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3 ABC殺人事件 (ポアロ:1936)

【あらすじ】

 Aで始まるアンドーヴァーの町で、イニシャルがA.A.のタバコ屋の老女の死体が発見される。傍らには「ABC鉄道案内」が添えられて。間もなくABC氏から第2・第3の犯行を予告する手紙が届き、Bで始まるベクスヒルでイニシャルがB.B.の女性、Cで始まるチャーストンでC.C.の紳士が殺害され、やはり死体の側には「ABC鉄道案内」が置かれていた。被害者達それぞれに動機がある者はいても、被害者達にABC以外の関連性はなく、犯人の正体と動機はわからない。

 ポアロらは第4の殺人を防止すべく、競馬の開催地ドンカスターへ向かうが、町の映画館で殺害されたのはイニシャルがG.E.の理髪師の男であった。

 

 

 

【感想】

 これまた有名作で中学の時読んだもの。ネタバレといっても、この「ネタ」だけでは作品が「バレ」ることはないので、初読から楽しんで読めた。

 「オリエント急行の殺人」でもそうだが、感心するのは、クリスティーが1つのトリックに頼らず、妥協せずに物語を緻密に組み立てていくその姿勢。本作品を「あやつり」も含まれている意見もあるが、これは真犯人が用意周到にダミーの犯人を仕立てる仕掛けを、クリスティーが考えたとするべきだろう。

 記述者のヘイスティングズ(本作品では余り脇道に逸れず、読みやすい)が書いていない章を挿入するのはかなりの冒険だったと思うが、これも途中で右往左往している捜査陣に対して格好の「幕間」となり、サイコ的な連続殺人に対する絶好の「補助線」として支え、その挿話は後半、物語が進むにつれて更に活きて来る。

 「ABC」が逮捕された時にポアロが感じる違和感。まさに人間の心理を読み、そこから推理するポアロの真骨頂。これだけ見事なトリックと壮大な犯罪劇に対し「違和感」をきっかけに事件をひっくり返していく展開は、誰もマネできない。

 確かにこの犯罪劇の犯人が、逮捕された「ABC」では腑に落ちない。そこで真に犯人にふさわしい人物を用意した。これでクリスティーは「D」の事件とともに、この犯罪劇の「終わらせ方」でもこれ以上ない見事な着地を決めた。

 

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 その上での「歴史的なトリック」と、その扱い方が光る。本作品を「ミッシングリンク」としての完成形と評価する意見もあるが、これは「失われた環」を探す物語でなく、「ABCパターン」の創造として遇するべきと考える。そして単にトリックに留まらず、一滴の波紋が事件が重なるにつれて徐々に広がっていき、最後にはパニックになる様子は、まるでラヴェルの「ボレロ」を聴いているように読者の心に迫ってくる

 ただ初読の時は違った感想も持った。極めてネタバレに近いので、未読の方は大急ぎで読んでから戻ってきてください。

 

 

↓ ここから(スマホで見る方を考慮して、敢えて反転にはしていませ

 

 

 本来の目的にために、人間は全く関係のない人間を殺すことができるのか。そしてそんなことを小説に持ち込んでいいのか。これが中学1年の時の私の感想。その後「理由のない犯罪」は(残念ながら)日常にまで波及されることになる。

 そしてクリスティーはこの後の作品群で、人間の持つ暗い闇、犯罪者の心理を掘り下げることになる。その後の「そして誰もいなくなった」「ねじれた家」「終わりなき夜に生れつく」等で取り上げる犯人の動機。その端緒となったのが、本作品ではないか。

 




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