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2 散華 紫式部の生涯 杉本 苑子(1991)

【あらすじ】

 世は藤原氏が全盛を極め、平安王朝絵巻が繰り広げられていたころ。藤原為時は下級貴族であったが、詩歌や漢文に長じていた。その次女として生まれた小市のちの式部は漢文を読み下し、古今和歌集を全て諳んじるなど周囲の大人も驚くような才能を見せる。父は小市が男だったら、と悔やむほど。

 

 一方姉の大市は秀麗な貴公子から美しい恋文を受け取り、女の幸せに浸っていた。そんな姉に対して、小市は自身を人並みの容姿と自覚し、文学で身を立てる気持ちを持ちながらも、素敵な貴公子との出会いを夢見ながら年を重ねていく。20歳になりようやく受けた恋歌の主は、またいとこの藤原宣孝という年齢が親ほど離れた、女性関係も盛んな貧相な男で、小市は母代わりの叔母にわが身を歎く。

 

 貴族社会において、女性もその権力の中で生きている。日常の夫婦生活の中にも、貴族たちの権力闘争も挿入されて描かれた、遠縁の女性が書いた蜻蛉日記に感嘆する。知人の和泉式部は、小市も叶わない研ぎ澄まされた詩歌の才能を持つ反面、禁断の愛も何のその、感情赴くままに生きていく。有名歌人であった清原元輔の娘は、中納言相手にやり返す厳しい性格を見せて評判になる。その女性は天皇中宮となった定子の女官となり、清少納言と名乗る。

 

 藤原宣孝からしか文はなくがっかりするも、その文が切れると気もそぞろになる小市。やがて不遇を囲っていた父が、高齢ながら越前の受領に任命される。身体を心配してついていくも、赴任した先は都とは比べものにならない寒冷の地。京への里心がついたときに、宣孝から心配する文が届く。不満はあるが長年文を届け続けたその思いに応えて小市は、宣孝に嫁ぐことを決意する。

 

 しかし結婚して娘も宿すが、夫はやはり物足りない。そんな折に夫は病にかかり、あっけなく亡くなってしまう。3年しか続かなかった夫婦生活だが、後から聞くと夫の小市を思う様子が様々な方面から耳にすることになり、今更ながら自分の至らなさを痛感する。

 

  紫式部ウィキペディア

 

 そのころ清少納言は「枕草子」という随筆を書いて評判だと聞く。手に入れて読むと、何気ない光景を取り上げる感性の鋭さに感嘆すると共に、自分も書き物をしたいという欲求が湧き上がる。自分が書くのは物語しかない。藤原氏に排斥されて、皇族から臣籍降下した源氏を思い、親兄弟も巻き込み、宮廷と女官たちの恋愛模様も巧みに取り入れた、源氏物語を書き始める。その物語は評判が徐々に広がり、時の権力者藤原道長の娘で、一条天皇中宮彰子から女官のお声かかかる。

 

 30歳を過ぎて初めての御所勤め。皆はあの源氏物語を書いた人と好奇の目で見られ、「紫式部」と呼ばれて中宮彰子からも大切にされる。源氏物語と続篇の宇治十帖を完成させるが、一条天皇薨去し、彰子が残される。道長は役目が終った天皇と娘には目をくれず、新たな中宮によって権勢を続けようと画策する。後に彰子も亡くなり、世の無常を感じながら、小市もその生涯を終える。

 

 

 

 大河ドラマ「光る君へ」は早々に脱落しましたが、ファーストサマーウイカさんの存在感は見事でした(NHK

 

 

【感想】

 「源氏物語」自体はまともに読んだことはなかったが、充分に楽しめた。前半は盟友(?)永井路子の作品「この世をば」の裏地を縫うかのように、藤原道長が権力を握るまでの朝廷模様を描く。

 「頭でっかち」の小市(紫式部は、自分は文章で身を立てていきたいと願うも、心の底では素敵な男性に愛される姉を羨ましく思うおんなこころ。恋文が来たら来たでツンツンとしながらも、来なくなるとそれはそれで面白くないツンデレな気持ち。そんなことを心の中で繰り返して、当時の適齢期を過ぎる30歳手前になってようやく結婚するが、わずか3年余りで夫と死に別れ、改めて「もののあわれ」を感じていく。一歩外れるとイヤミに取られる印象もあるが、杉本苑子の筆は女性視線でどんどんと「踏み込んで」いくも、そこに同性の優しさも含まれている。そんな小市の人生が「源氏物語」に繋がっていく。

 源氏物語が評判となっていっても、物語の創作を続けて行く小市の「作家」としての心の中は、杉本苑子そのものと感じるように、作家の「創作の秘密」が語られている。30歳を過ぎて子供もできた後は、自分の才を誇っていた子供の時代から、周囲を気にする性格に変わっていく。物語を生む才能は、周囲が自分をどう思うかを想像し、その思いによって自縛する。この辺の感覚も「杉本苑子」を透けて見る。

 小市を借りて「和泉式部は情、清少納言は感性、そして自分(紫式部杉本苑子)は理」と評した。これは当時文壇で活躍していた女流作家たち、すなわち奔放な和泉式部瀬戸内晴美(寂聴)、強気で感性に秀でる清少納言佐藤愛子と重なる。源氏物語を借りた「ある女の一生」の物語。それは盟友(??)永井路子の作品「姫の戦国」を彷彿とさせ、おもしろく、やがて悲しくなっていく。

 

 最初はやや違和感を思えたタイトル「散華」。戦時中は命を散らした若き兵士に使われたが、本来は仏を供養するため花を撒き散らすことを意味する。中宮定子が宮廷内の権力闘争に呑み込まれて没落し、それと共に落魄していく清少納言。そして「安和の変」で失脚した源高明や他の「臣籍降下」した源氏たちの姿。

 そんな中で藤原道長は権力を、そして氏の長者を目指すために、親兄弟はもとより、時に天皇や宮廷に入った女性たちも犠牲にしていく。その現実と「源氏物語」は次第に重なっていき、その主題が「散華」に通じていく。

 

  紫式部を巡る関係図(本書より)

 

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