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12 闇の穴【市井物】 (1977)

 全作品を通して、藤沢周平作品としては、いつもと違ったテイストを感じさせる短編集。それだけに特徴が出ています。

 

1 木綿触れ

 海坂藩では倹約令を出し、絹物は武家に限るとされた。足軽結城友助は、赤子が3ヶ月で亡くなって塞いでいた妻はなえに、実家の法事には絹物の着物で行くように勧める。ところが法事の前日に足軽も絹物が禁止される令が出された。着物を持って法事に行ったはなえだが、つい着てしまい、そこで中台に見られてしまう。

 実家から戻った3日後、はなえは川に身を投げて死んでしまう。実家から戻って2日は友助に異常に優しかったが、それは死を覚悟していたのだろう。友助は中台の元に赴く。

 *盲目剣谺返し(武士の一分)を思い出させる展開。はなえが自害するに至る、赤子が亡くなってからの心の動きは想像すると余りにも哀れに感じます。その気持ちはそばに居た友助が一番良く知っています。

 

2 小川の辺

 戌井卯之助は、家老に呼ばれて脱藩者の討手を命じられる。同行している妻は卯之助の妹田鶴。田鶴は気の強い女で、夫の討手には例え兄でも、容赦なく立ち向かってくるはず。

 それを聞いた奉公人の新蔵は、自分も連れていくようにせがむ。新蔵は子供の頃田鶴と仲が良く、小川で遊んで溺れそうになったときに助けた思い出がある。そして田鶴たちが隠れていたのも、また小川の辺にある小屋だった。田鶴が留守の時に脱藩者を手討ちしたが、その時田鶴が帰ってきた。

 *子供の頃の記憶を甦らせて成長した男女と重ねる映像は、藤沢周平が得意な描写の1つ。映画にもなり味わい深い物語となりましたが、妹の気持ちは兄よりも「幼友達」の方が通じるのだろうか。

*主演の東山紀之の画像は、DVDやポスター以外はほとんど消えていました。

 

3 闇の穴

 おなみは、今の亭主と裏長屋に住んでいる。前の亭主峯吉は、小間物の行商をしていた男だったが、一緒になって間もなく度々家を空けるようになり、1年たった頃、突然消えてしまった。その峯吉がある日、ふらりとおなみを訪ね、そして用があるわけでもなく何度も続いた。

 不気味に思ったおなみが問い質すと、ある品物を指定の錺師の爺さんに持って行って修理を依頼し、約束の日と時間に回収するように頼まれた。だが約束の日、子供が熱を出しておなみは看病のため爺さんのところに行けなかった。

 *ホームズ物語の導入部を連想しますが、最後は怪談のようなテイストも感じさせる、藤沢周平としては異色作。江戸の市井にはびこる闇社会の恐ろしさを「端的」に描いた作品です。

 

4 閉ざされた口

 おようは5歳の時1人で遊んでいると、隙間から人が刺されるのを目撃した。刺した男はおようと目が合い、それからおようは口が利けなくなった。母のおすまは、夫が病気のため女中で働き、そして寝たきりになるとお金のために身体を売ることになった。

 そんな中でも優しい男がいて、夫が死んでからはその男と一緒になれればと思っていた。ところがその男は、おように入れあげていたヤクザまがいの男から脅されて身を引いてしまう。おすまは通りがかった、金回りのいい客の商人に相談をする。

 *こちらもミステリーのテイストを感じる作品です。短い物語の中に、隠された伏線を終盤に甦らせて二転三転させる手腕は見事の一言。そんな物語でも、最後はほっこりとさせてくれます。

 

5 狂気

 木材問屋の財産持ち、50歳半ばの主人新兵衛。商売は繁盛し10歳年下の妻とも、人がうらやむほど仲睦ましい。ある日、少し知恵遅れの少女に出会い、男が持つおかめの面を彫った根付けに興味を持ってついてくる。少女は不意にお尻をめくって小便をして、新兵衛はその股間を覗いてしまい、その光景に1年振りの性的興奮を覚える。

 翌日、少女は乱暴されて殺された姿が発見される。手に握っていた根付けから、新兵衛に容疑が向かう。ある日新兵衛は泣いている女の子に声をかける。前と同じ興奮が甦る。

 *なかなかセンセーショナルな作品。男が持つ「狂気」を描きますが、その源泉と思える描写にも一工夫を感じます。最後に男が発した「狂気」は、誰も止めることができません。

 

6 荒れ野

 若い僧が新しい任地に向かって旅を続けていた。荒野が続き、人家は見当たらない。やがて日は西に傾き、僧は、今夜は野宿と覚悟を決めた。その時、夕暮れの光の中から百姓姿の女が現れ、家に案内した。

 夕餉に女が干し肉を差し出し、漁師の夫が獲った猿の肉だと言った。僧はそれを食べると身体に精が漲って来るのを感じ、女は僧を優しく包み込んだ。翌夜からその生活が続く。1月近く経ち、僧は近くの集落に行くが、そこは人の気配がなく、どの家も人骨が積み上げられていた。

 *こちらも藤沢周平流の「怪談」か。そしてミステリー界で言われる「奇妙な味」と呼ばれるジャンルでもある。それにしてもこのストーリーで主人公を若い僧侶としたのはなぜ?

 

7 夜が軋む

 東北の飢饉で仙台領から荘内領に移り住むことになった夫婦。夫は木地師でお椀や土産物、こけしなどを作っていたが、生活はままならない。妻は時たま食べ物を恵んで貰うために近所の鷹蔵の家に行くと、色目を使ってくるのがわかる。

 ある日夫が商いのため留守にした吹雪の晩、鷹蔵らしき人物が来る気配を感じる。身体は反応するが知らない振りをしていたが、朝起きて外を見ると、鷹蔵が雪の中で亡くなっている姿を見つける。

 *旅人宿で飯盛りをする女が、身の上を知りたがる旅の男に、若い頃自分の身に起こった不思議な話を話す、珍しい1人語りの物語。藤沢周平版「怪談」だが、そこに女の情念と謎を残しています。

 

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