【あらすじ】
ヒルトン・キュービット氏がホームズのもとにやって来て、いろいろな姿の人形がいくつも並んだ絵この絵を見て妻がおびえているという話をした。ホームズは新たな動きがあれば連絡を依頼したが、その2週間後に新しい絵が道具小屋に描かれたとキュービット氏から知らせが入る。次の日そしてその2日後にも新しい絵が日時計の上に描かれたとキュービット氏から手紙が届き、その写しも付けられていた。これで人形の絵は5つ。ホームズはそれを調べ、事件が急を告げていることに気づく。
急いでキュービット氏の邸宅に着いたホームズとワトスンだが、すでに悲劇が起きていたことを知る。キュービット氏と妻が撃たれ、キュービット氏は死亡してしまったというのである。警察は夫が妻を撃ち、そのあと自殺を図ったか、またはその逆だと考えていたが、ホームズは外部の侵入者がいたと断定し、第3の弾丸を窓枠の下に発見する。

【感想】
私が最初に読んだジュブナイル版のホームズ物語は、後半はポーの作品集で、その中に「黄金虫」もあった。読んで非常に楽しんだのだが、本作は暗号のメカニズムが全く同じだったために、初読の時は印象が悪かった。誰がみても、暗号解読が本作品のメインディッシュだからね。
改めて物語を読むと、まず暗号文の使い方が違っていることに気付く。「黄金虫」は宝探しの暗号文なのに対し(これはこれで、「マスグレーヴ家の儀式」と同じ)、本作は犯罪組織の伝達方法として使われ、最後は犯人を逮捕する役割を担った。また人形を暗号に使ったことで、使った人物たちとのギャップが、意外性を際だたせてくれる。
以前から指摘されていたという「オレンジの種5つ」との類似性(これは私も気が付いて、ブログで堂々と指摘しようと目論んでいたが、あとでwikiでも記載されているのを見てガックリ。まあ、私が気づく位だから当然でしょう)、特にアメリカの犯罪組織がからんでいることは興味深い。後年の「恐怖の谷」でもうだが、ドリルがアメリカを舞台にする時は、暗い部分を使うイメージが強い。
ヨーロッパ圏ならば、イタリアンマフィアの方が本場のはず。同じ英語圏として利用しているのか、それとも当時ボーア戦争や国政選挙出馬など、政治的な動きもしていたドイルは、当時勢いが出てきたアメリカに対して、「元」宗主国としての心理が働いているのか。
*ミステリーチャンネル
そして事件現場の状況は「曲がった男」とそっくり。秘密を持った人物が夫と妻で入れ替わり、第三者の立場も本作品とは異なるが、時間を経て交わった三角関係が悲劇を呼ぶ図式は「変奏曲」と言える。
最後は、「黄色い顔」との類似性を指摘したい。本作品の骨格が、ホームズが「黄色い顔」で、最初に間違えて披露した推理とそっくり(笑)。本作品は「黄金虫」を媒介に、今までドリルの頭の中に埋まっていたストーリがいくつか組み合わされ、そして結晶化されてできた作品なのだろう。