靼(モンゴル)から来日して、同じ鷹匠として家次が匿ったメルゲンは、戦火を逃れて京にいた。明国を倒すために日本に協力を求める目的で来日していたメルゲンは、太政大臣近衛前久を通して天皇家に話をつけようとするが、天皇家はその力がないことを知る。そして近衛前久の見るところ、近い将来外征まで行える力を持った武将は、織田信長以外には考えられなかった。

 

 信長の配下となった家次は、遂にからくつわを捕まえた。単立って間もない幼鳥だったが、胸の肉色が豊かで、見るからに狩りの天稟に恵まれていた。家次はからくつわと正面から対時して、仕込みの真剣勝負を繰り広げ、見事仕上げ信長の信長に献上した。信長はいたく満足して、家次に「家鷹」の名を与える。

 

 信長を天下人と見据えたメルゲンも、岐阜に来て家鷹と再会を果たす。その信長の鷹匠組には、既に禰津松鴎軒の兄弟子、吉田家久もいた。家久は優れた鷹を見極める眼力は備わっていたが、鷹を仕上げる腕は家鷹に劣った。信長から認められたい家久は、からくつわを見て本物ではないと言い、兄弟子には信長の前で持ち上げてくれるよう頼むなど、クセの強い性格を有していた。

 

*鷹狩(徳川美術館蔵)

 同盟国の徳川家康は信長と一緒に鷹狩りを行い、そこで小林家鷹を1力月借りたいと願い出て許される。家康の鷹匠小栗久次は実直な仕事振りを見せるが、鷹特有の病気を治し、性格が高ぶった鷹を矯正させる術は持ち合わせていなかった。家鷹は1つ1つ親切に教え、1匹の「暴れ鷹」に日夜を問わず真剣に向き会い、鷹匠としての心を家康の鷹匠たちに伝えていった。

 

 家鷹が留守の間、からくつわの身体に異変が起きていた。急いで帰る家鷹だが、どうも毒を飲まされた様子だった。残された命を知って、その命を絞り切り、交尾を繰り返して子を残そうとするからくつわ。やっとのことで生んだ卵を抱え、家鷹に託すような目を見せて命を終えた。託された家鷹は、自ら卵を温めて僻化させ、ようやく1羽は元気に成長する様子を見せた。からくつわにそっくりな白薦はそのまま大事に、そして狩りを行なう鷹の野生を残すように懸命に育てる。

 

 そんな時、本能寺の変が起きて信長は急死する。残された家鷹は最後まで鷹に餌をやってから立ち去ろ うとするが、吉田家久からからくつわの話を聞いて逆上する

 

 

【感想】

  「信長テクノクラート三部作」と呼ばれた作品群の第1作。最初は鷹匠の話として余りに「レア」過ぎると思いながら手に取ったが、読み始めると止まらない。鷹匠としての専門的な知識を交えつつ、信長との関わりや、韃靼から来日し小林家次(家鷹)とは性格が正反対ながら、鷹匠としてお互いに認め合うメルゲンも交え、話が偏らないエ夫を感じる。元々モンゴルで見た鷹狩りに感銘を受けたのが創作のきっかけだったので、少し不自然に感じるモンゴル人の登場は、欠かせなかったのだろう。

 

*「信長テクノクラート」の第3弾は、戦場での話が多かったために「織田信長編」で紹介しました。

 

 そして「信長テクノクラート」としての立ち位置が興味深い。第2弾の「火天の城」で記したように、家臣団はすべからく、信長の余りに高い水準の要求に応えるために身を粉にして働くが、本作品「だけは」異なる。鷹という生物を相手にするために、信長の意向に対して家鷹はできないこと、そしてしてはならないことを「テクノクラート」の立場で信長に説明し、納得させている。鷹との交流は水の如し、そして鷹と遊ぶまでの境地に至る「日本一の鷹匠」は、からくつわと共に信長の「わがまま」を寄せ付けない。

 そして本作品の主役「からくつわ」の描写は余りに見事。凛々しく気高く、しかし死を迎えることを悟ると、家鷹に我が子の命を「託す」。言葉が通じないにも関わらず、託されたことを知った家鷹は、まるで我が子のような愛情が心に宿ったはず。そのため本作品で見せる唯一の「逆上」のシーンは、心が打たれる。

 鷹匠出身で一番の「有名人」とも言える本多正信も友情出演(?)させて描いた鷹匠の世界は、諏訪流十七代鷹師、目籠善次郎氏が描いた挿絵も効果的に配されて、シロウトも感銘を受けるほど、見事に表現されている。デビュー作としては完成度が余り高く、小林家鷹を描く作品の第2弾は、今後生まれないだろう。

 この後家鷹は秀吉から家康へと乞われて、明治維新までその血統は継がれ、鷹匠の名人を生み出したとして本作品は結ばれている。なぜかほっとする余韻を感じる。 

 

 

 *そして諏訪流放鷹保存会の第十八代鷹師となった大塚紀子さん(HPより)

 

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