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【あらすじ】
足利幕府で権勢を振るった3代将軍義満を祖父に、「万人恐怖」と言われ虐殺された6代将軍義教を父に持つ、8代将軍足利義政。義政は幼き日に、目の前で見た父親の無残な死の姿がトラウマともなり、政道に嫌気をさしていた。出家していた弟の義視に将軍職を譲るために、口説き落として還俗させたところで、正妻に子が産まれてしまった。義政が「とみ」と呼ぶ日野富子は、どうしても我が子に将軍職を継がせたい、と実家の日野家の力を借りて義政に圧力をかける。間に挟まれた義政はまだ幼い息子義尚に将軍を移譲し、政道はすべて「とみ」に委ねた。応仁の乱が勃発して、将軍の権威が全く届かない状態が進んでいた。
永遠の政治はあり得ないが、永遠の文化ならあり得る。祖父義満が創建した絢燗な鹿苑寺金閣への反発もあり、義政とは東山に建てる慈照寺銀閣に「不足の美」を求めた。金で訴えるのではなく地味にすることで、魂を自由に志向する相応しい場と考える。この不足の状態を「わび」の境地とし、時の移りとともに至る「さび」の境地へとつなげた。
そのために作庭に詳しい、金閣の庭師も務めた善阿弥(ぜんな)から助言を受けて、庭内全体の構想を練る。また後に千利休が大成する「わび茶」を興した茶人の村田珠光と連歌師の宗祇が、「わび・さび」についての良き相談柏手となる。更に義政は大工の棟梁三吉の腕を認め、対等に遇して三吉を感動させる。
金閣に泊まった義政に、屋上の「目つきの悪い」鳳凰が義政に近寄り語りかける。祖父義満を彷彿とさせるその鳳凰は、義政の心の奥底を容赦なく暴き出して、その劣等感をあぶり出す。琵琶湖で釣りに興じる義政に、左目に血の涙を流す雁の群れが声をそろえて語りかける。父義教を名乗るその雁は、義政が持つ父への恨みを語る中で、作事への生きがいを諭す。
一方富子が溺愛した子の義尚は、幼い時から酒に溺れ酒乱となり、反発から母富子の言うことを聞かなくなる。富子は男親の義政に頼るも、義尚は秘蔵の茶の道具である天目碗を酒の器とし、精魂込めて作られた東求堂の襖絵に器と投げつけて傷物にする。遂には25歳で亡くなってしまった。
慈照寺東求堂は完成した。しかし義政も亡くなり、慈照寺は放置される。しばらくして戦乱の世となり、作庭の仕事を失われた善阿弥か荒れ果てた慈照寺の手入れに来たところ、連歌師の宗祇と偶然会うと、そこに「ちょっと一休み」していた松波新九郞が顔を出す。
後に子が斎藤道三と名乗り、下克上を体現する人物は、作事の際に善阿弥や宗祇が気付かなかった東求堂の「実用性」を、2人に解説する。その空間は下克上を予感したかのように、身分を排した作りになっていると紐解いた。そして東求堂から見た銀閣は、時間の経過つまり「さび」を感じさせる光景に映る。
そんな彼らの会話を、鳶に扮した義政が、輪を描きながら空中から見守っている。
*こちらは「八代将軍」としての足利義政を描いた作品。こちらも義政の「真意」を最後に解き明かす構成になっています。
【感想】
応仁の乱が勃発しても、戦乱を抑えることをせずに自らの「趣味」のために臨時の税を徴収して、世の混乱を更に拡大させた将軍・足利義政。対して時の後花園天皇は何度も諫言した挙げ句、過去に自らが発した綸旨を苦にして出家してしまう。妻の日野富子は富子で、子の義尚と自らの権威を長らえるために、各地に関所を作っては税を徴収して、民の生活を混乱に陥れる。挙句の果てに応仁の乱が勃発すると、両陣営に金を貸し付けては混乱に拍車をかける「運用上手」な能力を見せつけている。
本作品はそこまでは触れていない。意外と仲が良い義政・富子夫婦と弟義視との兄弟関係などを背景に、銀閣を作り出す心境とその構造を通して、目の前で父が首をはねられて殺されるというトラウマを持った義政の心の内を浮き上がらせている。
対して子の義尚には、微妙な含みを持っている。本当に自分の子か疑う中でも、正妻富子への愛情は変わらずに将軍を継承させている。しかし12歳の時から(!)酒に溺れ、酒乱のまま25歳で早世してしまうのは、足利幕府の命運に止めをさした。最後にサラリとその真相を挿入する手法は作者の技量を感じさせる。
もう1つ鮮やかな技量は、「新時代」の象徴とも言える松波新九郞を登場させて、文化人とは異なる視線から東求堂を観察し、「何ものかから逃げた人の作品ではない。何ものかに立ち向かった人の作品だよ」と語らせたこと。板の間ではなく畳という様式にこだわり、現代にまで影響を与えた書院作りを持つ東山文化は、同じく下克上を迎えて「生き死にをする」時に、身分など関わりない「能力を持つ者」が力を発揮するものと見抜き、新しい世に対応する様式を考え抜かれたもの、と看破している。

*東求堂同仁斎。現代の和風建築にも見える作りは、後世に大きな影響を与えました(ウィキペディア)
本作品で祖父義満を、天下を統べる「鳳凰」として登場させている。
父義教を、群れを作り騒ぎ立てる「雁」の首領として登場させている。
そして義政を、群れを作らず自由に空に輪をかける「鳶」として、死後愛する「とみ」に向かわせた。
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